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さよなら、うそつき  作者: わたぬき たぬき
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案内されるがままその女についていき教室の前に着いた。薄暗い天気にも関わらず電気もつけず怪しげな雰囲気が漂う。

扉が開くと俺と年代が近そうな男と20代くらいの若めの男がいた。

「どうですかね?」

「微妙。」

開口一言目にそんな事を言われた。なんだこのガキ。見たところ俺と同い年くらいに見えるが、大人が敬語使ってる質問してるあたり立場は子供の方が上なのか。というかそもそも俺に対しての感想って捉えていいんだよな。資料とかも持ってないし俺の第一印象、なのか。

「考える時間が長い。あと表情もわかりやすい。警戒心もなさすぎ。他にもあるがまあいいや。これは赤点まっしぐらだぞ。」

「あの、お話が見えないのですが?」

何だかわからないがバカにされているようにしか思えない。でも確かに警戒心は欠けていた。言われたとおり表情はなるべく笑顔で、でも脳はフル回転。とりあえずわかるのはあの手紙の内容はやっぱり嘘だったということ。おそらくこれも何かの試験の一環なのだろう。

「長考は改善されない、表情も改善の努力は見える、と。...でも何となくは分かってるんだろ。お前がここに呼ばれた理由。...さすがにわかってるよな?言っとくけど変に嘘つくな?俺そういうの得意だから。」

ここまで来たらきっとあの噂は本当なのだろう。つまりこれはその入学テストみたいなもんか。

「なんとなくはな。で?俺はどうすれば入学できるんだ?」


場所を変えようと言われ建物から出た。春休みなのか外には人っこ1人いなかった。部活などもやっていないのだろうか。静かな校舎に雪を踏む2人の足音が響く。この前の雪が未だに融けきっていないらしい。大人の男は先ほどの部屋で別れた。この子供とは何か話そうかとも思ったが結局お互い話す事はなかった。

そして着いたのは競技場らしき場所。試験の時にはこんなところまで見なかったのでよくわからないが、見てれはそんな感じ。とても時代を感じさせられる建物だ。しかしここに連れてきたってことは...。

「とりあえずバトルってか。」

「ただの試験の一部だ。そう気負う必要はない。ただ勝てばいい、それだけだ。」

確かに極論だけどさ、簡単に言わないでくれる?まあそれは置いておいて、リングの至る所に血が見えるあたりやっぱり普通じゃないんだなって改めて実感する。ほんと負けたらどうなる事やら。


「決闘のルールは実に簡単。相手を無力化させれば勝ち。気絶でも降参でも。でもここに集まる奴らが降参なんてするわけないがな。殺すのは禁止。あと武器、もしくはそれに準ずるものの持ち込み禁止。過去にそれでひと悶着あったらしいからな。あと一度場内に入ったら出る事はできない。で勝ったら東の門に、負けたら西の門に。その後は案内人が継ぐから。以上だ。質問はないな。行け。」

これから俺は誰とも知らない人と戦うのか。ここまで緊張するのはもしかしたら初めてかもしれない。これは確かに死ぬことはないだろうが相手は殺す気で向かった来るのだ。ならばこっちもそれなりの覚悟で挑まないと。

半ば追い出される形で俺は南の門から入場した。先ほどまで曇っていたがついに雨が降ってきてしまった。地面に付いた血が流されていく。少しざわついた心を深呼吸で落ち着かせる。

大丈夫、見失ってなんかない。忘れてなんていない。俺が殺してしまったあの子はいつだって俺の心にいる。

「さてと、始めますか。」


最初の予想外は相手が女の子だった事。それも多分俺より年下。白よりも灰色に近い髪を三つ編みにし1つに結っていた。そんな女の子がこのようなところにいるのも全く不思議ではないが、てっきり男ばかりと考えていたため少しだけ反応が遅れた。次の予想外はあくまでリングへの武器の持ち込みが禁止なだけで、リングの外は特に規制はされてない。これは完全に俺の確認ミス。これで俺がボロボロになっても反則にはならない。ただの不運な事故として扱われるだろう。ルールは破ってないしな。そして飛んできたのは火矢。一度場内に入ってしまえば負けるまで出ることはできないから一方的にやられる。ルールをうまくすり抜けた戦略だ。

「っ、やっばいな…。」

腕に刺さった矢には返しがしっかりついており全く抜ける気配がない。とはいえこのまま放置していても火が体に移ってしまう。雨がなかなか降っているから焼死なんて事はないが負けは確定する。 …詰んだな。

俺は為す術も無く倒れた。流石に小学生が火矢に刺されて元気に立っていられるわけがない。顔を上げその女を睨みつける。

「クソッタレ…。」

相手を無力化させれば勝ちだが先ほど言った通り、場内にいなければこれはただの事故として扱われる。勝つ為には最低リングにいなければならない。その為少女はリングに向かって歩き出す。俺が完全に無力になる前に。そして入る直前、その足が地面に着く前、場外へ戻れないギリギリのタイミングで俺は立ち上がった。その少女は驚いてこそいたが冷静さ失ってなかった。簡単に勝たせてやるわけないだろ。

「舐めんなクソガキ。」





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