悪夢
アレクが謝りその場の収まりがついた。
・・・と思ったが、ダスティおじ様は
「メラニーは本当にこいつと結婚するつもりなのかもう一度確かめないと」
などと言っている。
アレクは、面目ないです、と体を小さくしていた。
私はグラントと顔を合わせて笑った。
少しぎこちなかったけど。
アレクの勘違いの一件は私の気持ちをほぐしたようだ。
眠れないほど私の心の中を占めていたのは昨夜切った男のことだった。
ゆうべ、部屋に戻るとグラントは血で濡れた私の服を脱がせて風呂に入れてくれた。
さすがに恥ずかしい気持ちが出たけれど手はもちろん体ごとの震えが収まらず一人では服が脱げなかった。
血が付いているのは服だけで体にまでは付いていない、とグラントが言ったけど頭の先から足の先まで泡をたてた石鹸できちんと洗わないと気が済まない。
震えながらも一所懸命に体をこすった。
グラントにも手伝ってもらいながら。
だけど洗っても洗っても血が付いている気がするのだ。
私は怖い顔をしていたと思う。
「これだけ洗えば大丈夫。これ以上こすると本当に血が出そうだ」
グラントは泡のついた私の体をお湯で流すと布で身体を覆ってくれた。
「い・・・今ごろあの男はしっ、死んでいるわ。て、て、手ごたえがあったもの」
「そうかもしれない。だが仕方なかった。あの時躊躇をすればあなたが危なかったのだから」
「い、いいえ、あ、わ、わたし、やり過ぎたの」
後悔しても遅い。
私は人を殺したのだ。
グラントは濡れた髪を布で丁寧に拭いてくれたけどこの状況がどういうことか、あとになって思い出し恥ずかしくて死にたくなった。
彼のことは強いていえば優秀な侍女のようにしか感じていなかった。
そうでなければ婚約者とはいえ未婚の私が男性の前で裸になり体を洗ってもらうなど絶対にさせなかっただろうから。




