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さよなら、うそつき  作者: わたぬき たぬき
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教室を出てしばらく歩いた後に見えたのは視聴覚室。促されるまま視聴覚室に入ると既に投影機がついており、なんらかの映像が流されるのだろうと予想がついた。オセはご丁寧に椅子まで用意した後不気味な笑みを浮かべ、蛍光灯の明かりを落とした。そして映像が流れ始める。

「ハロー!元気してる?ひっさしぶりだね〜」

映像が流れた瞬間、身体中から冷や汗が溢れ出た。心臓が爆音で打ち続ける。……なんで、なんでこの男が?

「幾年ぶりかのお父さん、伸紘ですよ〜。映像越しとはいえ、久し振りに会えたのを嬉しいと思っていたらお父さん、嬉しいなぁ。そういえばもう中学生らしいね!おめでとう!いやぁ、あんなに小さかった夜一(やひと)がもうそんな歳か。感慨深いものだなぁ。俺の方もまあ色々とあったが家族3人で暮らした時のことは今でも鮮明に覚えているよ、うん。ほんとにお前さえ生まれて来なければなー。あー…………。ほんっと……。ま、今度機会があったら会おうな。その時はゆっくり語り合おうぜ!じゃあな!」

映像はここで途絶えた。

伸紘の顔が消えると俺は床に倒れ激しい呼吸を整えようとした。汗が噴き出て心臓が締め付けるように苦しい。頭が凄まじく痛み、吐き気に耐え切れずもどしてしまった。

「お主はトラウマに特に弱いんじゃな。相当に応えたと見える。見せた甲斐があったってもんじゃ。フォフォフォ。とりあえず回復するまで待ってやるから。」

それから30分ほどしてようやく落ち着いてきた。それでも思い出すとまた気分が悪くなる。途中からのあいつのあの顔、お母さんを殺した時と一緒だった。次会ったら確実に殺されるなあれは。それにしてもこいつはどうやって伸紘と接触したんだ?映像は間違いなく最近。このオセってやつは本当に何者なんだ?

オセを鋭く睨みつけると「やーん、怖いよ夜一君。詳しいことは企業秘密であたしは何にも言えないんだよ。だからそんな怖い顔しないで、ね♡?ブサイクな顔がよりブサイクだよ?」なんてほざきやがる。ほんとにぶっ殺してやりたい。

「何が心の安らぎだよ。人のトラウマ引き出しやがって。騙し討ちもいいところだ。」

「おいおい、そんなこと言うでないぞ。そもそもうぬにはもう一つトラウマがあったろう。それにこの安らぎは遅効性じゃから別に騙しても討ってもおらぬわ。」

だからなんでお前はそんなところまで知ってるんだよ。それに遅効性?どういう意味だ?

そんな俺を置いてペラペラとこいつは話を続ける。

「俺は機械みたいな完璧な人間を作りたいんだ。さながらデウスエクスマキナのような。機械仕掛けの神。何事にも対応、順応し漫画みたいな化け物じみた力で使命を全うする。人間の形をした殺戮兵器とでも思ってもらいたい。その為に必要なのは知力、武力、適応判断力、記憶力、他にもいくつかあるが、何より重要なのは従順であること。力だけつけて反逆なんかされたらたまったもんじゃない。1番手っ取り早いのはひよこみたく刷り込みをすることなんだがなかなか母体が集まらなくてな。まぁ端的に言ってこの時間は生徒を洗脳させる時間なんだよ。」

この授業を何度も受ければ、いずれオセに心を壊され崇高し、この授業は安らぎの場になってるって算段か。遅効性っていうのもわかった。トラウマとかの弱みに漬け込んで、後は優しい嘘を流し込めば出来上がると。

「もしかしてそのインプティングされた人達がαとか名乗ってる奴らなのか?」

刷り込みという言葉を聞いた瞬間頭にあの人らが過った。あいつらは明らかにここに来る前から繋がりが見えた。10人近くが一斉にここに入ってくるなんかおかしいし名前も然り、聞いただけだが戦闘時も協力していたという。入学試験受けなかったのも相応の力があると事前に知っていたからだろう。

オセは特に反応は見せなかった。ただ黙ってこちらを見られてはこちらも何も言えなかった。数秒経ってから「もう出て行っていいよ。」という言葉で沈黙は終わった。それでもせめて一つだけは確認しておかなければ気が済まなかった。

「お前は伸紘とどんな関係なんだ。それだけは教えてもらいたい。」

教室から出ようとするその背中に問いた。オセは足を止めて首だけこちらに向ける。その顔は本当に楽しそうに笑ってみてた。

「僕の口からは言わないでおくよ。いずれ分かる日が来る。だけどヒントはくらいはあげるよ。困ったらいつでも頼ってね。夜一(やひと)君。」


教室に戻ると既に琥珀はいなかった。入れ違いになったらしい。それからしばらくすると帰ってきたがやはり話し掛けるのは(はばか)られた。やはり琥珀もトラウマにつけ込まれた様子。会話を切り出すなんてことは出来ず、そのまま時間だけが過ぎて行きその日は終わった。


それから1週間程が経ちある程度この学校に馴染んできた。その間に琥珀ともまた普通に接しれるほどになった。しかしまた新たな事件が発生した。それを機にこの物語は序章から本編に入っていく。

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