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さよなら、うそつき  作者: わたぬき たぬき
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「これはクイズか何かかな?」

封緘した手紙篝が再度開ける。鉋も内容が気になったのか篝の横から顔を覗かせる。2人はすぐに難しい顔を浮かべる。まあだろうな。俺も全く意味が分からない。分かることとしては、この手紙の差し出し人はあかりではないということくらいだろう。言いたいことがあればこれを渡したときに言うだろうし。でも言いにくい事って可能性もあるか。これを見て悩む俺たちに「こんなのもわかんないんですか(ゲス顔)なんてのも考えにくいし。…...そういや渡す前に海雪に会ったって言ってたな。海雪ならこっそり手紙を入れることなんか造作もないだろうし。ま、これを解けば全てわかることか。上等だやってやるよ。丁度退屈してたところだ、こんなのお菓子片手にちょちょいのちょいのお茶の子さいさいよ。

「何だこれ、さっぱりわかんねっぞ。」

「ちょっと待て。なんでお前がその菓子を食っている。」

「ん?何を言うかお前さん。お菓子は食うものだろ?」

「もういいよ、喋んな。」

言葉と同時に鉋の鼻頭に拳をめり込ませる。

幸いに今日は金曜日だったのであかりと会うまでまだ3日ある。もしかしたら無視をしてもいいのかも知れないが、なんとなくそれは違うと思う。これが杞憂とわかるためにもなるべく早く解いておきたい。


そしてそのまま進展のないまま金曜が終わった。諦めて布団に入って寝ようとしたがどうしても考えてしまう。つい落ち着かず何度も寝返りを繰り返す。

そんな時ゆっくりと扉が開いた音がした。

「あ、もう寝ちゃってるか。」

目を開けてなかったが声からしてひかりというのはわかった。すぐに去ると思ったので特に何も言わずそのまま目を閉じたまま扉の閉める音を待った。けれどひかりは扉を閉めず、こちらに歩んで来た。そしてベッドに腰掛けると寝てると思ってる俺に独り言を呟く。

「…….ねぇ。篝ちゃんから事情、聞いたよ。また何かに巻き込まれそうなんだってね。……。もう、いんじゃないかな?夜一はもうすごい頑張ったよ。たくさん辛い思いをして、たくさん泣いて、だけど最後まで諦めなくて。だからそろそろ休もう?

前に、確か夜一が中学生の頃あたり、全く会わなかったよね。……すごい寂しかった。真っ白な3年間だった。私あんな思い二度としたくないな。……でもきっと夜一は進むんだよね。わかってるよ。私はそんな君を好きになったんだから。もし本当に辛くなったら私、そばにいるからね。………おやすみ。」

3回ほど軽く髪を撫でられた後、静かに扉が閉まる音がした。

「ほんと申し訳ないな…」


翌日、俺は海雪を誘い出かけた。最初は即刻で断られたが、仕事を手伝うことを条件に了承してもらった。海雪の車に揺られながら仕事を手伝ったり、たまに会話をしたり、数時間ほどそんな時間を過ごした。


そして着いた。俺の通っていた中学校に。


「随分と変わったな。」

俺が卒業の時に見た大層立派な姿をしていた校舎も今や廃墟と化している。わずか1年半ほどでこんなにも変わるものか。……いや、少なくとも夏にはこんな風になっていたのか。確か海雪と訪花も焼けた学校がどうとか言ってたな。それに鉋の写真を見た時はまさかとは思ったが。となるとあいつは……。

「ホラーにはもってこいだな。」

そんな呑気な事を海雪は言ってた。確かにこんな森の中焼け爛れた学校はぴったりだな。

「そういやここに来たってことは当然あの問題解けたってことだよな?」

簡単に言ってくれるよ。でも実際3つ目以外は割とすぐ解けたけどな。わかる人にはすぐわかる、と思う。

「一応解けたが、でも3つ目のあれはちょっと強引じゃないか?らしくない。」

「そう、かもな。まあいろいろ俺にもあるんだよ。」

「……ふうん。」

おれは深く言及はせず、廃墟に向け足を進めた。戦場の跡地のようになった学校に2人の人物が想起させられる。……大丈夫だよな?2人とも。


大きな門をくぐった後も外見同様酷い有様だった。荒れに荒れ、動物も寄りつかないだろう。すでに警察などが立ち入ったのだろうか。一応門の所に虎の子テープが張られていた。まあどうでもいいか。そもそもここらへん何かどうでもいいのだから。

この学校はかなり大きかった。寮館、図書館、校庭が2つ、体育館も2つ、運動部、文化部それぞれの部室棟、教師棟、教室棟、弓道場、プール、テニスコート8面、時計塔、食堂棟、植物園、娯楽棟、多目的ホール、博物館、美術館、病棟、牧場、エトセトラ。さすがは天才を作ると謳っていただけはある。

しばらく歩いてたどり着いたのは学校の隅にある闘技場。施設というより遺産としてあるようなものだ。そこにはボロボロな2本の刀と1挺の銃の見事なオブジェクトがあった。それに感動しつつ、闘技場に入り階段を降りる。暗くなってきたのでカバンからライトを出し1つを海雪に渡す。階段を降り、小さな広場からしばらく歩いたところにある小さな部屋に入る。2人入ると少しきついほどだ。

「で、なんでお前と押し競饅頭しなくちゃいけないんだよ。」

「少し我慢しろよ。この先のこと知りたいんだろ?確かノブを反対方向に……」

カチッと音がした後ゆっくりと部屋は下降して行った。部屋に見えてたのは実はエレベーターでしたーってオチだな。なんとも安っぽい。さて、この先はどんな景色が広がっていることやら。


ゴウンと鈍い音がした後、ゆっくりとその扉が開いた。もう2度と来るつもりはなかったのに。そしてその先の光景は真っ白な部屋に黒い何かがそこら中にあった。まるで半紙に墨を乱雑にぶち撒けたような。

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