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死立屋さんは、死を望む  作者: 暁雪
《死立屋さんの復帰》
5/18

〚紫色の珍客−Ⅳ〛



店の奥で木箱を開き、軍服なかみを取り出す。

「·········」

軍服の黒は、深く無機質で何処か協会の本質を滲ませて居るようで、久し振りに見ても矢張やはり好きにはなれない。

着ていた服を脱ぎ捨て、糊の香りが残る白いYシャツに袖を通す。

そしてズボンを履いたらガンホルダーを装着し、其の脇にある別のホルダーにナイフを差し込む。

そして赤い紐ネクタイを結んでから外套を羽織り、更に其の中にも刃物を仕込む。

·····昔から、武器は持てるだけ持つ主義だ。

私の花は、周りを多く巻き込む。

故に他の庭師と違ってホイホイ遣うワケにはいかないので、武器は大事。

しかし、だからといって動きに支障が出ては元も子もない。

持てるだけ····というより、『必要だと思われる分だけ』と言う方が正しいかも知れない。

最後に、『双剣』を腰に掛けたら準備完了。

「······よし」

そして、持って行く物は最低限に留める。 

まぁ、元々そんなに使う物なんて無いが。

しかし、20年過したのに何の思い入れもない事に正直少し驚いている。

ほぼ外にも出ず、ずっと此処に居たのにも関わらず、人とは場所に愛着が湧かないモノなのか。

·····あ、自分だからか。

まぁいい。

早く紫暮の所に戻ろう。


          ✾


「······とても良くお似合いです。」

「·····」

紫暮の元に戻って、其れが彼の第一声であった。

何が「お似合いです」だ。

明らかに前のモノとデザインが変えられている。

以前の軍服は、メンズを自分のサイズに合わせて袖を広くしたモノであったが、此れは明らかにデザインが変わっている。

裾は長くワンピースの様にヒラリとし、ラインも以前より細くなっている。

「·····お前、デザイン弄ったな」

「えぇ、会長が。とてもお似合いです。」

イヤだから、そういう事じゃない。

自分は女性的なモノは好まない。

見たり作ったりするのは良いが、いざ着るとなると明らかに非合理的だし、何より似合わない。

絶対に会長あのひとは、自分が嫌がるのを解ってやっている。

確信犯だ、タチが悪い。

「····はぁ、もういい。準備は済んだ、直ぐにでも行けるぞ?」

「もうですか?相変わらず早いですね。」

しかし、今から自分は其の質の悪い『会長』に会いに行くのだ。

今から心が折れていては、話にならない。

諦めよう。

「·····では、此処を出て少し歩いた所に小型飛行機を待たせております。」

紫暮に続いて店を出る。

最後の最後になっても矢張り、店に対する名残惜しさは湧いてこなかった。





[双剣]

中国の剣。1つの鞘に2本の剣を一緒に仕舞う。刃は薄めで、軽い。

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