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結婚の前日

「違う違う!」

おばあ様は怒ったように言う。

「そもそもなんでお前が指輪を持っていたのかを聞きたかったんですよ!」

はい、お怒りはごもっともだと思います。

でも・・・

「それはこの人に聞いて下さい」

グラントを指差した。


あさってが結婚式だと決まったところなのに、もやもやした。

杖がないと立てれないおばあさんが立っちゃうほど大事な指輪を持っていたからグラントは私と結婚することにしたんだわ。

そう思うと傷ついた。


それに

なんで思い出さないの?

私はちゃんとおぼえていたのに。

あなたのことを見つけたのに。




あれから私は疲れていることを理由に部屋に戻るとすぐに寝てしまった。

本当に疲れていた。

もう明日は目が覚めても馬に乗らなくていいんだと思うとホッとした。




起きて見ればもう昼前でこんなに寝たのは久しぶりのことだった。

グラントは朝からどこかに出掛けたらしく不在だった。

昨日の私の態度が悪かったと思われて怒ってどこかに行ってしまったのだとしたら明日の結婚式はなくなるかもしれない。



私は母に呼ばれてウエディングドレスに袖を通すとサイズのチェックを受けた。

どうやら疲れが顔に出ていただけでドレスを直さないといけないほど痩せているわけではなかったので侍女たちは嬉しそうにした。

言いにくいから言わないけど、結婚式が中止になったらごめんなさい。


「ローザを誘って庭を散歩してくるわ」

ローザは部屋にいなかった。

いったいどこに行ったのかしら、昨日までのことを聞きたかったのに。


探していると通用口でアレクと会った。

「こないだはごめん」

情けない顔をして声をかけて来たので私は笑った。

「いいのよ。そもそもあなたたちを騙していたのは私だし、誤解は解けたから」


「明日、結婚式だな、おめでとう。俺ももうすぐ結婚するんだって言いたいけどなんだか白紙に戻されそうな気がする」

あまりに悲しそうな声で言うものだから再び笑ってしまった。

私もなのよ、と思いながら。

「ごめんなさい、笑ってしまって。アレクは思ったことが全部顔と口に出ちゃうから隠し事ができないのよ。つまり誠実だっていうことだからあなたのいいところなんだけど年配の男性からすると軽いと感じるのかもしれないわ。でも結婚相手としてはうってつけだからきっと大丈夫よ」

これでアレクを慰めたつもりだったけど

「これって褒めてる?けなされてる?」

疑心暗鬼になっているようだ。


「ああ、でも俺のことはいいんだ。それよりまさか君がマイルズ王子と結婚しないなんて誰が思っただろう。身の保全のため先に言っておくけど決して悪口じゃないよ。だけどこんな辺境じゃなくても君と結婚したいという男はいくらでもいたのに」

「ふふ、どうしたの?正直で嘘をつけないところがあなたのいいところ、って褒めたところなのよ」

本来私とアレクはこんな軽口をたたく間柄だ。

男性の比率が圧倒的に多い騎士たちのところで剣の練習を今まで何年もしていたけどモテた記憶は一切なく、挙句の果てにはお父様にお前と結婚する貴族はいない、と言われたのに今になって、いた、と言われても信じられない。

「本当だよ。君の噂の相手が王子でさえなければ他のやつらだって名乗り出たはずだ。それこそ何十人とね」

「うーん、本当かしら?・・・でも人を殺した人間となると別よね。私、やっぱりグラントに申し訳なくて。明日の結婚式を挙げるべきか悩んでいるの。どうすればいい?挙げても申し訳ないし、挙げなくても申し訳ないし」

アレクは何か言おうとしたところに男の大きな声がして私たちの会話を遮った。



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