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さよなら、うそつき  作者: わたぬき たぬき
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忘れてしまうほど悲しい記憶ではあったが、時が経てばそんなこともあったなと思う程度である。みんな暗い雰囲気になっているが別にそんな大したことではないだろうか?でも普通ならこういうときは泣いたり怒ったりするのが普通なのかな?

「とりあえず今の状況をまとめるよ。」

このままでは何も進展がなさそうなので俺が語り部をやらせてもらう。語り部とはちょっと違うか。

「まず俺と篝がシンガポールにいる時、伸紘が錦に火災を起こさせた。そして帰国。その後錦は整形をし、山奥でこっそりと暮らしていた。そしてこれは推測だけど、花火大会で伸紘は錦の整形後の変装をして俺の前に現れた。錦はその後捕まったが、伸紘の方はノーマークでその結果、ひかりを傷つけた。今もきっと良からぬことを考えてるんだろうな。...一応鉋の写真の件も説明入れとくか?」

鉋は首を横に振ると「話を続けて」と言った。続けてって言われてももう話すことほとんどないんだけどな。

「じゃあ、今後についてどうするか。俺としてはいつまでも怯えて暮らすのは嫌なので、こっちから攻めていくのがいいと思うんだけど...…」

みんなが黙ってる中、しゃべり続けるのって辛いものがあるよね。誰でもいいから交代してほしいんだけど切に。そしてその願いが届いたのか、あかりが話し始める。

「確かにいつまでも怯えるのは嫌ですね...…。多少危険でも行動は起こすほうがいいと思います。でも、できるだけリスクが低い方法がいいですね。確実性よりも安全性で。」

「それなら...」

そこからしばらく会議が進み、作戦決行は明日になった。


夜も11時となり、俺は今日は早めに寝ようと思っていた。みんなも今日は早めに寝るらしく、母さんと父さんはもう布団に入っていた。

「まだ起きてるか?」

父さんが寝ているからきっと鉋だろう。予想は的中し、俺は中に入れた。

「緊張して眠れないんじゃないかって思って。大丈夫か?」

「別に平気だよ。むしろ眠いから今日はもう寝たいんだが。」

大きなあくびをひとつ。そして鉋も大きく1つ。

「鉋も眠いんじゃねえか。もう寝ようよ。」

「じゃあ1つだけ。さっき写真の説明の時何言おうとしてたんだ?あの時は何か訊きにくかったから聞かなかったけど。」

なんだそんなこと気にしてたのか。さして面白い話題でもなかったのでまたあくびが出てきた。

「だからさ、鉋が見せた写真さ。あれこの前のって嘘ついてたろ。第一ひかりはメロン味食ってるし、この時間は人がそれなりに多くて写真なんか取れないって。みんな妙にテンション高そうで顔赤いのは多分酒だろ。多分だけどこれ去年鉋の代の人は20歳だからそれで調子乗っちゃったときのじゃないの?写真の時間だって変えるの簡単だし。」

もはや最後の方はその場の思い付きで言った。どうせ合ってようが間違ってようが、大したことではない。俺の意見を腕を組み、目を瞑った姿勢で聞いていた鉋は静かに拍手し始めた。

「見事だよ名探偵君。君の言う通りだ。まさに平成のホームズとでも言っておこう。」

「初歩的なことだよ、ワトソン君。」

ため息混じり。

「キャー!カッコいいー!惚れちゃうぅぅぅ!(裏声)」

少しでも冗談に乗った俺がバカだった。シャーロキアンほどでもないが、それなりに好きだったのでいつか言ってみたかったが、やぱり合わないことはするべきじゃないな。

「うるっさいわボケナス。話終わったのなら帰れ。」

「hahaha!そんなに熱くなるなよboy。余裕のない男はモテないZE☆」

ウィンクと同時に☆が飛んできた気がした。避けた。

「その言葉、ちゃんと墓に刻んどいてやるから安心して逝け。」

「あ、それと話は変わるがな。」

「あ゛!?」

ん゛た゛よ゛!こっちは眠いっつってんだろ!

「俺は9歳でお前の兄貴になった。それから10年以上お前を見てきた。…...立派に育ったと思うよ。何もかも1人でできるんじゃないかって思うほどに。でも忘れるなよ。自分で何もかもできるからってそれが強さとは限らない。人に頼ることが弱さの証明になんてならないからな。」

鉋が部屋から去り、また部屋は静かになった。

だから...…急に真面目なこと言うのやめろって。変な気分になるだろ。そんなの……わかってるさ。


少しだけ夢を見た。この前あかりに襲われたときに見たものだ。遠くから呼ぶ女の人。今ならはっきりわかる。俺の幼い頃の母親、蓮香さんだ。

『ぉ-ぃ。ぉ-ぃ。おーい。』

段々と声と姿が明瞭になる。どこか懐かしい感覚。記憶はほとんどないけどこの気持ちはきっと本物だ。『俺、今年で17になるんだ。辛いこともあったけど、今を精一杯生きてるよ。だからどうか見守っててください。』

もし伝えられるならこんな言葉を伝えたいな。少し遠くで手を振るお母さんに2、3回手を振った。そして少しだけ、笑ってみた。

『だったらせめて墓参りにでも来いや。』

「ぅヲおゥ!?」

バカ野郎!おまっ...バカ野郎!!いきなり喋るんじゃねえよ、そしていきなり目の前に現れるんじゃねえよ。高2の息子のおもらしなんて母親としても見たかないだろ。寝起きドッキリはあかりだけで足りてるんだよ。なんで朝からこんな疲れるんだよ。ったく...。

窓の外から見た景色はとても眩しかった。

「もう朝か...。」


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