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ICY SONIC BOOM  作者: 津辻真咲
1/11

上空管制塔


舞台は遥か上空、成層圏。オゾン層のすぐ下。そこに上空出入国ターミナルが設置されている。そこは、地球に来た宇宙生命体の玄関口である。



1.上空管制塔



「おはよう」

空木帆夏うつぎ ほのかは同僚と笑顔で挨拶を交わす。

彼女は、航空警備課のパイロットだ。毎日、上空管制塔に勤務している。

「おはよう」

彼は白井結城しらい ゆうき。彼も帆夏と同じ警備パイロットで彼女の警備パートナーだ。

上空管制塔。それは、粒子リフターという放出する粒子の反作用で揚力を得ているリフターで上空に浮遊している管制塔だ。


「おはようございます」

一斉に3つのディスプレイに明かりがついた。

彼女らは右から順に文月、霜月、葉月。それぞれ、軍事管理人工知能、航空管理人工知能、そして、気象管理人工知能だ。

彼女らはそれぞれ、自身専用の人工衛星を所持している。それにより、高度な情報収集が可能になった。

「今日のスケジュールです」

霜月が今日の航空計画を提出して来た。

「ありがとう」

稲津誠いなず まことが微笑む。彼は、上空管制塔の管制官である。

「各部署へ送信しておいて下さい」

稲津誠は霜月へ指示を出した。

「分かりました」

すると、文月が話に入って来た。

「いーなー。私も上司がほしい」

 文月はとてもいじわるである。

「嫌味かよ」

霜月がつっかかる。

「まぁまぁ、二人とも!」

葉月はへらへらと笑いながら、二人の嫌味合戦を止めにはいる。

ぷー。最終的に文月が頬を膨らませて合戦は終わった。

「あ、そうそう。空木。上空ジェット航空帯の巡回をお願いします」

「はい」

上空ジェット航空帯とは、上層ジェット気流より上空を航行するジェット機のための航空帯のことである。

「今日の航空計画は、機体の簡易人工知能へ転送済みだから」

「分かった。ありがとう」

帆夏は笑顔で、霜月にお礼を言った。

「結城、行こうか」

「あぁ、任せな」

帆夏と結城は中央のらせん階段を下りていった。この上空管制塔の一階下には、上空整備基地がある。そこでは整備士が警備パイロットのために航空機の整備をしていた。

「おはよう」

帆夏と結城が加瀬航かぜ わたるの元へやって来る。彼はここの整備士だ。

「おはよ」

彼は、右の翼の下から顔を出した。

「整備中?」

「え、あ、うん。まあね。この右エンジンの点検が終われば完了」

「そっか、ありがとう。待ってるね」

帆夏は笑顔を見せた。航は、それを見ると、少し口角を上げて、薄っすらと微笑んだ。

……。

彼女たちは10分ぐらい待った。

「終わったよ」

眠たそうな、気だるそうな彼、航は機体から離れて、帆夏の方へやって来た。

――二重のくせに、目が細い。

結城は航の眠たそうな顔を見ると、いつもそう思っていた。

「航っち! かわいい!!」

帆夏はそう言うと、彼に抱きついた。彼のふよっとした感じがかわいいのだ。

「何じゃれてるんだよ」

結城はいつもながら、呆れた。

「っていうか、お前も抵抗しろよ」

帆夏にされるがままに抱きつかれている航を見て、結城は呟いた。


「よし、さぁ行こう」

一通り、航とのスキンシップを終えた帆夏は機体へ乗り込む。

「気を付けてね」

「ありがとう」

航の気遣いに帆夏は笑顔で答える。そして、離陸準備をする。エンジンをかけ、操縦桿を握る。ライン整備士が旗を振る。そして。

帆夏と結城の機体は飛び立っていった。


積雲の遥か上空。上空ジェット航空帯の中、二人は機体を操る。後方にはひこうき雲が伸びて行って空に線を引く。二人は空を巡回する。空を警備するため。

「第1地区、異常なし」

帆夏は通信機器で本部の管理人工知能たちへ伝える。

「了解」

霜月の声で返答があった。

「衛星映像でも異常ないよー」

文月がため口で言ってくる。彼女は少し態度が大きい。

「了解」

帆夏は応答する。

「第2地区を巡回したら、戻ろう」

「了解」

結城の声に返答する。

ひこうき雲は甲を描いた。



昼休み。帆夏と結城の二人は整備士、航の元へ行く。

「ハロー。航、お弁当食べよう?」

帆夏と結城は上空整備基地に顔を出す。

「うん。食べる」

航はお弁当を取りにロッカーへ向かう。ガチャっと戸を開ける。お弁当を取り出し、そして、閉める。

「お待たせ」

彼が小走りでやって来る。

「急がなくていいよ」

「うん」

帆夏の優しさに、航は俯いて頬を染める。三人は大きな一面窓の傍の席へ行く。

「なんか、小学校の青空給食を思い出すなぁー」

「何? そんなのあったの?」

「うん」

帆夏と結城の会話に航は耳を傾ける。

「ねぇ、航の小学生時代って、どんなんだったの?」

「えーっと、実は友達がいなくて……」

語尾が小さくなる。でも。

「でも、今は二人がいるから……嬉しい」

俯いて恥ずかしそうな航に帆夏は嬉しくなる。

「航、ありがとう!」

帆夏はそう言うと、航へ抱きついた。

――この二人、仲いいな。

結城はいつもながら、呆れても微笑んでいた。



昼休憩後。帆夏と結城は上空整備基地から飛び立った。再び、空を巡回するためだ。

――今日も青空がきれい。

帆夏はふと思う。

――航にもこの景色見せてあげたいなぁ。

帆夏は戦闘機からの景色を彼に見せてあげたいと思っていた。すると、緊急連絡が通信機器から入って来た。

「緊急連絡!! 現在、飛行中の航空機の保護をお願いします」

「保護?」

「地球が小惑星群に突入しちゃって、多数の隕石が降り注いじゃうの!!」

葉月が叫ぶ。

「え!?」

帆夏は驚いた。

「帆夏!」

通信機器から結城の声が聞こえて来た。

「何?」

「俺は北側ルートへ行く。お前は南側ルートへ行け」

「分かった」

帆夏は通信を切った。そして、旋回をし、南側ルートへと向かった。


轟音がエンジンから吹き上げる。南側ルートへは最低でも5分はかかる。

――間に合って!

戦闘機はひこうき雲を尾に引きながら、音速を超えていた。

「っ!」

帆夏はとある気配に上を向く。

「あれは」

――隕石!!

とうとう隕石が地球の成層圏へ突入して来たのだった。

――このままでは。

このままでは、上空ジェット航空帯と下層の対流圏を航行している通常の航空機までもが被害を受けてしまうのであった。

ゴゴォォ……。

隕石が帆夏の戦闘機のすぐ横を通り過ぎて、下層へと向かっていった。

――大変!! 一体どうすれば!!

すると。

「空木氏。破壊許可を出す。隕石が航空機を直撃しないように破壊しなさい」

――え!?

 文月からだった。

「しかし、破壊するのは、航空機へ向かっている隕石のみ!! その他の隕石は破壊するな!! 下層への被害が拡大する」

「分かりました」

帆夏は南側ルートへ突入する。遠くに未だ飛行中の航空機が見えた。

――隕石は!?

帆夏は目視で確認しようとする。すると、上空管制塔からデータが送られてきた。

「このデータを使いなさい」

「え!?」

「私の軍事衛星から、地上へ降り注ぐ隕石の場所を特定した。これから送るデータの隕石を破壊しなさい」

「はい。分かりました」

帆夏は応答した。そして、データを開いた。彼女はそれを確認すると、エンジンをふかした。音速はとうに超え、轟音が辺りに響く。

――見えた。

帆夏は目視で航空機を確認した。そして、データと光景を突き合わせる。

遥か上空には何かが光りながら落下してくる。

「ロック」

そして。

「発射!!」

帆夏はミサイルのボタンを押す。ミサイルはまっすぐ隕石へと向かう。そして。

ゴゴォォ。無事、命中した。

――まずはひとつ。

しかし、安心はできない。まだまだ、隕石は降り注ぐ。帆夏はエンジンをふかす。超音速で進む空。再び、隕石を目視した。そして。

「ロック」

そして。

「発射」

帆夏はボタンを押した。

ミサイルは空をすり抜けて行く。そして、隕石に命中した。ゴゴォォっと轟音が響く。戦闘機は隕石の破片を潜り抜けて、宙を舞う。

――あとひとつ。

上空ジェット航空帯は、中央セントラル空港へと続いていた。

上空を飛行している機体はあと一機。彼らが最後だ。空からは隕石が光りながら落ちてくる。

帆夏は目視する。そして。

「ロック」

そして。

「発射」

ミサイルは冷たい空気を突き進む。そして、回転しながら速度を上げる。

ゴゴォォ。隕石は空中分解する。

――よし、完了。

帆夏は口角を上げた。



「おかえり」

航がライン整備士の陰から姿を現した。

「ただいま!」

帆夏は笑顔で航に抱きつく。帆夏は航が弟みたいで、かわいくて仕方がない。

「おら、じゃれんな」

結城も上空整備基地に戻って来ていた。

「お疲れー」

帆夏は笑顔で手を振る。

「おう」

結城も答える。

「二人とも大変だったね」

航はふよっと柔らかく微笑む。

「今日はもうすぐ定時だ。飲みにでも行くか?」

結城は航と肩を組む。

「うん。行く」

「私も!!」

帆夏は目を輝かせて、身を乗り出す。

「はいはい。分かったよ。じゃ、三人でな」

結城は笑顔で答えた。


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