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さよなら、うそつき  作者: わたぬき たぬき
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結局答えはわからないままご飯の時間になった。あかりは自然とご飯に混じっていた。夕食後にはみんな諦めたのか飽きたのか、クイズの話題は挙がらなかった。

お風呂に浸かりながら考えた。中学校で一体何があったのだろう。オセはなぜ俺に手紙を寄越したのだろう。そもそもあいつは今どこにいるのだろう。俺が行かなかったらどうなるのだろう。……結局会いに行かなきゃわかんないだろうな。完全に手の平で踊らされてますな。というか何で今更関わってくるんだよ。卒業試験受かったんだから関わってくるなっての。

「あ〜、極楽極楽、」

無駄に考えるのはやめよう。そういや何で今日あかりうちに来てるんだ?何かあったっけ?……お菓子の感想聞きに来た、とか?それなら事情を話した後に謝ろう。きっと許してくれるだろう。……何で俺が謝らなくちゃいけないのか。全く。

「食べたかったな…。」


「あ、出たよ。」

洗面所を出るとあかりがパジャマを抱え立っていた。どうやら今日は泊まっていくらしい。しかしあかりは何も言わずただじっと俺の顔を見てくる。ちょっとだけドキドキしてしまう。

「何か?」

「いや、全くの、感なんですけど、多分夜一さんはあの問題解けてるんじゃないかなって。でもそれなら何で教えてくれないのかなって。それはきっと言いたくないことなのかなって。勿論そうだとしても聞き出そうとは思いません。でももし話してくださるなら聞きたいなって。それでひかりさんに相談したら『じゃあ今日うちに来なよ!ついでに泊まってっちゃいなよ!』と言ってくださってお言葉に甘えさせてもらいました。」

揺蕩えた様子で髪を手でくるくる巻きながらそんなことを言った。

「聞きたいか?」

「もし話してくださるのなら。」

いつかわかるのであれば今ここで話しておいたほうがいいのかな。

「いいよ、話すよ。ちょっと長い話になるけどそれでも良ければ。」

あかりはにこりと笑って風呂に行った。洗面所の扉が閉まると俺は壁に体を預けた。こんな勿体ぶっておいて然程大した話ではないと思うんだけどね。小説とかだと『神倉夜一の中学編』みたいなところかな?


皆様ご存知の通り私こと神倉夜一、旧名鶴久家夜人は母親蓮香が父親伸紘に殺され、それを救えなかった自分の弱さが嫌でヒーローに憧れ、目指しました。しかしさらに不幸が続き、その憧れから悪を断固として許さない頑なな者になり、今度は大切な友人を死に追いやりました。心がボロボロになり齢12歳の頃には1つの信条を掲げました。『希望を持たなければ絶望することもない』。恋愛でよく見かける『こんなつらい思いをするくらいだったら好きにならなければよかった』というやつに少し似てますね。だけどこんなの馬鹿の一言ですよね。あ、夜一少年の信条です。だって希望を持たないのは絶望してると一緒でしょう。支離滅裂。まあこんなことにも気付かずに目標すらまともに見えてなかった少年が、それでも知性だの力などを求めたのはやはり大切なものを守れるだけのものが欲しかったという事でしょう。矛盾してますね、だから間違えたんでしょうね。そしてそれを正すために。


「……あの、それっぽく語ってる最中にすいません。この前座みたいなの、いる?」

「何を言うかひかりよ。本編を楽しむためのプロローグってやつだよ。料理でいうなら下拵したごしらえ。運動前のストレッチ。必須要綱だ。」

「まあそれなら聞くけど。……それとお母さんとお父さんがいないのは別に気にしないけど、海雪君や幸生には言ったの?」

「あんまり多くの人に語りたい話じゃないからな。自慢できるものでもないし。」

「まぁそれは夜一が決めることか。」と納得してもらったところでもう一つだけ確認事項をば。

「あ、それともう一つ。先にあの問題について答えを教えていただきたい。何となくモヤモヤしてるのやだし。夜一多分もう解けてるでしょ?」

確信ですか。まあそうですけど。どっちが先でも大して変わらないんだしいいか。鉋には後でうまく誤魔化しておこう。


「じゃああの問題の答え合わせ。最初の『<4階の天井の3つの黒い箱』だっけ?これはまずペンと鉛筆を用意します。横に5つの線を引きます。でその4階に相当する場所の天井に黒い箱というか、長方形に黒く塗ります。はい、楽譜である休符ですね。で、最初の記号は数学で使う「何とか小なり何とか」の記号ですね。less than signとかとも。ただこのままだと意味がわけ分からないので休符を数字譜に置き換えます。休符は数字譜の0。つまり『<0』でこれはマイナスですね。これが3つだから『---』が答えとなるわけです。」

「え、っと数字譜とかよく分からないんですけど、これが答えなんですか?マイナスの記号3つが?」

他の2人も当然疑問の顔を浮かべている。かくいう俺もこんなのに辿り着いた時は違うと思って別の答えを探した。候補にとどめて置くくらいしかしなかった。

「合ってるから大丈夫。ちゃんと確認も取ってるから。納得はいかないだろうけど次いってみよう。えっと『我々の世界を構成してるもの』だっけ?これも数学だな。この世界を3次元と捉えてそれを構成するのはx軸、y軸、z軸のそれぞれの点だな。てなわけで3点が答え。篝はまだここら辺は習ってないからわかんないか。」

「いや私たちもまだちゃんとは習ってないよ……。というかほんとにそれが答えなの?全く意味が分からない私が悪いのかな?」

そんなことはないと言いつつ、さっき使った紙と鉛筆をもう一度手に取る。そして2つの答えをそこに書く。

『--- ・・・』

さて分かるかな?ついでに三問合わせた答えはoseになります。

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