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少し溶けたアイスと、道で会ったひかりを家に連れて帰ってきた。ひかりは家でとても人気で、来ると必ずパーティーみたいになる。まずはアイスをみんなで食べながらの雑談。最初に話題に上がったのは、いつひかりが我が家に来るのかについてだったが、どうやらひかりは今日からこの家に住むらしい。それを聞いた途端、兄貴と妹が壊れた。いつかは壊れるとは思っていたが。耳が壊れんばかりの発狂。そして俺も巻き込まれ謎のかごめかごめ。やめさせようとも思ったがひかりが本当に楽しそうに笑うので、今日くらいは俺も許すことにした。それからはみんなでゲームで遊び、親が帰ってきて、夕飯に焼肉を食べ、今度はトランプで遊んだ。散々に遊び12時ごろになると「明日どこか出かけようね」という会話を機に各々が部屋に帰っていった。俺も今日はもう寝ようと思い布団に入った。
「まだ起きてる?」
「もう寝るよ。」
どうせ明日からも家にいるんだ。会話などいくらでもできるだろう。
「そか。じゃあおやすみ。」
「...どうかしたのかよ。」
ほんとにこいつは俺の扱いに慣れてるな。
「ちょっと声を聞きたいなって思って。」
おい、俺は彼氏ではないぞ。漫画の読みすぎでは?
「あ、来週から私も同じクラスになるから。よろしく。」
ははは。やっぱりだ。こいつ、漫画の読みすぎだ。
「でも嬉しかったな。あそこまで喜んでくれて。篝ちゃんがあそこまではしゃぐとは思いもよらなかったよ。」
「それだけ嬉しかったんだろ。」
「そだね。君も嬉しかった?」
「まあ、な」
それから少し家のことや学校のことを教えた。ひかりは容量がよく、1回いえばある程度は理解した。これなら勉強にもついていけるだろう。そしてふと、頭に昔の思い出がよぎった。
「1つ質問していいか。」
いつかは訊こうとしてた苗字についてだ。どこから由来したのか、いつの日か質問するつもりだった。
「大した意味はないよ。日向の中の日陰みたいな、明るいところの暗いところみたいな、ひかりの中の闇みたいな、昼の中の夜みたいな。ほんとにその程度の意味だと思う。よく父様がそんなことを言ってた気がする。意味はよくわかんないけど。」
自分を散々痛めつけ、そして捨てた人でもやはりひかりにとっては親なのか。
「ごめん。辛いことを思い出させた。」
彼女はただ静かに微笑み部屋を出て行った。
その笑顔が頭にこびりつき、眠りに落ちるのに少し時間がかかった。