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さよなら、うそつき  作者: わたぬき たぬき
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「それじゃあ京殿から」「いやあたしまだ何も」「自分も」「じゃあジャンケンで」「では、ジャンケン」「「ぽん!」」「あ゛あ゛あ゛!」「ウィズちゃん大勝利ぃぃぃ!!」「やっぱ3本勝負で」「きったな!」「何とでも呼び」ズドン!!「は、入ってますぅ!ほ、ほら京殿早く」「え!?えー!?」


「んっんん。待たせたわね。心して聞きなさい!」

本当にこれが最後でいいのか京さん。

「ぶっちゃけ夜っちは以蔵に比べて顔も実力も負けてる、と思う。それに加えて豆腐メンタル。最初会った時よりかはマシになったけどでも全然ダメ。そんなあんたを何でここから出させようとしてるかわかる?」

「さすがにそこまで言われると凹むな。......一番しぶとく生きそうだからとかか?」

確かにそう言えば京がここまでしてくれる理由について考えたことはなかった。今思い返せば最初の頃なんてこいつに殺されかけたのに。ほんと人間の関係なんてわかんないことだらけだな。

「違うわボケナス。あー......本当に一度しか言わないから。その......あ、あんたらに出会って正直、楽しかった。それは、その、あんたが居てくれたから。....その、お礼っていうか......ああーー!!はっず!!何最後だからってこんな事言ってんの!?クッソ、忘れろよ!!」

「はっ、断る。お前の弱みとしてずっと覚えておいてやる。」

「いやぁーー!!」

「っほい、REC終了と。......ん?どうされました京どnボディ!」


「もう知らねぇ!!」と京はどこかへ行ってしまったので、ウィズの嗚咽が止むまで待った。そしてその間に俺達はあのエレベーターまでもう少しの距離まで進んだ。そこでようやくウィズの声が聞こえた。

「では、最後に自分の番ですな。そうですな、自分はいつかグルになりたかった、なんて言っても多分わからないのでやめときますか。一応言っておくとハッカーの最高位ですぞ。......なんて、きっと神倉殿に言うべきことはこういうのじゃないですな。」

相変わらずの変な口調で俺にはわからない事を言っている。こいつは最初っからよくわかんない人柄だったな。今だって似合いもしないのにきっとこの場に相応しい事を言おうとしているのだろう。

そして漸くその口が開く。

「メリーバットエンドって知ってますかな?見る観点によってそれが幸せだったり不幸だったりってやつなんですが。もし今我々が死んでしまうのが神倉殿にとって不幸だとしても、我々は決してこれを不幸とは思いません。幸せですぞ。......君はきっと僕たちの死を背負って生きていくだろうけど、どうかそれで君が泣かないでほしいな。あんな馬鹿な奴らもいたな、って笑って欲しい。僕も向こうでそんな君の笑ってる姿が見たい。」

「お前......」

「ふふっ、では。」


「ったく、あんた......最期のあれ、何?......カッコつけすぎ......寒いわ。」

通話が切れたすぐ後、扉をぶち破り大量の人が押し寄せてきた。彼女らの抵抗も虚しくものの5分と経たずその(あらが)いも終わった。処理が終わると彼らはすぐにどこかに去ってしまい、残るのはボロボロになった彼女らのみ。

「何、黙ってんのよ。......無視とか、調子のんなよ。」

ズルズルと、動く左腕一本を必死に動かし何とかもう1人のところに行く。

「何だよ、眼鏡ないと、ムカつくほど......可愛いじゃん。それに......幸せそうな、顔、しやがって。」

漸くたどり着くとその顔に軽いデコピンをくらわせる。その微かな力のデコピンに涙が一滴零れ落ちた。

やがて彼女の力も抜けていき、顔を上げる力も無くなった。そして瞼もゆっくりと下がっていく。けれど彼女もまた、幸せそうな顔をした。

「あたしも...眠いや。.....以蔵...先、行くね」


そしてエレベーター前に着いた。そこには想定したよりずっと少ないみなさんがいた。無論オセも。凄く不機嫌な様子が顔が見えなくもわかるほどに。

「設備内の武器一切使用できひんし、監視カメラの情報もきいひんし、通信設備のクソの役にも立たんし、合流するはずの3部隊も姿見えんし、派遣した2部隊も自分らに倒されるとか。ムカつくわホンマ。クソガキ共が。」

「生徒のことすぐに見捨てて逃げ出したあなたに言えたことではないでしょう。もうさよならは済ませてあるんですから俺の前からとっとと消えてくださいよ。」

今日4度目になる戦闘に、俺たちの体力は大分減っていた。まともに打ち合って勝てる可能性は低い。それなら大将を真っ先に討つ。

先手必勝。地面を思い切り蹴り一気に距離を詰める。オセは逃げる様子もなく迎え撃つ様子もない。周りを見てみるが他の生徒も戦闘態勢ではあるが向かってくる気はない。恐らく罠だろう。だけど引くつもりはない。

「なめんな!!」

「いや、さすがに人をペロペロする趣味はない。」

最後の一歩、渾身の力を足に入れ跳躍し、その全体重と勢いを乗せた一撃はオセの数センチ手前で止められた。火花が散り、鈍い金属の重なる音が細かく響く。俺の刀を止めたそれは2mはないまでもそれほどの大きさの太刀。それが俺とオセの間に突き刺さっている。そしてその上

「遅くなりました。我が君主殿。」

俺ら負け組の頂点。事負けることに於いて最強。百戦錬磨、千軍万馬、。最も勝利に嫌われた人間。

「loser......」

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