トット
「ここの領主はどこにいやがる!なんで玄関に誰も出て来ねえんだ。馬番もいなけりゃ執事もいねえってのはどういうことだ」
振り返ると私たちが知っている人物がいてそれは騎士隊第二隊長のトレント・ハワードだった。
馬を連れて歩いてくる。
何でここにいるのかしら?
「見たことある顔だな。ここで何してやがる」
トレントはアレクに気が付くとじろっと睨んだ。
アレクは元第二騎士隊だった。
睨まなくても充分 強面なのに睨むとよけいにコワイ。
「お久しぶりであります。ハワード隊長」
「挨拶はいい。何してるって聞いてんだ」
「ダスティ殿に随行しております」
「そういやてめえ、ダスティんとこの娘と結婚するんだって?」
「はい、いえ、多分」
「何が多分、だ。ここで女とくっちゃべってっててもいいのか」
くっちゃべる=くちゃくちゃしゃべる、だ。
長い付き合いだからわかるけどなんでこの人こんなしゃべり方なのかはいまだに不明だ。
どうやら私だと気が付いていないらしい。
そーっとフェイドアウトをしようと後ろに下がっていると気づかれた。
「おい、ここの馬番と執事がどこに行ったか知らねえか」
お父様は昨日、馬番の案内でどこかに出かけるようなことを言っていたし、執事のイーサンはさっきお母様が呼びつけていた、と思ったが教える必要はない。
明日の結婚式の準備でみんなが忙しくしているときに来るのが悪いのだ。
「馬をお預かりします。厩に入れておきましょう」
俯き加減で声を変え、馬の手綱を受け取ろうとすると
「お前、ジェーンか?」
とばれていた。
ちっ、こいつもか・・・変装では気づかれなかったのに声は変えたつもりでもばれてしまう。
「隊長のことこいつ呼ばわりはやめろよ」
声に出ていたみたいでアレクから注意を受けた。
「こないだの変装は従者だって紹介を受けたからだよ。まさか女性だと思わないだろ。伯爵と怪しい雰囲気で見るのをはばかられたから気が付かなかったんだよ。それに君の声、自分じゃ変えたつもりかもしれないけどそんなに変わっていないから」
丁寧に説明までされた
「何をごちゃごちゃ言ってる?お前ら俺を無視するんじゃねえぞ。で、ジェーン、お前はここで何してる?」
「トット隊長こそここに何の用?」
「うるせー、質問を質問で返すな。それとトットって言うな」
「あら、姉さんには呼ばせていたのに」
トレント・ハワードは私の二番目の姉の元求婚者で毎日求婚をしに来ては速攻でフラれていた。
私は騎士ではないし、姉に求婚をするため毎日家に来ていた頃は私の剣の相手をしてくれていた。
「あれは父に言われて、ってそんなことどうでもいいんだよ。お前まさか家出か?そうだろう?あー、やめとけやめとけ。あんまりマイルズ王子に心配させんなよ。おう、わかってるって。俺が一緒に帰って謝ってやっからよ」
一人で言って一人で納得している。
「それは困るな。今さら帰さないよ」
振り返るとグラントがいてグラントの後ろには二人の男性が立っていた。
誰だろう。
今までどこに行っていたのかしら。
するとトットが後ろの男性の一人を見るなり
「あーっ、てめえ、こんなところで何してやがる」
と叫んだ。




