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ロングソード

エルフとロリヨージョさんに拳が振り下ろされる寸前、決心した私はそれを行使した。




「…なんスか、その剣は?」


ポイゾネの体は白い刃に貫かれ、静止していた。

 

「…ぐ…ぉぉ…!?」



私がその巨体から刃を引き抜く。


するとポイゾネは剣の動きに体を引かれ、背中からゆっくりと倒れる。それと同時に体はどんどん縮み、最後は黒い輝きに呑まれ消えてしまった。



やつの体を貫いたのは私の剣…名は『ロングソード』。

忌々しい神の力によって作られた…ある種、呪いの武器だと言ってもいい。


私はポイゾネの消える光景を見終えて、やつへ視線を移す。






「…ポイゾネ?」



カストはどこを見ているのか分からない目で呟いた。



「…もう、呑まれたッスか?死んじゃったッスか?」



瞳孔は開いたままで



「どうして、信じてたのに、裏切るッスか?点数、あげられないッス。0点ッス。」



口調はだんだんと強くなる。



「なんで、どうして?君は、ウチの、大切な、消えたらダメッス、おかしい、笑えるッス、なんで、どうして?ああ、君は、死んで、呪って、奪って…」



なんともいえない表情で、独り言のように呟き続ける。



「ああ…そうッス。君が呪い殺したんッス。ウチの、ウチの大切なものを…どこにやったッス…返して欲しいッス…だから。」



そして、はっきりと私の方を見て





「 必 ず 君 を 殺 ス 。 」





カストは静かに呟いた。その目はどこまでも闇深く、近付けば呑まれてしまいそうな黒に染まっていた。

おそらく私は、彼女の中に憎しみを植え付けたのだろう。


「…私は貴様に呪われはしない。」


私がそう言うと、彼女は黙ったまま目を瞑る。しばらくすると黒い輝きに包まれ姿を消した。

その時に垣間見えた一瞬、やつは頬に涙を伝わせながら笑っていた。



少しだけ目の前の出来事に思うところがあったが、しかしやらなければやられていた。


「剣に頼ってしまったか…これはもう、使いたくはなかったんだがな…」


この武器は見た目だけならただの刀身の長い剣だ。だが、私が「ヘイト」と念じると音速以上の速さで伸び、念じた際に私が目で捉えていた位置まで伸びる。

この剣で貫かれたものは間違いなく死に至る。人を確実に殺すための剣だ。


この強大な力を持つ剣は私の身に余る。おそらく、使い続ければいつか身を滅ぼすだろう。

故に私は、出来ればこの剣の力に頼りたくはない。


「こんな未熟なままではいられない。もっと、大切な人を守れる力を…」


「それって俺が居れば全部解決するよな?」


コ、コイツ…いつの間に起き上がっていた!?

後ろから声を掛けてきたのはゴミクズだった。


「貴様…死んでいなかったのか?」


「なに言ってんだよ。お前の目の前で蘇生の魔法が発動しまくってたはずじゃん…」


「知るかそんなこと。それより、苦しかったか?」


「生き返るたびに壮絶な痛みが襲ってきたぜ。そんでまた死んで、生き返ったらまた痛い…」


いい気味だ。いつかあの呪術師にコイツを殺してもらいたい。今度は事前にかける蘇生の魔法の回数を最大まで増やして、死ぬまで呪い殺し続けたいな。


「全部声に出てるんだよテメェ…マジで許さんからな?」


「おっと、悪いな無能。でもゴミの駆除の仕方は考えておかないといけないだろう?」


「お前っ…俺が手を出せないからって好き放題言いやがる…!!」


どうやらコイツは美少女に手が出せないらしい。

そして私は美少女判定のようなので、好きなことを好きなだけ言える。


「いきなり単独行動を開始して、下手したら死んでたかもしれないようなヤツがゴミじゃなくてなんだ?」


「死んでないだろーが!」


「ロリヨージョさんに言われて、過保護なくらい蘇生魔法をかけてたからな。それで何回死んだ?」


「え、あー…1秒に1回くらい死んでたから…多分、1200回以上だな。」


「かけておいた蘇生魔法はちょうど1500だ。あと5分で本当に死んでたわけだな、クズ?」


「うぅっ…クズって言うな…やめろ…」


コイツはメンタルが幼稚だ。ついでに頭も幼稚だが。


「まあいい、貴様が生きてるなら一安心だ。戻るぞ。」


「なんだよ、一安心って?…ああ、そうだな。俺達は仲間だもんな。」


「勝手に解釈するなボケ!貴様はただのロリヨージョさん生存装置だ!」


コイツが死ぬとロリヨージョさんが死ぬ。だからコイツを殺せない。それだけだ。


「…お前…俺のこと…どう思ってんだ?」


「クズだな。」


当たり前だろ。こんな当たり前の事にショックを受ける方がおかしい。

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