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エルフ視点

にゃあ…一体どうすればいいにゃん?


セカイがパーティから抜けたあと私達の状況は最悪だった。

みんなの心がバラバラになってしまって、これからのことを相談することさえままならなかった。


「ドワちゃん。少し言い過ぎたのにゃ。」


「あの程度の事実を並べただけで狼狽するとは…腑抜けも良いところだな。クズが…!」


この調子じゃドワちゃんは収まりそうもにゃい。時間が必要にゃん。

その間にロジョちゃんの方もケアしてあげにゃいと。


「…にゃ、ロジョちゃん!気を確かに保つにゃん!まだ終わったわけじゃないにゃん!」


「ごめんなさい、ごめんなさい…」


こちらも例の状態に陥ってしまっているみたいにゃ…これを治められるのはセカイしか居ないから、ロジョちゃんが死を決意する前に帰ってきてもらわないといけないにゃ。


「大丈夫…大丈夫にゃん。セカイはきっと帰ってくるにゃん。」


「…エルフ、ごめんなさいなのです♪我はもう…生きる気力が湧かないのです♪」


「待て、ロリヨージョさん…命を捨ててはいけない!」


ロジョちゃんはおもむろにシーの街を走り出し、大きなサーカス小屋へと入っていく。私とドワちゃんはそれを追って、同じくサーカス小屋へ入った。

慌てて小屋の中を確認すると、ロジョちゃんは受付の人達に抑えられていた。多分、チケットも持たずに小屋の奥に進もうとしたからにゃん。


「離してほしいのです♪我は今から獰猛な魔獣ライオーンに噛み砕かれて凄惨な死を迎えるのです♪」


「あんた…頭おかしいんじゃないか!?とにかくな、チケットも無しに小屋の奥に進むことはできないんだよ!!」


受付の人達は暴れるロジョちゃんを必死に抑えたけど、ロジョちゃんは一向に引く気配がにゃい。

サーカスに居る人達の注目もそろそろ集め始めてしまっていたので、ドワちゃんがひょいとロジョちゃんを脇に抱え上げ


「失礼した。」


と言い残して、その場を後にした。私は少し戸惑ってしまったけど、急いでドワちゃんに着いていった。


「ロジョちゃん、冷静になるにゃん…いつものロジョちゃんじゃないにゃ…」


…にゃんて言ったけど、そういえばロジョちゃんはこういう子だったにゃん…!

最近はあまりこういう姿を見てなかったから、つい忘れてしまっていたにゃ!


「ロリヨージョさん!きっと大丈夫だ、ほら私達が居るではないか!?早く元気になってくれ…なぁにあんなクズが居なくてもあなたなら生きていける!確実に生きていけるさ!」


これまでにないくらいドワちゃんが焦ってるにゃん…


「セカイさんが居ない世界に価値はないのです…♪」


ロジョちゃんにとってはセカイがすべてのようで、私達の声はまったく届く気配がにゃい。


「死ぬしかないのです♪我はすべてを失った挙げ句に破滅するのです♪あはははは♪」


「ロリヨージョさん、お願いだ!!私の言葉を聞いてくれぇ!!」


これはもうモタモタしてる暇はないのにゃ…!早くセカイを探しに行かにゃいと!!

でもロジョちゃんが保つかが心配にゃ…どこか安全な場所に預けていければいいけど…


「ドワちゃん、セカイを探しに行くにゃん。ロジョちゃんはどこかで眠ってもらって…」


私がロジョちゃんの首を“トン”とやるジェスチャーをしていると、ドワちゃんが真剣な顔でこちらを向く。


「…今、ロリヨージョさんが危ない状態だ。一刻も早く回復してもらいたい。だから……エルフ、ロリヨージョさんのことは私に任せてくれ。」


「ド、ドワちゃん…!でも…今のロジョちゃんはとても一人じゃ制御できないにゃん!」


鬱モードロジョちゃんの奇想天外な行動についていくのはとても難易度が高い。一度でも動向を見逃せばロジョちゃんは高い確率で死んでしまう。そんなハードなミッションをドワちゃん一人に背負わせるのは良くないにゃ…力になれないとしても、私と一緒に支える方がまだ安全なはずにゃ!

だけどドワちゃんは真剣な顔を崩さずに言う。


「エルフ。今チイトを改心させられるのはお前しか居ないのだ。私は先ほどの…アレがあっただろう?おそらく私を見るとやつは逃げるから、会話することができない。それに…私はやつの顔を見ると殺したくなるからな。」


もしかしたらドワちゃんは少し負い目を感じてしまっているのかもしれにゃい。ロジョちゃんがこの状態になったのは自分のせいだ、と。


「ロリヨージョさんはみての通り、鬱だ。誰かが着いていてあげないと死ぬ。」


確かにそうにゃ。でもその役目をドワちゃん一人が背負うのはさすがに荷が重い。


「…せめて私がロジョちゃんを連れて行くにゃん。ただでさえドワちゃんは呪術師から狙われてる可能性があるのに、ロジョちゃんを守りながらそっちも警戒するなんて…無謀にゃん!」


誰かを守りながらでは思う通り動くのは難しい。しかも相手は呪いを使ってくるのに、それを防ぐなんてほぼ不可能にゃ。


「無謀ではない。幸いシーの街は人が多いし、少なくとも街中でいきなり襲ってくることはないだろう。それにあのカストという者は呪いを使うのに名前が必要なようだ。名前を教えていない私が呪われることはない、というわけだ。」


「それでも…仲間を連れてくる可能性もあるにゃん!」


この前の戦闘だってポイゾネという厄介な大男を連れて来ていた。その男のせいでドワちゃんは使いたくなかったはずの“あの剣”を使ってしまった。


「大丈夫、心配無用だ。私の命に変えてもロリヨージョさんだけは必ず守り抜く。私を信じてくれ。」


相変わらず不安にゃ。その言葉を信じられる根拠もにゃい、だけど…


「…もう!分かったにゃ、私はドワちゃんを信じるにゃ!」


ドワちゃんの『信じろ』という言葉には強い信念がある。根拠なんてなくても、その頼もしい姿勢を疑うなんてありえにゃい。


「ただし条件があるにゃ!」


私は人差し指をドワちゃんの顔の前に立ててみせた。


「な、なんだ?」


「『命に変えても』なんてダメにゃ。生きてもう一回、みんなでパーティを組むにゃよ!」


私の言葉に意表を突かれたのか、ドワちゃんが不思議そうな顔をする。しかしその表情はすぐに綻び

、昔から変わらない優しい微笑みを私に向けてくれた。


「ふふ…お前らしいな。良いよ、約束する。必ずもう一度…ロリヨージョさんと共にエルフと会おう。」


私も精一杯の笑顔で言葉を返す。


「絶対にゃ!約束にゃよ?」


早くどこかに行ってしまったセカイを見つけ、いつものパーティで笑いあいたい。

そんなふうに思いながら、私達は互いにシーの街の調査(セカイ探し・ロジョちゃん介護)を始めたのであった。

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