〚花蕾−Ⅰ〛
部の題名ですが、「花蕾」と読みます。
「······」
眠りの奥底に沈んでいた意識は、窓から差す日によって浮上した。
「·······朝、か。」
どうやら裁縫道具をいじっている間に眠ってしまったらしい。
手元には昨日作っていた造花が散らばり、数日前に作ったまま放置した簪が寝台の隙間に挟まっている。
まぁつまり、寝落ちである。
しかも2日連続の。
自分の寝落ち癖は、どうやら直る見込みは無いようで、昨日に続いて今日も寝落ちしている。
「仕度·····」
まぁ、其れは一旦置いといて、まずは朝の仕度だ。
時刻は6:15分。
今日は8:00から顔合わせだ。余裕を持って、7:45には隊室に着きたい。
顔を洗い、簡単に髪を整え手から着替えを始める。
着替えにそう時間はか掛からないが、武器の装着に時間が掛かる。
鉄線巻など、失敗して絡まると解くのに時間を要してしまう。なので、ある程度時間に余裕が必要だ。
特に、ここ20年間装着する事なんか無かった故、余計に時間が掛かる。
1番内側に仕込む武器を装着し終えたら、真新しいYシャツを着、黒い軍服を羽織る。
·····此れ、もう少し軽くならないのか?
勲章などで上半身が重くなり、大変動き辛い。
此れでも最低限に留め軽くしている筈なのに、何故か重い。
そんな事思っても無駄なのに、軍服に袖を通すだびにそう感じてしまう。
無駄なのだから、いい加減に割り切らなければ。
✾
「·········よし。」
仕度を整えてから資料を確認し、全ての準備を終えた。
時刻は7:25分。
初めての場所に行くのだから、少し早いくらいが丁度良いだろう。
ブーツの紐を締め、扉を開ける。
確か、隊室は東棟だった筈だ。
此処から歩いて····10分くらいだな。
其処に、今日から自分のために部下となる、『品種改良成功者』達がいる。
『冬間 雪史』の息子もーーー
自分の事を、憎んでいるのだろうか?
唯一の家族を死なせた自分を。
しかし、そんな事を考えていても仕方が無い。
此れは、『仕事』なのだ。
誰がどんな年を抱いていようが、自分には関係ない。
そもそも、自分の部下になってしまった時点で彼らの運命は決まってしまったのだ。
残念な事に。
そう考えると、寧ろ憎まれていた方が、特別な感情を抱かなくて済み、合理的なのかもしれない。
ならば、割り切ってあくまでも『仕事』として遣る事を遣ろう。
ーーーそう、『仕事』として。
[朝日の装備一覧]
・双剣:1つの鞘に2本の剣をしまえる剣。刃渡りは1mくらい。
・ガンホルダー:銃を入れておくホルダー。腰と太腿で止める、ガーターベルト(靴下止めのヤツ)みたいな形。一緒にナイフなども仕込める。
・MI−O2:MIは、『 Melt Iron』の略で、Oは『Oto(自動)』という意味です。電気で溶け熱で固まる特殊な金属を弾とする特殊な自動拳銃。
・鉄線巻:主に捕縛用の鉄線を巻いておくもの。出したり止めたり出来るが、フックショットではない。両手首に装着しており、手枷みたい。
・ナイフ:折りたたみ式で、12cm程。柄の突起を強く押すと刃が出る。
……ぐらいですかね。詳しくは『とやら』さんがみてみんに載せてくれると思うので、そちらを見てください。