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道ならぬ関係1

注)少し男色の話が出ます。

グラントが声をかけた父の部下は私の知った人だった。

知った人、それもよーく知った人。


年配の男性と若い男性。


年配の男性はダスティおじ様。

年配といっても父よりずいぶん年下だ。

父の腹心の部下の一人で片腕ともいえる存在。

私より一つか二つ年下の娘がいて昔父と共に行った遠征ではしょっちゅう抱っこをしてくれた、父に次ぐ私の保護者だった人。

頼れる大好きなおじ様だけど、マイルズ王子信奉者だ。


若い男性の方はアレク。

私より少し年上のはずで二十歳そこそこ。

ダスティおじ様の娘、メラニーの婚約者だ。

彼が騎士だったときには恋愛相談に乗ったこともある。

そのときの相手はメラニーではない。

アレクは騎士として優秀だったけどあまり裕福でない子爵家の次男だ。

息子のいないダスティおじ様が自分の直属の部下にするために騎士団から引き抜いてついでに娘の結婚相手としたらしい。

メラニーはおとなしい印象を受ける清楚系なので私とはあまり付き合いがなく、よく知った仲ではないけど悪い噂を聞いたことがないからアレクにとっては願ったり叶ったりの相手だと思う。

ちなみに騎士時代に受けた恋愛相談の相手はアレクがよく行く質屋の娘だった。


この二人、私がグラントと結婚するために一緒に行くって知っているのかしら。

なんだか顔を上げづらくフードを深くかぶり直しさらに顔も伏せて近寄った。


「グラント殿、その者は?」

ダスティおじ様がグラントに聞いている。

「ああ、かの・・・」

言いかけるグラントを思い切り引っ張ってさっきの建物の陰に連れて行った。

「私だと知らないみたいよ」

「そのようだな」

これはまずい。

「だめだわ、このまま王都に連れ戻されちゃうかも」

「?」

「ダスティおじ様は、私はマイルズ王子と結婚するべき、と思っている人なの。王子贔屓だから問答無用で王子と結婚しろと怒られたことがあるし・・・。私だとばれないようにできるだけのことをするからしばらく黙っていてもらいたいんです」

ったく、父はなぜダスティおじ様を同行者に選んだのかしら。

まあ、小さい頃からずいぶんお世話になっているし個人的には大好きなおじ様だから結婚式に出てくれるのはうれしいけど。


顔を隠すものが何かないか探しているとグラントが大ぶりのスカーフを渡してくれた。

三角に折って目から下の顔を覆う。

今から強盗に行く、みたいになってない?

フードを深くかぶって声も出さないように気を付けないと。

「しゃべらない従者だから。よろしくね」


さっきまで物陰でこそこそしていたことを無かったことにするような威厳を出してグラントが私のことを、自分の従者で名前はジョーだ、と二人に引き合わせた。

「スパイ活動をしている者なのであなたたちの前では顔を出せない。失礼だと思うがどうかわかってほしい」

ちょっと無理のある理由をつけたがそれについては聞くなよ、というオーラを出して押し切っていた。

頑張っているグラントには悪いけど私はマスクの下で顔がにやけるのを押さえられなかった。




―――いったい、いつ私だと気がつくの?

最初は二人に気づかれないよう神経質に気をつかっていたのは確かだ。

しかしそれも三日を過ぎるともうどっちでもいい、むしろ気づいてくれ、という気分になっていた。

声を出せない、顔を出せない、目も合わせないという状況にはうんざりだ。

二人とも私との付き合いはそれぞれ違った意味で長い、といえるはず。

ダスティおじ様とは私が小さい時からのつき合いで、アレクとはアレクの騎士団時代しょっちゅう一緒に稽古をした間柄だ。

すぐにでもばれる、と思っていたのに気づかれない、ということは私がちゃんと男に見えるってことよね。

ほんっと、失礼なことこの上ない。

こうなったら意地でも私からは言い出さない、と心に誓う。



一方、

「あの二人おかしくないですか」

宿屋の同部屋でアレクが不審をダスティに言い始めた。

「最初から変でしたよね。従者なのに宿じゃ伯爵が自分のいい部屋を明け渡そうとするし、従者のほうも当然のように譲り受けるし。俺が伯爵の立場なら従者なんて自分の部屋の床に転がしておきますよ」

「今日からそうしてやろう」

ダスティが請け合うと

「勘弁して下さい。俺、従者じゃないですよね?」

アレクが情けない声を出した。

「たしかにお前は私の従者ではないがジョーも私やお前の従者ではない。グラント殿はグラント殿の考えがあってあのようにしているはずだ。グラント殿の従者をグラント殿がどう扱おうとお前がどうこう言うんじゃない。だいたいお前は従者以下だったからな。お前を見初めたメラニーは本当に男を見る目がない」

娘が慕う男だから取り立ててやったのに、とダスティはぶつぶつ文句を言った。


実は泊まっている宿を強盗が襲ってきたため昨夜は大騒ぎだったのだ。

泊まった宿はさびれた町にあったが羽振りのいい商人や貴族の女性が泊まっているとみると時々現れるとのことだった。

そういえば昨夜王都の商人という男が気前よく宿の食堂にいた者全員に酒をおごっていた。


夜ふけに強盗が押し込んで来た際、活躍したのがグラントの従者、ジョーだった。


ちょうどアレクは部屋で風呂に入っている最中で階下の大騒ぎがまさか強盗によるものだと思わずにいてその後も濡れた体にもたもたと服を着ていたため一階に降りたときには騒ぎがほぼ収まっていた。

グラントは風呂に入る直前だったと言い、トラウザーだけの状態で降りてきて先に強盗と対峙していたダスティとジョーに加担した。

強盗は二人逃げたが六人は床に転がっている。

逃げた二人のうち一人はジョーが腹から胸にかけまともに剣で切り上げてかなり出血をしたはずなのにそのまま逃走してしまった。

背後から襲ってきたためジョーがとっさに切ったのだ。

切られた男はもう一人と逃げたが夜のためジョーたちは追うのを諦めた。

グラントが力ずくでのした強盗団の一人の覆面を取ると宿屋の親父が、こいつは近くの酒場の息子だ、と憎々しげに言った。

「最近流れ者の連中とつるんで隣町の賭場に入りびたり、とは聞いていたんですが強盗の一味とは思ってなかったですよ」


明朝一番に賭場のある隣町にいる役人のところに使いを出して強盗を引き渡すまで捕まえた六人は縄で縛って階段下の物置に閉じ込めることにした。

隣町がこの辺りでは一番大きな町であり、この宿がある町で何かあっても隣町まで行かないと役人がいないのだ。

隣町のそばに住む地方領主が判事をしていた。


逃げた強盗が仲間を助けに来ないとも限らないのでグラントとアレクが交代で見張りに就いた。

しかしそのこともありアレクがダスティに、おかしい、と話を切り出したのだ。

「いくら活躍したからといっても夜中、伯爵が強盗の見張りをして従者のジョーが部屋で休んでるんですよ」

「お前は遠まわしに私が見張りをしなかったと責めているのか」

「・・・違います」


アレクは単刀直入に言うことにしたのだが

「だからあれは道ならぬ関係だってことを言いたいんです。よく英雄色を好む、って言いますけど伯爵の色の話で」

「何の話をしている」

「だから~、男色ってことですよ」

「・・・まさか」


―――まさか

伯爵の名誉のため否定をしたもののダスティも二人の関係が恋人であると薄々気が付いていた。

というかキスをしているのを見た。

軍隊に長くいるとそういう関係の男たちがいるのを知らないわけではないししかもそのときは、キスをしている二人は若くほほえましい、とさえ思ったが一人は伯爵で一人は従者だ。


「俺も信じられないですよ。王都では毎日パーティや茶会に出て花嫁探しをしているって聞いてましたからね。でも結局結婚相手を探すのを辞めて領地に戻っているじゃないですか。初めて会ったときも二人は変にこそこそしていましたしね」

そこはダスティも否定しない。

従者は自分たちを見るなり伯爵を引っ張ってどこかに行った。

そしてそれからは覆面をしたまま顔を見せないどころか一言も口を利かず、全て伯爵を通すのだ。


「たとえば、例えばですよ。従者のジョーが伯爵に、結婚相手を探すのなら僕はここにはいられません、って伯爵に訴えるんです。そしたら伯爵も、俺はやっぱりお前じゃないとだめだ、とか何とか言って二人はそういう関係に」

下世話な想像をするアレクにダスティは呆れた顔をした。

トラウザーとはズボンの一種みたいです。

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