〚NKK−Ⅳ〛
其の日の夜。
自分は寮の部屋を与えられ、其処で生活する事になった。
生活する上で必要な物は部屋に備えられており、
化粧品やアクセサリーなど、会長の趣味を覗わせる物も少々。
恐らく使われる日は来ないが。
加えて、昔の自室に仕舞い込んだ筈の勲章もケースに入れられ、自分が此処の人間であると自覚させようとしているかの様に、態とらしく壁に掛けられている。
「········。」
自分は『指導官』の任務を承諾し、補佐官として紫暮を授けられた。
明日からリストに載る4人の成功者を育成し、『品種改良』を次に繋げよ。
此れが、自分の任務。
リストには、男3人女1人の情報が細やかに記載されており、其の中には見知った顔もある。
「····冬間 御寿」
リストの一番始め。
整えられた黒髪に、紅色の瞳の青年は、間違えなく自分の率いていた隊のメンバー『冬間 雪史』の息子。
真逆、息子まで庭師になるとは。
しかも、『品種改良成功者』として。
「·····面倒な事にならないといいが。」
写真に写る目の奥に、何処か暗いモノを感じる。
恐らく其れは、父:雪史に関係しているのだろう。
『品種改良』は、半ば強制的に行われる事が多いが、志願すれば受けられる事もある。
恐らく、御寿は後者だ。
そして、自分に対しても良い反応はしないだろう。
確か雪史はシングルファザーで、当時息子は7歳。
深い傷になって当然だろう。
そうなれば、時が経つに連れ其れが拗れる可能性は捨てきれない。
·······面倒な事にならないといいが。
無意識に裁縫道具をいじりながら、空に浮かぶ三日月を見上げた。