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ICY SONIC BOOM  作者: 津辻真咲
3/11

金紫雲海


――何だろう、あれは。

情報管理官の雨宮光あまみや こうは人工衛星からの映像に目を通していた。彼女は視聴覚障害者。彼女は外科手術型により、今の能力を手に入れた。人工衛星に直接、脳からアクセスして、直接、脳に映像を取り入れる。それが出来るのだ。初めて見た景色は宇宙から見た青い地球だ。

――複数の宇宙シャトル。一体、何のために?

彼女は一応、上空管制官の稲津誠へ連絡を入れた。

「分かった。引き続き、警戒を頼む」

「はい」

彼女は連絡を切った。



地上の総合病院。今日は4週間に一度の通院の日。帆夏は外科に来ていた。彼女は幼い頃、事故に遭い、右腕を失った。しかし、再生型の治療を受けて、今は通院だけになった。

――順番、まだかな。

帆夏は数字がかかれた番号札を見ていた。すると、よく聞く足音が聞こえて来た。

「あれ?」

「あ」

航だった。

「あれ? どうしたの?」

帆夏は彼へ笑顔で尋ねた。

「え、えっと、僕は今日、通院の日で」

彼は少しおどおどしていた。

「通院? 本当に? 私もなんだぁ」

帆夏は番号札を見せた。

「本当だ」

航は少し呟く。そして、帆夏の隣の席へ腰を下ろした。

「どこか、悪いところでも?」

帆夏が尋ねた。

「うん。腎臓疾患で人工血液の追加に……」

どうやら、腎臓疾患で、人工血液の追加型の治療を受けているようだ。

「お前ら、仲いいのな?」

「え?」

帆夏と航は声のした方へ振り向いた。そこには結城がいた。

「俺は、DNA保護型」

――ガンサバイバーかな?

 帆夏はそう思った。

「お前は? 何型?」

結城は帆夏へ尋ねて来た。

「再生型」

「え? 本当に?」

「右腕」

「へぇ、そうだったのか」

すると。

「番号札51番の方」

帆夏の番号札が呼ばれた。

「ごめん、行ってくるね」

彼女は手を少し振った。タタタタと彼女は小走りで向かう。

「お前、何パーセントまでいってんの?」

「え?」

「追加型」

「あ、えっと、95パーセントかな」

結城は少し、瞳を大きくする。

「あと、少しじゃん。がんば」

「うん」

航は微笑んだ。

「結城は? どんな感じなの?」

「俺は、細胞にナノマシンが100パーセント入ってる」

「え!」

航は驚いた。

「大丈夫。再発防止のためだよ」

「そっか」

すると。

「ただいま」

帆夏が返ってきた。

「早いね?」

結城が手を上げる。

「まぁね」

どうやら、治療は順調のようだ。すると、帆夏、航、そして、結城の携帯端末が一斉に鳴った。グループ通話になった。

「もしもし」

皆、それぞれの電話に話しかける。

「皆さん、至急集まってくれませんか?」

上空管制官、稲津誠からだった。

「え? 何かあったのですか?」

「えぇ、実は」

「分かりました」

帆夏は答える。すると。

「皆さん、治療は済みましたか?」

「え?」

「治療が終わってない人は治療を終えてから来てください」

「分かりました」

「ちなみに、私は染色体変更型ですよ」

――なんと。

皆は驚いた。

「では」

彼は連絡を切った。

「じゃ、私、先に行くね?」

「あぁ」

「うん」

帆夏は先に職場へ戻った。



上空管制塔。

――これは一体、どういう……。

上空管制官の稲津誠は映像を見ながら、考えていた。

――犯行声明はない。

――考え過ぎだろうか。

「お待たせしました」

結城が室内へ入って来た。

「待っていました」

稲津誠が振り返る。結城は帆夏の隣へ。

「君たち二人には、この宇宙シャトルに警戒していてくれ」

「はい」

「その他の班ももう既に、向かっている」

「はい」

二人は返事をする。

「では、かかってくれ」

「はい」

二人はそう返事をすると、上空整備基地へと向かった。そこでは、航が戦闘機の最終チェックをしていた。

「終わりました」

「ありがとう」

帆夏は航へそう言うと、急いで乗り込み、エンジンをかけた。

「最終確認」

OKのサインが出た。すると、2機は空へスクランブル発射していった。


ゴォォォと風を割る音が聞こえる。

――あれが宇宙シャトル。

二人の目の前にあの巨大な宇宙シャトルが見えてきた。他の班の戦闘機も見えていた。

――一体、どうすれば。

すると、その宇宙シャトルから一瞬、光が見えた。

ゴォォォ。

地上へ多数のミサイルが飛んでいった。

「え!?」

ミサイルは地上へ降り注ぐ。そして、大都市を攻撃していく。

「文月!!」

帆夏は叫ぶ。

「うるさい!! 分かってる!!」

文月の声が聞こえた。

「今から、撃墜へ向かう!! 全班、ミサイルの迎撃を命ずる!!」

文月からの命令が下りた。それを聞いた全班は行動を開始した。


ゴォォォと甲を描き、ミサイルを迎撃していく。しかし、地上へ降り注ぐミサイルの数は減らない。

「ちっ!!」

結城が舌打ちをする。

――一向に減らない。どうすれば。

すると、帆夏の戦闘機の警報システムが鳴り始めた。

「え?」

――何で?

帆夏の戦闘機に別の戦闘機が高速で接近して来ていた。

「え!? 何で!?」

彼女は焦った。

――このままだと、衝突してしまう!!

3、2、1……。

――え?

衝突はしなかった。その戦闘機は帆夏の戦闘機をすり抜けて行く。物理法則に逆らうかのように。

――もしかして、あの戦闘機。

文月が直接、操っている戦闘機だった。周りの戦闘機もいくつか彼女の戦闘機の行く手に重なっていたようだった。

文月の戦闘機には、実体がなく、デジタルデータでしか、存在していない。しかし、攻撃の際には、電磁気力をONにし、攻撃時のみ相互作用を持つようになっていた。

――あの戦闘機があれば。

皆の心に希望が見えていた。

その戦闘機は、宇宙シャトルへ直接攻撃を始めた。シールドなど関係ない。攻撃はシールドを通り抜け、本体へ命中する。

――やった!!

帆夏の瞳が輝いた。

文月、軍事管理人工知能は、地球を守ったのだった。



「よくやってくれました」

上空管制官の稲津誠は、文月を誉めていた。

「こんなのちょろいよ」

文月は強がって、笑っていた。

「良かったね」

帆夏の隣にいた航が微笑んだ。

「そうだね」

帆夏も微笑み返した。


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