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ケイン

「何をしてる」

後ろから声がした。

思わず振り返りそうになったものの何とかとどまった。

ケインだ。

よりによってケインに見つかるなんて。

ケインは自分は男だから、と言ってちゃらちゃらしているのに私には厳しいのだ。

一応試しに声を変えて、どなた?、と言ってみたけど通用しなかった。


「君がそんな羽目を外すような人だとは思わなかったよ」

ずいぶんな言いがかりで怒られている。

「じゃあ、どんな人だと思っていたの?」

私だって頭にきている。

さっきまでひどく幸せだったのに。

「だいたいこいつは誰だ」

グラントのことを言った。

「誰でもいいでしょ、もう帰るわ」

彼のことは放っていてほしい。

「行きましょう」

帰ろうとしたのにケインは食い下がった。

「そいつのことを知っているのか。いろいろな茶会やパーティに出て、今一番人気の伯爵だそうだ。結婚市場を荒らしている」

仮面をつけていたけどケインはグラントのことをわかったようだ。

でもそこじゃないところに私はびっくりした。

「本当?荒らしてるって何をしているの?」

私はグラントの顔を見上げるとグラントは弁解をした。

「二、三曲踊ったらすぐに帰っている。将軍からもらった招待状のパーティ以外行っていない」

「グラント・W・コールフィールドと名乗っているが調べたらそんな貴族はいなかった」

ああ、それは偽名だからね、と思った。

「将軍が付けたんだ」

私の耳元でグラントがささやくと

「彼女から離れるんだ」

ケインが怒り出し、グラントが私とケインの間に立った。


「グラント・ウエストコートランドだ。コールフィールドは偽名だよ」

グラントがケインに手を差し出した。

ウエストコートランド家ならケインも知っているようだった。

国西部の国境の守りを一手に引き受けているコートランド御三家の一つで西端の国境隣接地の領地は敵国が攻め入って来ても守りは鉄壁で自分の領地から敵兵をその先に出したことがない。

また、家の歴史は国よりも古く代々領地を守っていた一族は王家の祖先を支え国の設立にもかかわったともいわれていた。

私は結婚が決まってから知ったことだけど。

しぶしぶケインはその手を取り挨拶をした。

「お会いできて光栄です。ただ彼女は・・・」

「結婚するのよ、ケイン。私、この人と」

「は?」

ケインが驚いていることに気を良くした私は無邪気を装って言った。

「見て見て、これ、彼が私にくれたの」

グラントからもらった大きなエメラルドの石がついた指輪を見せた。

「私の瞳の色なのよ。素敵でしょう?無くすと嫌だから今日は指輪だけ。でもお揃いの首飾りや耳飾りもあるのよ。あなたに見せたかったわ・・・だからケイン、お願い、黙っていて。あと数日で私と彼と父で彼の領地に行くことになっているからそれまで黙っていてくれればいいの。迷惑はかけないわ。私的にはばれても良いんだけど父が、結婚式を挙げるまでは誰にも言わない方がいいんじゃないか、って言うからそれに従っているだけよ。父の判断はいつも正しいから」

ケインは驚いてしばらく声も出ない風だったが残念そうに言った。

「駄目だよジェーン。マイ・・・彼はすぐにでも君との婚約を発表しようか、って言ってる」

嘘でしょう?

「だからぁ、私、マイ・・・彼とそんな話をしたこともないし、彼だって言ってきたことないわ」

大声になってしまい急いで口に手を当てた。

ケインは続けた。

「とにかく一途にそう思ってるんだ。しかもサプライズで発表したら君が喜ぶ、ってね」

「馬鹿なのかしら」

「不敬だぞ!」

ケインに怒られ肩をすくめた。

「ま、たとえ馬鹿だとしても恥はかかせられないわ。何としてもその恐怖のサプライズは阻止してね。大丈夫よ、ケインならできるわ」

おだててみたがケインは両手を挙げた。

「無理だよ。俺だって何度もジェー・・・君のこと諦めるように言ったんだ、君にその気は無いってね。だけどその度に俺が君を好きだからそんなことを言うんだ、って言われてケンカになるんだ」


「まったく、子供のケンカね」

私は呆れた。

「でもケインはわかってくれるでしょ。私、本当にマイ・・・彼とは絶対に結婚しないから。子供のときから一度たりともそういう風に思ったことがないし。たしかに楽しい子供時代だったわね、けど、ないない・・・絶対無いから。タイプじゃないし、頼れないし、ほら、彼、ケンカが弱いし、無理無理、私より弱いのよ。それに・・・」

「わかった、わかったよ。もうそれ以上は言うな。聞いてられない、あんまりだ。ったく、どっちが子供なんだ」

ケインはぶつぶつ文句を言った。


ここでの話を長引かせてもいいことはない。

「ありがとう、ケインならわかってくれると思っていたわ」

お礼を言ってグラントの腕をとると私はその場からさっさと立ち去った。


グラントは馬車まで送ってくれたけどもうしばらく会場に残ると言うので彼が誰かと踊っている姿を見たくない私は家に帰った。


楽しくて散々だ。


父にケインとのやりとりを伝えると私はふて寝をした。

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