表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
さよなら、うそつき  作者: わたぬき たぬき
70/168

70

「エレベーターを降りたら撃たれると思った?おいおい入学早々失望させないでくれたまえよ。こんな違法施設みたいな所バレないように出入り口は極力少ないに決まってるだろ。それを簡単に壊すわけにはいかないっていう子供でもわかるようなことを、まさか君はわかってなかったのかね?…まぁいいや。今回は許そう。まだ入学式はやらないから自由にしていてくれ。あとこれは部屋の鍵だ。」

放り投げられた『45』と書かれた鍵を受け取る。オセと名乗る人物はどこかに歩いて行ってしまった。その後は特に案内がないのでとりあえず試験はこれで終わりらしい。去り際「片や守るため、片や殺めるため。産むは鬼子か。」とよくわからない事を言っていたが、結局意味は分からなかった。

施設を回ってる最中何人か人をを見た。みんな俺より年上に見える。ただそれ以上に彼らには異常性が顕著に表れていた。顔が半分溶けてる者、髪を(むし)り口に入れる者、虚空を見上げ不意に嗤い出す者。もしかして俺もこんな風になるのだろうか。これ明らかに失敗じゃないのか。そんなことを考えながら遠目にそいつらを見ていると後ろから聞いたことのある声がした。

「そいつらはもう壊れる寸前のゴミだから目を遣るな。みんなこっちに集まってるから来い。」

声の主は上で途中までお世話になったあの男の子だ。やっぱりこいつもここにいるのか。

「俺はこのクラスの学級委員長的な存在だ。みんなは委員長って呼ぶからお前もそうしろ。ここではそれなりに上の方だからな。」

特にお願いしたわけでもなく自己紹介された。こちらも一応それっぽいのはしたがあまり向こうは興味がなさそうだった。本人曰く、下の人間に興味はない、と言っているがそれならばなぜ案内をしてくれるのだろう。やっぱり委員長だからだろうか。

やがて大きなモニターの前に着いた。そこにはたくさんの人がいて映像を見ていた。どうやらそれは先ほどの試験の生中継だった。試験の時は全く気がつかなかったが試験中は常に監視カメラで見られていたらしい。

「あれ、委員長この人さっき俺と戦った女の子じゃないか。負けたはずだが?」

「別に負けたからって入学できないなんて一言も言ってないだろ。この子のあの戦略はなかなか良かったからそれが評価されたんだよ。まあそれに勝ったお前もそれなりに評価されたが次の問題がギリギリだったからプラスマイナス0だな。決闘の時はそれなりに盛り上がったものだ。」

ほんとに言葉の抜け穴を探すのがうまいこと。映像はどうやら決闘の次の場所らしい。即ちここに来るエレベーターを探すところ。今は丁度ライトと手紙を手渡されたところ。俺と同じ状況にあるということはあの子にもこの委員長は同じセリフを言ってるのか。

「突破できると思うか?」

委員長の質問に対し俺は首をかしげた。この問題は気づくか気づかないかが問題だから頭の良し悪しよりも、閃きや柔軟性の方が大切だと思う。後そこから時間内に辿り着く体力かな。もとよりこの問題は3分で解けることはできてもその部屋に着くのに3分ほどかかる。呑気に歩いていたり、俺みたいに時間をかけていると間に合わない可能性がとても高い。それこそ数字に法則性があればそんなこともないのだが。果たして彼女は間に合うのか。...俺としては何となく彼女にはこの試験をクリアしてもらいたい。あの一回しか彼女には会ってないし、それも決闘の相手としてだけれど、言葉も碌に交わしてないけれど。子ともは誰とも知らない相手でも、一緒に遊べば友達になれる。俺たちが子供かどうか、あれが遊びかどうかはあれど、それに似たよう感情が俺の中にあった。それと同時に落ちたら所詮その程度という気持ちもあった。

彼女は30秒ほどブツブツと何かを言った後、数字と睨めっこを10秒ほど。その後は俺と同じように駆け出した。「合格だな。」とモニターの前の誰かが言うと、その言葉を機にみんな安堵とも感心とも違う溜息をこぼす。ここにいる人たちは今どんな気持ちなのだろう。ライバルが増える、みたいな感じなのだろうか。

彼女はきちんと言われた通り706958と書かれた部屋に着きドアノブを反対に回す。特に何の反応もないので部屋に入りまた反対に回す。今度はきちんと回り実質の試験終了となる。映像はここで切れモニターには何も映らなくなった。

「はい、じゃあ今日のお楽しみはこれにて終了。解散解散。あ、今日入って来た子は案内みたいなの配るからついてきて。」

オセのその言葉でパラパラとモニターの前から人が散っていく。俺を含め何人かの今日入って来た人はオセのいる方向に向かっていく。人が散っていく中、既に仲良しそうな人達が見受けられた。一般的に新境地になると男子よりも女子の方が仲良くなるのは早いがここも例外ではないらしい。腹の底では何を考えているか全くわからないのにああも笑っていられるのが気味悪い。でもそうなると『じゃあ友達の定義って何?』っていう哲学的問題になるからこれ以上考えるのはやめよう。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ