表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
死立屋さんは、死を望む  作者: 暁雪
《白寂の山茶花》
15/18

〚花蕾−Ⅲ〛


‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡

10月 17日(火) 天気:晴れ 

・記入者:來世 翠

・欠席者:なし   

・任務:なし

・記録:今日は此れといった大きな事は無かったと思います。IPPのメンバーはまだ余りお互いに打ち解けていないような気がするので、どうにか出来たらと思います。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

10月 31日(火)  天気:曇り

・記入者:冬間 御寿

・欠席者:無し

・任務:蟲討伐

・記録:北区にて蟲の襲撃。隊全体の動きが鈍く、善処すべきだと感じた。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

11月 1日(水) 天気:曇り→晴れ

・記入者:菊帥 壱

・欠席者:紅条

・任務:他の隊と蟲を討伐。

・記録:紅条が体調不良で休んだ。他の隊との討伐任務で、冬間が独走(?)してたから注意をしたが、あまり聞いていなかったと思う。

          ︙

          ︙

‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡


「·········」

書類整理をする紅条を除き、誰も居なくなった隊室は、酷く静まり返っている。

其の他の隊員は、中庭で東棟の裏で鍛錬をしたりするなどして、全員出かけている。

紫暮は····呼び出されて何所かへ行った。

地味に嫌な予感がする。

顔合わせから2日が経ったが、まだ任務は与えられていない。

暇な自分は、過去の資料から空白の20年間に何があったのかを吸収する作業に徹している。

·····が、此れといって大きい事は無い。

地域の人員不足が少々目立つが、国内は安定している。

IPPも日誌を見る限り目立った任務はまだ行っていないようで、気になるのは冬間の独走癖と、紅条の身体の弱さくらいだ。

まぁ、出来て間もない隊だ。

余り仕事が回って来ないのも当然だろう。

其れに、此処20年間は災害も少なく、比較的安定している所為で、下の階級の庭師は暇になりがちになっているようだ。

······しかし。

記録を見てみると、『開花』してしまう人の人数は現時点で少なくはない。

つまり其れに比例して、蟲の数も増えるという事だ。故に此処まで何も無いのは可笑しい。

あくまでカンだが、絶対に近々何か厄介な事が起きる。 

····何も、無いといいが。

そう願いながら、書類を置いて静かに椅子から立ち上がる。

時間もある事だし、隊員の様子でも見ーーー

キィ……

「御報告致します。」

「········!」

何も無いようにと願った直後、其の『何か』は起きた。

隊室に大股で入ってきたのは、先程迄さきほどまで呼び出されていた紫暮。

そんな紫暮が「報告」という事は、任務だろうか?

······憂鬱だ。

復帰初の任務。

会長が要らない気合を入れてそうで、良い予感がしない。

「·····報告を。」

「はい、ではまず此方コチラを····」

再び椅子に身体を預け、差し出された書類を受け取る。

ホチキスでまとめられた書類には、任務に関する情報がビッシリと書き連ねられている。

相変わらず、まとまってるクセに、細かくて長い。

資料にあるのは、樹怪の侵食した東京都南区の地図。

·····都内か、近いな。

此れはまた厄介な任務を放ってきたモノだ。

都内は後退が許されない分、どんなモノであろうと、相当遣り辛い任務だ。

まぁ、隊の実態を知る良い機会かもしれない。

此の任務を終えてから、今後の方針を考えよう·····


·····面倒な事になりませんように。








  












[樹怪ジュカイ

平均時速5km²/hで侵食する樹海。人や生き物も呑み込んで栄養にし、蟲の巣窟。核を破壊するまで止まらない。意外と鉱物などのお宝の山だったりする。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ