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〚虚蝶の夢−Ⅰ〛
読み方……『虚蝶の夢』
夢を見た。
もしかしたら、もう何度も視ているかもしれない。
そんな夢だ。
上を見上げれば
夜空に赫い満月が浮かび、
足元には
紅い水面が何所までも広がっている。
そんな、場所に。
自分は、
立っていた。
周囲は酷く静かだ。
風の音さえもナリを潜め、
辺りを見渡しても唯々紅い水面が広がっているだけで、其の他には何も無い。
赤と黒。
そして、自分。
此処に在るのは、唯、其れだけ。
ーーーーーー『あの日』の様に。
静寂に包まれた赤と黒。
其れと、自分だけしか居ない此の場所は····
酷く、懐しく
酷く、空虚であった。