〚NKK−Ⅰ〛
ついに、来てしまった。
NKK本部·····
アンティーク調の洋館と、教会が合わさった様な其の出で立ちは、20年前と何も変わらない。
時刻は夕刻。
蟲に襲われるなどのトラブルが無かった為に、予想よりも早い到着となった。
「此のまま、会長室へ直行···という事になっておりますが、大丈夫ですか。」
滑走路を抜け、建物に入る所で紫暮が自分を振り返る。
どうやら、其のまま即対面コースらしい。
「あぁ、構わない。」
大丈夫ではないが。
あの人は色んな意味で濃ゆい。
一緒に居ると体力を大量に持って行かれるので、出来る事なら会いたくなかった。
·····まぁ、彼女(?)が会長な時点で避ける事は出来ないが。
ステンドグラスが僅かになった夕日によって光る廊下を、唯黙々と進む。
NKK本部は、日本で最も文明が進んでいる場所の筈なのに、建物は機械質なビルではなく、アンティーク調の洋館みたいな所だ。
機械質な部分は全て地下へ。
初代会長は、何を思ってこんな建物にしたのだろうか···?
✾
「では、此方になります。」
「あぁ。」
此の細やかな彫刻の施された扉を、最後に見たのはいつだったであろうか。
確か、『あの日』の前日。
入れば確実に復帰させられる。
しかし、恐らく自分には「復帰しない」という選択肢は無い。
ーーーだから、覚悟を決めて。
コンコンッ……
「····失礼します。」
分厚い扉をノックして、甘い香りの揺蕩う会長室へと足を踏み入れる。
戻れないと、解っていながら。
[蟲]
人体から開花した花に群がる巨大な虫。都会では比較的少ないが、田舎の方では数が多く危険。




