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チートの使い方

「相変わらず嫌な村たな」


俺は先日救った村に来ていた。ここの連中はすっかり俺を英雄扱いしており、こちらとしては迷惑している。

俺が村に立ち入ると、村人たちの報告で、すぐに村長が駆けつけてきた。


「救世主さま、オラたちにさらなる恵みを与えてくださるだか?」


「んなわけないだろ、俺の力は安くねーんだよ!」


どいつもこいつも救世主だの英雄だの、同じ単語しかしゃべらないヤツらだ。

それが揃いも揃ってアホ面を向けてくる。いい加減うんざりしていた。


「そんなぁ…救世主さま、お恵みを与えてくだせぇ!ワシらはこの通り、とても貧しい生活を…」


自分で貧しいとか言いやがって、別に食うものに困ってるわけでもねぇのに。お前みたいな富裕層のために俺の力を貸せるかよ、このボンクラめ。


「救世主さま。この村には子供もおります。せめてあの子達の為にお力をお貸し頂けないでしょうか?」


せめてってなんだ。当たり前みたいに力をせがむな!

一度分からせてやらないといけないみたいだな、この愚民どもには。


「いいか?俺は本来、お前らなんかと関わるような人間じゃねぇんだ。俺が目指すスローライフにお前らのようなクズは必要ないし…そもそもな!俺の能力はお前らごとき矮小な存在に使うものじゃねーんだよ!一度気まぐれで村を救ってやったくらいで気に入られてるとでも思ってんのか!?」


俺のアツい説教で村の連中は沈黙した。

ちょっと泣いてるヤツもいる。少しやりすぎたかも分からんが、分かったならいい。俺の能力は俺だけのために使うもんだ。


「…うわ、救世主だ。こっち来るなよ!」


ん?なんか村歩いてたらガキに絡まれた。なんだコイツは。


「随分と痩せたガキだな。お前、ちゃんとご飯食ってるの?」


「う、うるさい!どっか行けよ、ばか!」


「バカだと?俺のどこがバカなの?今すぐ説明しろ100文字以内でよ」


「ばかはばかだよ!ばーか!」


…こりゃあクソガキだ。とんでもなくイラつくぜ。

こんなんじゃ飯もロクに食わせてもらえなくても納得だ。村長含む村の連中から嫌われでもしてんだろうな。


「この子…とても痩せてるのです♪セカイさん、なにか施しを…」


実は俺の後ろにぴったりとくっついていたロリヨージョさんが言う。なんでこんなガキに施しを与えなければいけないのだろうか?


「あのね、ロリヨージョさん。俺は」


「そうなのです♪ごめんなさいです♪我があなたに口出しするなんてありえないのです♪ごめんなさいです♪ごめんなさいです♪ごめんなさいです♪ごめんなさいです♪」


「ちょ、なに!?どうしたのロリヨージョさん!?」


「我、もう死んだ方が良いです♪」


またか、この人は賢すぎて時折理解できない行動を始めてしまう。その始動合図と言っても過言ではないのが、この“ごめんなさいマシンガン”だ。

そして、その後に続く行動は十中八九“死ぬ死ぬ宣言”だ。こうなると彼女は本当に命を絶つ可能性があるので、さっさと元に戻そう。


「おい、ガキ!早くこれを食え!」


「お、お前!それどこからだした!?」


「魔法だよ!俺はどんな物質でも創造できんだよ!分かったか!」


「…ば、ばけものだ!!うわぁぁぁぁぁぁぁん!!!」


ガキは凄い速さでその場から逃げ出した。めちゃくちゃ失礼なやつだ。


「あ、おい!?待てよクソガキ…っくそ!」


施そうとしたらすぐコレだ。だからこんなことしたくなかったんだよ、ロリヨージョさん…


「…ありがとうです♪セカイさん♪」


いつの間にか立ち直ったロリヨージョさん。


「我の言葉、聞き入れてくれたのです♪その優しいところはあなたの美点なのです♪」


「うわ、なんだよロリヨージョさんっ…俺の頭を撫でるんじゃねぇよ!」


「よしよしなのです♪我はあなたの良いところ、ちゃんと知ってるのです♪」


でも口が荒いのはダメなのです、と付け加えながら、彼女は俺の事を抱きしめる。

なんなんだよこの人は、全然考えてることが分からない…でも、癒し系なだけあって、抱き締められるととても安心する。長い髪の毛から少し良い匂いがする。


「…ここはあなたにとって居心地の良い場所じゃないのです♪早く出るのです♪」


「っ、ああ!言われなくたってそうするぜ!」


俺は創造した柔らかいパンをクソガキの口の中に転移させ、別の安住の地を探しに村を出た。

この先でロリヨージョさんがおかしくならないか、少し心配だ。

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