〚NKK−Ⅲ〛
ーーー『品種改良』。
其れは文字通り、遺伝子を操作しより強い庭師を造る事。
倫理に反していると、批判的な意見が多いが殆どの国が品種改良の実験を行っており、成功例はあまり無い。
「貴女には、彼らの『指導官』になって貰いたいの。」
資料を手に固まった自分へ、会長は椅子に腰を下ろしつつ言葉を投げる。
「·······」
自分が、指導官·····?
本気で行っているのだろうか。
自分の花は死を招く。
集団を任せるには余りにも相応しくない。
「ワケが解らない···って思ってるわね?」
「····はい」
他にいくらでも適任者が居るだろうに。
其れにも関わらず、何故、自分なのだろうか?
「理由としては、言い方悪いかもしれないけれど、『失敗作』である『園宮 紫暮』を育て上げた実績がある事。」
「····彼の努力故です。」
そう、紫暮は幼い頃に『品種改良』を受けて失敗し、逆に弱体化した。
普通は其の時点で処分なのだが、色々あって自分の部下となった。
そして今では『熟練者』にまで成長した。
「····そして、米露の関係悪化と其れに乗じて中国の領海侵食対策で指導官に裂ける人員が居ないっていう感じね。」
「そんな事が·······」
全然知らなかった。
自分が世間との繋がりを絶っていた間に、此処まで色々起きているとは。
アメリカとロシアの対立。
其れに乗じての中国による領海侵食。
大国が此処まで激しく動けば、日本にも打撃があるに決まってる。
しかし······
ならば自分を戦場に出し、他の博士を下げれば済む話だ。
紫暮で経験があると言うだけでは、疫病神に希少な成功者を任せる理由にはならない。
「·····あら、まだ納得出来ないのかしら?」
「··正直に申し上げますと。」
自分に此の仕事は、相応しくない。
いくら説得されても、其れは変わらない。しかし、会長の話し方からして拒否権も無い。
「まぁ、何事もやってみる事よ。お願い出来るわね?」
│NKK本部に足を踏み入れて、会長と相対し、任務を言い渡される。
「ーーー承知しました。」
其の時点で、矢張り自分に、拒否権など無かったのだ。
[米露の対立]
アメリカとロシアの対立のこと。社会的方針の食い違いにより、よく小競り合いになっている。