〚紫色の珍客−Ⅲ〛
ーーー戻って来て下さい。
其の言葉に、一瞬だけ思考が停止した。
「····本日は、貴女を御迎えに参りました。其れと、『召喚状』が此方に。」
「·······そうか。」
いやいや、御迎えにって····
召喚状持ってる時点で強制ではないか。
NKKの会長が言う事は基本絶対。
反国心に燃える馬鹿でもない限り、召喚状を無視する奴は居ない。
······行くしか、無いのか。
困った。
行ったら間違いなく復帰させられる·····
そもそも、疫病神を手元に置いておきたい会長の気が知れない。
いままで死んだ奴の約3割は自分の巻き添えだぞ?
そんな奴を欲しがる何て、NKKはどれだけ人員不足なのだろうか。
「····まぁ、召喚に応えるとして、自分は軍服なんて棄ててしまったぞ?」
殉職に見せかけてNKKを去った時には、もう手の施し様が無い程に、軍服はボロボロだった。
武器や勲章は流石に棄てたら捕まるから、取り敢えずとってあるが、その他は何も無い。
どうしたものか。
しかし無いものは仕方ない。変なモノ着せられる前に、自分で作るか。
折角20年も仕立屋をやってたのだし、偶には死装束以外も作ってみよう。
多分それっぽいモノは出来る筈。
「軍服の方は此方に。」
「·····あるのか」
「当然。」
紫暮が葡萄色の目を細めながら、少し得意気にトランクから木製の箱を取り出す。
折角作ろうと思ったのに、もう既に用意されていたとは。
······無駄に準備が良いな、何か企んでないか?
嫌な予感しかしない。
[NKKの服装]
基本黒ベースの軍服がメイン。階級が上がるにつれてオーダーメイドできるが、下級層は指定の軍服をそのまま着る。
また、黒・白・カーキの3色から選べる『訓練着』(という名のジャージ)が存在する。