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さよなら、うそつき  作者: わたぬき たぬき
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8

目を開けると一人の男子高校生が椅子に座り本を読んでいた。

「起きたか。」

それだけ言うとまた本を読み始めた。

「ここは、保健室か。」

どうやらあの怪物に襲われた後に運び込まれたらしい。

「すまんな、なんか嫌な予感がして教室から出てたんだよ。」

いまはそんなことはどうでもいい。

「あの子、お前のクラスだったんだな。」

「あの子?」

「あの子。」

「どの子?」

「・・・。」

俺も名前は知らなかった。なんという子なのだろう。

「まあ、名前なんか言われてもわかんないけどな。」

海雪は小さい頃からこんな性格だった。もう少し興味持てばいいのに。

「今何時?」

「1時10分。」

授業まではあと15分か。

「とりあえずはありがとうな。あのままだったら多分やばかった。」

「残念だが俺はお前のヒーローじゃない。お前を助けたのは女だ。」

その人にお礼をするのが筋だとは思うが何分女としかわからないな。もしかしてあの子なのかな。

「とりあえず目が覚めたなら俺の役目は終わりだ。あとはこれに任せる。」

そして海雪がカーテンを開けるとあの子、ではなくひかりがいた。確かになんか雰囲気は似てるんだけどな。ちょっといまは会いたくなかったかな。


「ごめんなさい、なんか私のせいで。私がつけあがったりなんかしなければ...。」

あー、始まった。正直ひかりがこのような状態になると非常にめんどくさい。確かに同居はダメだった。反省するのはいいことなのだが虐待のせいなのか、自らを追い込むところはよくないと思う。これを宥めるのにいつも数時間かかる。一番手っ取り早いのは話題転換である。

「気にすんなって。そういや俺を助けてくれた人って知ってる?」

「ううん、気にする。名前は桜花さくらばなと言ってました。」

気にするって、おい。敬語もやめて。俺が罪悪感で心苦しいのですが。

桜花か。知らない名前だな。一度も聞いたことはない。あとで海雪にでも訊いてみるか。


とりあえず残りの時間を全て使い、ひかりを宥めた。というか途中から泣き出したのであやした。休み時間が終わり教室に戻る時にはひかりは半泣きだったが、クラスの雄共も反省したのか襲ってはこなかった。海雪には放課後に訊きたいことがあるので「ちょっと付き合って。」とメールをし授業が始まった。


授業が終わりメールを確認すると「俺にそっちの気はない。」と書かれていた。ふざけんな、そんなホモホモした展開俺だってお断りだ。...まあ俺が100%悪いんだが。廊下を見ると速足で帰る海雪が見えたので、とりあえず引き留めた。

「やめろ。手を離せ。」

「いやだ、離さない。」

しっかりと手を握る。

「痛いから、ほんと。頼むから。」

「じゃあ抵抗すんなよ。」

手を放す。全力で逃げ出した。飛び込んで押し倒した。

「なあ、すこしくらいいいだろ。」

「...わかったよ、すこしだけだからな。」

ようやく説得に成功。教室に戻るとひかりがひどく紅潮しているようにみえた。この空の色のせいだろうか。


「では海雪君。桜花さんがいるか確認し、いたら連れてきてくれたまえ。」

殴られた。調子に乗りすぎたか。「大丈夫?」とひかりから言われたが大丈夫だ、問題ない。ひかりも折角なのだからクラスメイトたちと遊んで来ればいいのに。高校生活なんてあっという間に過ぎてくんだぞ。なんて考えてたら「ほれ」とひとりの女の人を連れてきた。この人だ、この前下駄箱で会ったのも、今日助けてくれたのも。なんだか会えなかった人にようやく会えたような感動が心に芽生えた。心臓が痛い。これって、恋?


学校で立ち話をするのも何なので、とりあえず近くの喫茶店に入った。

コーヒーを4つ、ケーキを2つ。ケーキは女子お二方で、男性はコーヒーでだけで結構。もちろんブラックで。まず何から話したものか。やはりあの手紙のことか。だけどその前に自己紹介をば。

「じゃあまず俺は神倉 夜一よいち。1組だ。部活は入ってない。よろしく。」決まった。

「じゃあ私。昼ノ夜ひかりだよ。同じく1組で今日転校してきたよ。気軽にひかりでどうぞ!」かわいい。

「鎧塚海雪。2組。」おい。

「えと、桜花あかりです。2組で部活は入ってません。よろしくお願いします。」

桜花、あかり。やっぱり知らない名前だな。




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