グラント 大丈夫と言われる
《お詫び》3/12アップした話はサブタイトルが違うだけで2つとも中は全く一緒です。申し訳ありません。消し方がわからないのでもうしばらくこのままかと思います。ややこしいことになって本当にすみません。
私は結婚の準備のため領地に帰るべきか悩んだがある不安のためもうしばらく王都に残ることにした。
不安とは、プロポーズのとき以来ジェーンから避けられている気がすること。
彼女は本当に私と結婚するつもりがあるのだろうか。
話をしたいと思っても捕まらない。
プロポーズをした日、晩餐に招かれ同席したが話しかけてきたのは将軍と将軍夫人だけだった。
次の日もその次の日も将軍家を訪ねたがジェーンは挨拶に来るだけであとは結婚の準備があると言って引っ込んでしまう。
おまけに今日は将軍も多忙とのことで屋敷にいなかった。
客間に通された私の相手はジェーンの妹で四女のローザだけだった。
ジェーンの上に二人姉がいるが二人とも結婚して今は王都にいない。
跡取り息子のウイリアムは学校を卒業したばかりだが軍に入って今は北の国境にいる。
そしてウイリアムとジェーンは双子だということ。
これは全てローザに聞いたことだ。
将軍と結婚に関する取り決めや領地のことをいろいろと聞かれ受け答えをしているが、将軍の家族のことは知っているものと思われているらしく話題に出ても知っているていで話が進む。
今までほとんど田舎の領地で生活していた私は王都で当然の人のつながりや噂話、将軍の家族構成、親戚関係に詳しくなかった。
将軍の実兄が現宰相であるということも話を聞きながらそういえばそうだった、と思い出す有り様だ。
ジェーンの結婚衣装を作るため手伝いに来ている人の話をしてくれたのもローザだ。
これまで子供になつかれたことなどなかったがローザは人見知りを全くしない性格のようだ。
10歳のローザは私を相手にして女の子特有のおしゃべりを披露していた。
ただし話はかみ合わない。
聞いたこととは違うことを答えたり、私が返事に困ることを聞いてくるからだ。
そして彼女の話はとりとめなく永遠に続くかと思われた。
近くに住む従姉妹の話、その従姉妹やジェーンと月に一度孤児院に行く話、嫁いでいる姉の子供の話を延々と話していた。
そしてなぜその話になったのか、、、
将軍がジェーンとの結婚を急いでいる理由をローザがあっさりと話した。
「そりゃあ、第二王子のマイルズとの婚姻から逃げるためよ」
「・・・」
記憶がよみがえった。
叔母はなんと言ったか、将軍の未婚の娘のうち一人は婚約間近で一人は子供だと言ったのだ。
「ドレスを仕立て屋に頼むとヒトノクチニノボルんですって。どういう意味かしら」
「・・・・・」
「緘口令をしいているからドレスを作っている侍女は外出禁止ですって。ね、カンコウレイって何のことか知ってる?」
「・・・・・」
そういえば将軍が、結婚特別許可証をまだ持っていないなら手配をする、と言っていた。
結婚式を挙げてから領地に戻るよう強く勧められたが祖母がいるため断ったのだ。
私としては領地で結婚式を挙げなければならない、当然のことだろう?
「マイルズは初恋をコジラセテいて何がなんでもジェーンをノゾンデいる、ノゾンデって結婚したいってこと?」
「・・・・・ジェーンはなぜマイルズ王子の結婚を断るのだろうか」
「自分より剣が弱い人はイヤなんですって」
「・・・ああ」
確かに彼女は強かった。
「そりゃあ、お義兄様は大きくて強そうだしハンサムだけど」
だけど?
「私ならマイルズを選ぶわ。見た目がいかにも王子様でしかも本当に王子様だなんて別格に素敵じゃない?」
「そうだな」
私は田舎のただの伯爵だ。
「でもジェーンが言うには昔からマイルズはロンガイなんですって」
論外?
「昔はシャテイだったからって」
・・・・・舎弟。
そしてローザが元気づけるように話しかけてきた。
「大丈夫よ」
「?・・・何が?」
「私がいるもの」
「・・・そうだな」
少し元気になった気がした。
将軍が戻るのを待ってマイルズ王子のことに触れた。
「ローザに聞いたのだな」
将軍は苦笑した。
「変に気をまわされて貴殿との結婚がなくなると困るというこちらの都合で黙っていたのだ。どうか許してほしい」
そう言って謝ってきた。
「だがはっきり言おう、ジェーンと第二王子の婚姻の約束は今まで一度もなかった。誰がなんと言おうともな。打診はあったが受けていない。前に言ったが我が家では結婚の相手は娘が決めることになっているのだ。上の二人の娘もそうだったし、ジェーンは貴殿に決めた、そういうことだ」
将軍は続けた。
「万が一に備え必要な教育をさせていただけだ。年頃になって急に結婚相手を王子に決めたと言いだすと困るからな。ただし王子妃教育とは気づかれないように内緒でな」
「将軍家としてはいいのですか。第二王子の悪い噂をとくに聞きませんが」
普通は辺境の伯爵より王家との婚姻のつながりを求めるものだ。
「マイルズ王子は第二王子であるが聡明でありそして身をわきまえられている。家としては何ら問題があるわけではないが幼馴染である王子はジェーンにとっては弟分でしかないらしい」
実は、と将軍が話し始めた。
「ジェーンは剣の稽古であざを作っても、双子の兄のウイリアムが寄宿学校に行った時も、厳しかった妃教育も、物心ついてから泣いているところを家族の誰も見たことがなかったのだ。なのにマイルズ王子と結婚するくらいなら家を出て行くと言って泣いて家族中大騒ぎになったんだ」
そして人差し指で鼻のあたまを掻きながら
「たまたま家に居たんだがこんなことは初めてで驚いたよ」
と言った。
将軍の説明によると王都にいる貴族たちは第二王子の婚約者とすでに認識しているジェーンとは結婚する者は出て来ず、ジェーンは貴族であろうとなかろうと自分が認めた人でないと結婚しないと決めていて誰と結婚することになっても困ることがないように自分で料理ができるようになるため家庭料理を習いに食堂に行っている。
食堂の主人というのが元軍人で直属の部下ではないものの面識があったためジェーンのことを頼んだが謝礼をとらないので料理を教えてもらう代わりにジェーンが繁盛時に店を手伝っている、とのことだった。
「さすがに結婚相手が平民では困ると妻がこぼすので近いうちに外国の貴族を当たろうかと思っていたところなのだ」
事情はともあれ当然受けると思っていた婚姻をジェーンが蹴ったとなれば将軍家に咎めがないのですか、と聞くと将軍はにこやかに笑って
「わしはたまたま将軍職を賜っているが代々宰相の家系の生まれなのでわしも兄の宰相の補佐をするつもりであったのが武勲をたてたために将軍になったのだ。兄のところがこれまた娘しか産まれなかったので他に有能な人物がいなければ宰相の跡はわしの息子のウイリアムが継ぐことになるだろう。次期宰相がいる家というのは王家からしても因縁をつけにくいだろうしわしの将軍職などただの肉体労働なのだからいつでも返上するつもりだ。わしは文武両道だからな」
そう言うと高らかに笑った。
「第二王子の結婚相手の席が空きますね」
と言うと
「その心配はしていない。しばらくは貴殿に迷惑なことが起こるかもしれないがジェーンはそれを置いてもいい結婚相手になるだろう」
将軍は、大丈夫、と太鼓判を押した。




