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「じゃあまず桜花さんに訊き「あ、あかりで結構ですので。」」
それじゃあひかりと似てるんだよ。
「...じゃああかりさんに質問したいことがあるんですけ「敬語でなくていいので。」」
なんだ、このアマ。黙って俺の話聞いといいけばいいんだよ。
「あかりに訊きたいことあるんだけど?」イライラ。
「なんです?」
なんでテメエは敬語なんだよ!?ってめっちゃ言いたい。けどそれじゃあ脱線するのでとりあえず目を瞑る。
「あの手紙はどういうことだ?」
「あ、えっと、それは、あの」
「この二人なら心配いらないぞ。俺は友人こそ少ないがそいつ等は心から信頼できる。絶対お前の力になれる。」
「あ、そう、なの、ですか...。」
「だがあくまでそれはお前を信頼できる奴と確信できただけだ。場合によってはすぐに帰らせてもらう。」
雰囲気が険悪になる。だからひかりには参加させたくなかった。だけど救えないかもしれないのに期待をさせるのは、絶望をより大きくするだけだ。それは最悪の選択だと思う。
「なぜ俺に助けを乞う?俺じゃなくったって誰でもいいだろ。そんな「あなたじゃなきゃダメなんです!!」
机を勢いよくたたいた。飲み物が少しこぼれる。
「あなたじゃなきゃ、神倉夜一じゃなきゃダメなんです。でないと、あの子が...」
最後は消えかかるような声で話す彼女に俺は何も言えなかった。
「俺はなんて言ったらよかったのかな。」
二人の後ろをゆっくりと歩きながら海雪に尋ねる。
「間違ってると思うのか、さっきの言葉。」
間違いかどうかすらわからない。そもそも正しい言葉なんかあったのだろうか。あったとしても俺にはその言葉は彼女にあげられなかっただろう。自分の無力さが歯がゆかった。
「そう感じてるあたり、お前はまだ引きずってるんだよ。」
見透かされているようになんのためらいのない言葉が俺に突き刺さった。
俺とひかりは歩き、海雪とあかりは電車なので駅で別れた。ひかりは必死に今日の晩御飯やこの前やったゲームの話をしてくれた。ひかりの笑顔に俺も笑顔を作ったが、それがぎこちないものだと自分でもよく分かった。まだ夜は寒く吹き抜ける風に俺は首をすくめた。
家に戻りご飯いらないとだけ伝え部屋に戻った。引きずってるか、当たり前だろ。俺が最後に背中を押したようなものだからな。あの子の最後の泣いた笑顔が忘れられないんだよ。でもこれは言い訳なのはわかってる。この前手紙をもらった時まで忘れようとしてたんだ。そうやって逃げて逃げてその挙句被害者面までして、ほんと弱いな、俺。弱いけどあの子を助けたいな。助けられたら少しでもあの罪が軽くなるかな?そんなわけはないか。…でもあかりはまだ助けられるよな。
...よし。あかりを助ける理由ならできた。逃げ場もない。あとはがむしゃらに足掻くだけだ。やってやるぜ!
扉から覗く目にしばらくしてから気付いた。
「なんだよ、兄貴。」
「いや、なんか辛気臭い顔してたからな。励ましてやろうかと思ってな。」
ほんとにこういうときだけはちゃんと兄貴してるんだよな。
「余計なお世話だっての。」
「らしいな。」
サンキュな、兄貴。
閉まる扉の向こう、ひかりと妹の姿が見えた。二人こちらを見て仲良く笑っていた。