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さよなら、うそつき  作者: わたぬき たぬき
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別の目的とは何ですか?そう言おうとした時、手術室の扉が開きました。私たちは夜一さんに駆け寄りました。訪花さんも篝さんも来ました。生々しい傷が夜一さんの体に見えましたが、ちゃんと自分の力で呼吸しているのが分かりました。

「何とか峠は越えましたよ。もう数日したら意識も戻るでしょう。」

私は力が抜け、みっともなくその場に座り込んでしまいました。

「良かったです。本当に...。」


私たちは遠目に夜一さんの姿を再度確認すると、「今日はもう帰ったら?」と看護婦の方に言われたので家に戻ることにしました。

「また来ますね。」

小さくそう呟き、病院を後にしました。

海雪さんにさっきのことを聞こうと思ったのですが、海雪さんは外に止めてあった車に乗り込み、どこかに行ってしまいました。訪花さんも病院から出ると

「私はこっちだから。じゃあね~。」

といい、行ってしまいました。また私たち3人は今度は家に向かって歩き始めました。

「別の目的って何だろね。」

「わからん。お前に話を聞いても特にそれらしいものもないしな。ひかりとあかりが居ないときに夜一が行動を起こして、それが達成されたとかじゃないのか?」

「そうなりますよね。行動を起こした姿も見てませんし、それが達成されたのも見てませんし。でもそしたら、海雪さんはどのようにしてその目的を知ったんですかね?」

沈黙。私たちが頭が悪いのでしょうか?それとも夜一さんや海雪が頭がいいのでしょうか?…多分後者ですかね。

その後もずっと考えましたが結局何もわかりませんでした。そういえばと神倉家に電話をし、夜一さんの手術が無事終わったと告げますと、お母さんは号泣していました。

「美味しいご飯作って待ってるから。早く帰って来てね。」

その言葉はお母さんは全くの無意識でしょうが、私にとってはとても嬉しい言葉でした。事件は完全に終わり、危険は無くなったので私も流石にこれ以上はお世話になるわけにはいかないと考えてました。けれど、一度幸せな家庭を知ってしまえば、あの寂しいに家に帰るのが躊躇われます。『早く帰って来てね』。そう言われたら断れません。ですから、せめて後1日だけお世話になります。

「少しだけ待っててください。すぐに帰ります。」


いつもとは違う布団の匂いと感触に目を覚ます。ゴロンと寝返りをうつと太陽が眩しかった。とりあえず上体を起こす。身体に大きな傷があったが、とりあえずは助かったらしい。時計の針は9時半を示し、日付は8月21日。事件の翌日だ。体を動かすと所々痛かったがさほど大したものではなく、とりあえずカーテンを開ける。部屋は個室らしい。それもなかなかに広い。グギュルルル~、とお腹が鳴る。

「腹減ったな。」


おかしい……。

部屋を出て近くにいた看護師さんに「お腹空いたんですけどこの辺にコンビニとかってあります?」と言ったら凄い驚かれた後鬼の形相でおこられた。その後ベットに寝かせられ、医者に体を舐め回すように見られた。とりあえず絶対安静を強いられ、ご飯もお昼までお預けとなった。俺は多分今しょぼ~んみたいな顔をしているだろう。10時からは面会を許されてるからもしかしたら誰か来るかもしれない。なんて期待しつつ胸に手を当てた。

「やっぱり胸か…」

あいつが胸を撃ってくるのはなんとなくわかっていた。複数撃ってくるのも。でも最後のはちょっと計算外だな。何も無ければいいんだが。


謝罪のメールを熟考し、送信するときにはすでに10時を回っていた。やっぱり誰も来ないよな。べ、別に寂しくなんかないけどな!こんな馬鹿なことしてる余裕ない。俺は1つの問題にぶち当たった。とりあえずナースコールをば。

「あ、あの。自分はこの部屋から出てはいけないのですか?」

「ダメです。絶対安静でお願いします。お食事や水なども用意致しますのでご安心を。」

「い、いや、あの...ト、トイレは如何にすれば?」

「ああ、ご心配なく。そちらにあるでしょう。あとで回収に行きますのでどうぞご安心を。」

ブチッと。切れた。あの人切りやがった。

そういえばお医者さんが来たときなんかあの人置いてったな。この小さめの段ボールか?

まあ、あれだよ。あのボトルだよ。動けない人が用を足すときに使うやつ。確かに絶対安静を強いられてる俺には確かにぴったりだ。なるほどなるほど。

「お願いします!トイレに行かせてください。あなたは私からプライドまで奪うのですか?ひどいです、酷すぎます!」

「あなた必死すぎでしょ...。分かったわよ。トイレに行く許可を与えます。」

看護師さん大好きです!、と言おうと思った瞬間

「私も同伴させてもらうけどね。」

大っ嫌いだ!

しかし背に腹は変えられません。私、神倉夜一は看護師さんにあられもない姿を見られてしまいました。


時は経ち11時ごろ。扉から静かにノックする音が聞こえた。

「空いてますよ〜。」

俺は暇つぶしにと看護師さんから貰った塗り絵をやっていた。あの人絶対俺を馬鹿にしてる。看護士がこんなことでいいのかよ。

「え!?もう意識あるんですか?お医者さんは数日には意識を覚ますと言ってましたが。ほんとにすごいですね。」

「たまたま起きちゃっただけだよ。それに大した怪我でもなかったしね。寧ろどうして意識を失ってしまったのか。」

「それは...。救急隊の方が仰ってましたが、心臓が止まってたんですよ。このびょ「あー、それ以上言わなくていいや。あとそのことは他言無用でよろしく。」」

良いこと半分、悪いこと半分てところかな。


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