〚クロッサンドラの企み−Ⅰ〛
静かになった会長室で、会長ーーーケティは小さく嗤う。
「····ふふっ、御帰りなさい『彼岸花』。」
20年かけて、漸く『最終兵器』を取り戻す事が出来た。
真逆、樹海の中で暮らしていたなんて。
しかも、外と接触せずに。
手掛かりとなった『死立屋』の噂を聞いたのは、ほんの数ヶ月前の出来事。
噂を聞いて、間違えなく彼女であると確信した。
彼女は死を惹き寄せる。
朝日の体質を知る者なら、『死立屋』と聞いて真っ先に思い付くのは、間違い無く彼女の顔だろう。
『自信と関わりをもった者、特に近親者が必ず死ぬ体質。』
其の体質は、能力を遣う上で備わるべくして備わった才能なのかもしれない。
朝日の花ーーー『彼岸花』は、死の喪失と引き換えに、ありとあらゆる奇跡を起こす云わば
『核兵器』の様な存在。
多くの死と引き換えに、確実な利益をもたらす。
先代の独裁者が手放さなかったのも十分に頷ける。
最終兵器としても、他国の抑制にも使える朝日は、リスク込みでも十分に有益な存在。
手放す理由が無い。
部下という名の重りをつけ、NKKに留まらせる事が出来れば、大きな力となるのだ。
そんな朝日が、今日、ついさっき、手に入った。
非常に悦ばしい。
「ーーーさぁ、此れからが愉しみね。ふふっ♡」
薄暗くなった部屋の中で、ケティは再び笑みを零した。
[クロッサンドラ]
オレンジ色の花で、花言葉は『個性』。合弁花類。