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さよなら、うそつき  作者: わたぬき たぬき
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「親鸞が9歳の頃に詠んだと言われる歌だな。明日もまだ咲いてると思っている桜でも夜中の嵐で散ってしまうかもしれない。未来のことは誰にもわからないから後悔しないように今を生きろ、みたいな感じだな。俺はこの歌結構好きなんだよな。」

(さなが)ら先生のようにそう解説してくれた。

なるほど、確かにいい(うた)だな。未来はわからない、か。......だけどここで気にするのは『彼女が力を貸してくれる』ってところだな。『簡単には教えない』と書いてあるところからこの文のどこかにヒントらしきものが隠れているのだろうけど、一体どこにあるのかさっぱりだな。最初から素直に教えろってのまどろっこしい。

「もしかしたら前に住んでた人の悪戯(いたずら)かもよ?あまり真剣に考えても無駄だぜ。」

「確かにそうだけど、何となくこれはそういったものじゃない気がするんだよな。こんなかくれんぼとかこどもの遊びみたいなことしないと見つからないような場所にわざわざ。」

「言葉に棘を感じるお。やっすい挑発だお。」

ほんとにこいつってふざけてるときはトコトンふざけてるし、怖い時はトコトン怖いんだよな。差がすごい。「とりあえず今日は帰れ」と言おうとすると突然電気が点いた。

「えっと夜一、誰、その人?」

どうやら琥珀を起こしてしまったらしい。これは申し訳ないことをしてしまった。

「こいつはグェ。」

いきなり引っ張るなや殺すぞほんま。殺意を込めた目で翁を睨むとそんなこと御構い無しに耳打ちしてきた。

「ヤバス!生の琥珀さんマジで可愛ゆす!天使か!これが法を侵さずにはいられるか!」

「えっと、僕が邪魔なら退席でもしてたほうがいいかな?」

「ボクっ娘ーー!!今聞いた!?『僕』って言ったよ!!漫画とかそういうのの中だけだと思ってた。いやぁ、前々から可愛いとは思っていたんだがここまでとは......。よし、もういいや。どんな言葉並べたって所詮理性エゴ欲望イドには勝てない。そうだろ?夜一?......だったら俺は綺麗な嘘をき続けて生きるよりも、汚くてもバカ正直に俺らしい人生を全うするよ。」

「どうでもいいけど琥珀ドン引いて「琥珀すぅわぁぁぁぁぁぁぁぁんんん!!!んぐぉうぇ!?」」

削られてこそいないが琥珀の放った石弩いわのやのねがその口に深々と刺さっていた。


「ついでに石弩いわのやのねとは石を使った矢尻のことだ。石鏃せきぞくと言ったりする。」

「何か言った?」

「いやなんでもない。」

そう言い再度先ほどの文章を見てみる。やはりこういうのは少し気になってしまう。琥珀も俺のところへ来てそれを見る。見るが俺と同じく難しい顔をするだけだった。

最初が短歌で次がポエムのようなもの、そして最後にメッセージ......。流れとしては、彼女に何か良くない事が起こった→鳥籠に閉じ込める(何かから守るため?)→でもそれも後悔→自我崩壊寸前にこの文を残した

こんな感じだろうか。正直さっぱり分かんない。最初の短歌は?本物と仮物の名前?1度としておこしてはいけないもの?力になってくれる?鳥籠?彼女と作者って誰?

結局もう夜も遅いから寝ようよ、と琥珀にやや強引に布団を被せられた。


そして翌日。考えてもわかりそうにないので相談してみることにした。

「という事なんだがウィズはなんかわかるか?」

「そうですな。まずウィズとは自分を指すのですかな?大方wizardと呼びにくいからウィズと。」

御明察。wizardって呼んでるこっちもなんだか気恥ずかしいからな。魔法使いって。

「まあ……ギリギリで許すとしましょうか。」

少し思案したようだが溜息混じりに許可は得た。そしてまた本題に戻る。

「……いや、無理かと。他を当たってくだされ。春夏秋冬殿や翁殿や琥珀殿など、なんなら冰禮殿や岡田殿とかも仲がいいと聞きましたぞ。」

後半2人は絶対仲良くはない。殺されかけたんだぞ。誰が仲良いなんか言ったんだよ。

「あれ〜、夜っちじゃん。何話してんの?そーんな露骨に『うっわやべ超かわいい娘に話しかけられちゃったどうしよう』みたいな顔しないでよ、照れるじゃん。」

「……どこで買えるのさその自信。因みにナルシストって自己愛性パーソナリティー障害ってやつに近しいものらしいからな、気をつけろ。……あと後ろの従者、絶対それ抜くなよ?」

噂をすれば影というやつ。京は笑顔で殴ろうとしてくるし以蔵は抜刀術の構えみたいなのしてるし。こんなのを一体どう見て仲良く見えるのか。

「んでほんとに何の話してたのさ。教えてよ、お風呂であんな激しい事した仲じゃん。私が馬乗りになって。最後は意識なくなっちゃったくらい。」

おいふざけんなよお前。俺は全部言ってやっても全く構わないんだけどな。おい刀の刃区(はまち)見えてるよ。あれは本当に模擬刀の輝きか?

「なるほど、神倉殿はとっくに迎えていたのですな。心配はありませんぞ。今の時代10代でもする人はしてますぞ。ただこの歳で子持ちは厳しいかと。」

何冷静かましてんだよ少しは疑えよぶん殴ってやろうか。

「……うん、できちゃった。」

んな馬鹿な。

「よもや本当にできてしまったとは……。」

「え……夜一……」

『( ゜Д゜)』

「私とは遊びだったのね!?」

「介錯はしてやるよ。」

「......少しは俺の話聞いてみない?少なくても春夏秋冬、お前はしらばっくれても無駄だからな。翁は後で殺す。......というか本当に何?こんな大所帯で来て。」

さすがに茶番はこのくらいにしておかないと本気で以蔵に殺される。

その問いに琥珀が答える。

「そうそう、昨日の謎かけ一応それっぽく解けたから放課後にでも答え合わせとでもと思ってさ。いや、気になるね。脱出の力になってくれるってどういうことだろ。」

「マジですか。」

『?(゜∀゜≡゜∀゜)?』

春夏秋冬......。


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