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翌日の放課後。てっきり断ると思っていた海雪だったが、昨日俺が気絶している時にみんなに詰問され、しぶしぶ了承したらしい。やったぜ☆
そんなわけで今は海雪自宅前。俺は何度か来たことあるから驚きもしないが、始め初めてくる人はみんなアホみたいな顔してる。実際アホみたいにでかい家だからしょうがないが。
家に入るとすぐ2階の客間に通された。そこだけでもとても広く、いちいち驚くのに疲れる。
「この部屋から勝手に出ることは許さない。トイレに行く際は俺に言うこと。また、要望があれば逐一俺に報告。何か質問、または反論のある者がいれば俺が相手になる。」
海雪のルールに反論、質問する者は当然いなかった。後半はもはや脅しだったしな。
「質問は認めるが私語は厳禁。7時に解散でいいな。よし、じゃあ勉強開始。」
聴こえるのはシャーペンを滑らす音だけ。なんか、俺の想像と違すぎて気まずい。誰かこの空気を壊してくれ…。
「そんな勉強じゃあ身に入りませんよ〜。」
ゆったりとした声で襖を開けたのは同い年くらいの着物の女性だった。まさしく和服美人といった風貌だった。
「勉強はみんなで話し合ってするものですよ〜。そっちの方が楽しいですし、印象に残りやすいですよ。」
そうして茶菓子を机に並べ始めた。
「…なんで勝手に入って来た。お前の意見は聞いてないし、あれほど入るなと言ったのに。」
これが俗に言う夫婦喧嘩というやつか。やばい、ニヤニヤが止まらねぇぜ。
「そんなこと言われましたっけ?私この頃ボケがだいぶ進みまして〜。でも、神倉さんはこの雰囲気で勉強が捗ると思いますか?」
「いえ、全くそう思いません。あなた様の仰る通りかと思われます。」
海雪が髪をわしゃわしゃとかき回している。悔しそうだ。控えめに言ってめっちゃ楽しい。
「じゃあほどほどに話しながら勉強しますか。あまり詰めすぎても疲れちゃいますし。」
結局あかりのその言葉に落ち着いた。
ひかりを幸生に任せ、俺とあかりは各々勉強。海雪はなんらかの書類を整理し、和服美人の訪花さんはその手伝いをしていた。海雪の書類は何か英語でびっしりと書いており、たまに訪花さんに話しかけていた。今更になって海雪の家で勉強会をすることは迷惑だったかもしれないと少しだけ申し訳なかった。
そして約束の7時になった。みな思いの外集中できたらしく、割とあっという間に時間は過ぎていた。
「よし、じゃあ7時になったしお前ら荷物まとめて帰「ご飯にしましょう!」」
「…」
「…」
「みんな帰「あかりさんとひかりさん手伝ってもらえますか?」」
「…」
「…」
俺はこの2人、お似合いだと思うぞ。
結局また海雪が押し負け、俺たちはご馳走になることになった。二度も海雪が負けるなんて、やはり訪花さんも相当の人だ。
料理は女性陣がビーフオムライスを作ってくれた。訪花さんは料理の腕も凄く、5000円なら払ってもいいと思うほどだった。あかりもひかりも大変勉強になったらしく、嬉しそうに料理の話をしていた。
「俺は訪花さんはいい人だと思うぞ。」
片付けは男子が担当した。女性陣がやると言ったが流石にそのくらいやらないと申し訳ない。
「俺もそう思うなー。ひかりがいなかったら間違いなく告白してるぜ。」
幸生も皿をふきふきしながらそんなことを言った。こいつに対する好感がだいぶ落ちた。
「海雪は嫌なのか?」
さっきから黙って皿を洗う海雪に軽くどつく。
「俺だっていい人だとは思う。候補の中でもあいつは最有力だ。小さい頃から英才教育を受けて、勉強、運動、病気への抵抗、容姿、順応力も大したものだ。」
でも海雪はきっとそういうのを求めているのではない。そのくらい、俺にだってわかる。
「でも結婚するなら、やっぱり俺は好きになった人としたい。才能だけじゃなく。あいつとは気が合わないが、一緒にいても嫌だとは思わない。とりあえずもうちょっと一緒に過ごしてみて考える。それに…」
トランプで盛り上がる女性陣を見ながら海雪は呟いた。
「あいつは自分を偽るのが上手でな、すぐに自分の気持ち引っ込めて効率とか重視するんだよ。せめて俺の前でそれがなくなるまで、俺は訪花と結婚する気はない。」
そこまでいってるならもうゴールは目の前だと思うんだけどな。まあ海雪なら自分で解決できるだろ。傍から見てるほうが分かるというやつか。
俺は最後の皿を片付け、ひかりに帰りの準備をするように言った。
それからテストまでの放課後は、図書室だったり教室を使ったりして勉強をした。その後、自宅に帰りひかりの勉強を見てると、日に日に賢くなってるのがよく分かった。
そしてテスト当日。一切の心配なく受けたテストは全員赤点なく終わった。
結果発表。1000点満点。
ひかり、654点。幸生、763点。あかり、860点。海雪、1000点。後半の方高すぎるでしょ。
ん?おれ?おれは、その、あれだ。実はテスト最中吐血してしまい意識を失ってしまってだな、
鉋「寝ちゃったんだとさ。」
夜一、420点。