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さよなら、うそつき  作者: わたぬき たぬき
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夜一さんはその後、救急車で搬送されました。私もご同行させてもらいました。家族でも恋人でもないのは百も承知です。でも少しでも傍にいたかったのです。

車の中で隊員の方は必死に処置をしてくださいました。ですが夜一さんの体調は好転せず、そのまま病院に着き、手術となりました。私は神倉家の皆さんに連絡を取った後、手術室の前でただ回復を祈りました。

皆さんが到着し私は公園でのことを話しました。3発の銃弾が防弾チョッキをしてたものの、夜一さんに当たったと。あの男は捕まったこと。皆さん「衝撃で意識失っただけだよ」「すぐ良くなるよ」など言ってくれましたが、あの時確かに隊員さんは呼吸がないと、心臓が止まってると言ってました。その後ひかりさんと私は事故現場にいたということで警察に事情聴取を受けました。保護者の同行も必要だったので病院には篝さんが残りました。どうか事情聴取が終わった頃には、無事に夜一さんの手術が終わり、静かな呼吸で寝ていますように。


そして事情聴取が終わる頃には空は藍色となり、わずかに星が見えました。私とひかりさんと佐藤さんは夜一さんの様子を窺うためにもう一度病院に行きました。お父さんとお母さんは夜食の準備や学校への連絡のために帰られました。

「一緒には行かないんですね...。」

「子供に泣く姿を見られたくないんじゃないの?...泣きたいのは私も同じだっての。一緒にいたのに、逃げたんだから。最低だな、私って。」

なんて声をかければいいのか、私にはうまい言葉が見つかりません。私だってただ家にいただけなんですから。安全な場所にいて、一緒に戦おうとしなかったのですから。

そんな私とひかりさんを佐藤さんは殴りました。ポカっと言った程度ですが。

「あいつがいざとなったら逃げろっつったんだろ。お前は約束を守っただけだ。あかりも、どうせなんか『私も何もできなかった』とか思ってんだろ。いいんだよ、男が女守るのに理由なんかいらないんだよ。」

「幸生、セリフくさい。」

ひかりさん、そんな冷たく(あし)らったら、ほら。幸生さん般若みたいな顔ですよ。でも「ウルセェェェェェェェ」と叫びながらも、ほっぺたを軽くつねるだけで済むあたり、優しいですね。

私もそこまでは思っていませんが、ほんの少し臭いセリフだとは思ってしまいました。でも幸生さんが私たちを励まそうとする気持ちは十分伝わりました。ひかりさんにも伝わってると思います。おかげで少しだけ元気が出ました。


病院に着くと手術室に向かいました。ですがそこにはすでに篝さんの姿は無く、少し離れた椅子に寝ていました。隣には海雪さんと訪花さんもいらっしゃいました。2人はこちらに気が付くと海雪さんだけがこちらに向かってきました。海雪さんはまだ火傷の痕が色濃く残っていました。訪花さんは篝さんを膝枕し、頭を撫でていました。

「今回は本当に申し訳ない。」

開口一言目で謝罪をしてきた理由ならなんとなくはわかります。海雪さんが助っ人としてボディーガードの方たちを送ってくれたことはとても感謝しますが、その中に敵が混じっていたのも事実です。きっとそのことを謝っているんでしょう。みなさんがボディーガードとしていればきっと、夜一さんは無傷でこの事件を終われたでしょう。

「謝るなら夜一さんに。結局私も何もできなかったので。」

「すまない。...あと少しだけ、自分の考えを話してもいいか?」

どうやら海雪さんはこの件でまだ思うところがあるらしいです。私にはさっぱり見当もつきませんが。

「確認なんだが、夜一がボディーガードの中に敵が紛れ込んでる可能性がある、とか言ってなかったか?ひかり?」

「言ってはいなかったよ。けどお昼ご飯の時、予定してた席から1つずれたところに座ったんだよ。あれは多分、予定してた席に何かトラップがあるかも、って考えたからじゃないかな。私たちがどこの椅子に座るかまで知ってるのはボディーガードさんだけってことは、夜一はボディーガードの中に敵が紛れ込んでるって考えていたと思うよ。」

ひかりさんも頭が切れる方なのですね。でもそしたら、その場で作戦をやめるべきではなかったのではないでしょうか。敵が何人、どこにいるかもわからないのに。

海雪さんは少し考え込んだ後、「そういう事か...。」と1人、何やら結論に至ったそうです。結論も何も既に結果は出てると思うんですけど。

「あかり。」

「はい?」

「今回の作戦の目的は何だ?」

はて?海雪さんも変なことを聞きますね。それは伸紘さんを捕まえることだと思いますが。

私は思ったことをそのまま言いました。他の皆さんも同じ意見と、首を縦に振ります。ですが海雪さんは納得しているように思えません。申し訳ないですが私には他に思いつきません。

「確かに捕まえることが最大の目的だ。でも別にも目的があいつにはあったんだよ。そしてそれも見事成功させた。」


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