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テストも無事?終わり、今日から夏休みが始まる。受験勉強?知るかそんなの。来年から始めれば多分なんとかなる!と信じたい…。
部活もバイトもしていない俺にとっては、1ヶ月以上の休みになる。まぁ、人間として腐っていくよね。
強いて言うのなら家族旅行とみんなでどこか遊びいくというのは決まっている。それ以外は特にやることもないので、宿題早めに終わらせてなんかのゲームでも極めようかと考えている。
そんな折、携帯が騒ぎ始めた。海雪からだ。
「お前夏休み暇だろ?半分くらいもらうぞ。」
次の瞬間スーツの男どもがどこからともなく現れ、俺は有無を言わさせてもらえず連行された。俺はたまに、海雪を友達かどうか怪しくなる時がある。
なされるがまま車に乗せられ、飛行機に乗せられ、どこぞの島まで着いた。んー、どこ?ここ。お、マーライオン発見。ってことはSingapore?
「あ、いました~。」
しばらく止めどなく水を吐き続けるライオンを悲観な見ていると、どこからか聞き覚えのあるJapaneseが聞こえてきた。見ると懐かしきや訪花さんがそこにおられた。今回はサンダルに白のワンピース、それに大きな白い帽子と、さながらお嬢様旅行バージョンといった感じだった。
「あれ?あなた様もこちらにおられたのでございますか?」
なぜだかこの人には、つい敬語を使ってしまう。
「敬語なんてやめてくださいよ~。なんだか距離を感じてしまいます。私、敬語など使わない、そういう友達が欲しいんです。」
「あ、了解。」
我ながら大した順応力だと思った。それからお互い敬語をやめ、目的の場へと足を進めた。そういえば海雪は結局、訪花さんをお嫁にするのだろうか。まあそうじゃなかったらこの人はここにはいないか。
しばらく歩くと高級感溢れるホテルに着き、その中のラウンジに今回の主犯がいた。篝とともに。
「おい貴様。百歩譲って俺を拉致するのは構わないが、妹まで巻き込むとはな。さすがにキレ…あ、すみません。Sorry. We are friends.Best couple.」
海雪に近づき胸ぐらでも掴んでやろうかと思ったが、ボディガードみたいな人が腕を掴んできたので今回は諦めてやることにした。
「じゃあとりあえず昼飯にするか。」
「違うんだ、最後のはテンパって間違えただけなんだ。頼むからそんな汚物を見るような目で見ないでくれ。」
今回のこのバイトは海雪から渡される書類をひたすらパソコンに打ち込むことだった。日本でも全然できるだろ、とは思ったが重要なものらしく、直接の手渡しで取引は行われるらしい。そんなものに関わったら俺たちはどうなることやら…。
それから昼飯を食べ終わると篝と2人、部屋に案内され仕事を始めた。
「んで、なんで篝がここにいるんだよ。」
「海雪さんから電話がかかってきて、時給のいいバイトがあるから来ないかって誘われたんだよ。それになんか話もあるらしくて。」
それで海外まで来るか?普通。まあそれはいいとして受験勉強しろよ、夏休みだぞ。それに話があるって、篝と海雪ってそんな仲良くないだろ。
「話ってなんだ?」
「……内緒。」
お?なんだこの反応。なんだ内緒って。人に言えないような会話していたのか。まさか…こいつまで海雪の嫁候補に入ってきたのか!?あの野郎に「お兄さん」なんて呼ばれるのなんか俺やだよ!
「そんなことより手を動かして。」
そんなことだと!?お兄ちゃんがどれだけ心配しているかも知らないくせに。そもそもまだ15歳だろ。結婚なんて......。
そんなことを考えつつも作業を進めた。1週間も。
「あれ、もう終わったのか。あと1、2週間はかかると思ってたんだが。まあいいや。じゃあ明日、帰りの飛行機予約しとくからそれまで自由にしててくれ。」
今は朝の9時。とりあえず観光することにした。
「って言っても夜一兄さん言葉話せるの?英語ならまだしも、中国語とか私一切知らないよ。」
「いいか、こういうのは伝える気持ちが何より大切なんだ。たまには兄貴ってやつを見せてやるよ。」
篝を外で待たせ、俺は店内のジュースを買おうとした。何せ暑いのでとりあえず何か飲みたかった。
「Execuse me.How much is it?(すみません、これいくらですか?)」
店のおっさんはニヤニヤとしていた。俺の発音がそんなに面白いのだろうか。死n...くたばれ。
「15S$」
良かった、通じた。しかし俺はお金を持ってない。篝からもらうとするか。
「篝、お金は?」
「え、ないけど。」
「は?」
はい終わった。そういえばホテルの道も忘れたし。外国で金もない上に迷子とか。この喉の渇きはそこらの泥水で癒すとするか。
「はいどうぞ〜。」
顔を上げると先ほどのジュースを抱え微笑む訪花さんがそこに。ほんと女神ですわ。
「なんとなく嫌な予感がして、来てみて良かった~。さすがにお金持ってないとは思わなかったけど…。」
「あはは。いや、ほんとすいません。それで、よかったらホテルまで案内して欲しいんだけど。」
「え。私一応2人の観光案内役で来たんだけど…。まあ、2人が帰りたいならしょうがないか...。じゃあ着いてきてください......。」
「わ、私シンガポールの観光したいです!是非案内お願いします!!ね!兄さん!?」
目は口ほどに物を言うという諺がある。『空気読めよ、な?』そう言っている。それに声が大きいよ篝さん。耳が壊れしてまう。