表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
さよなら、うそつき  作者: わたぬき たぬき
26/168

26

日に日に夏も本格的になり、8月まであと1ヶ月ほどになった。高校生はみなこの時期、夏休みの話題がよくのぼる。花火大会、部活の大会、旅行、キャンプなどなど。そんな中

「夏休み、皆さんでどこか行きましょう!」

あかりならこういう事を言うだろうとは予想していた。俺の偏見かもしれないが、女子はイベントを好む傾向にあると思う。この前言った通り、俺はそういうのがあまり好きではない。こんなクソ暑い中、外出なんて自殺行為だ。そんなわけで俺は辞退させてもらう。

「俺短期のバイトあって…」

「全部落ちたけどな。」

おい。

「宿題やらなくちゃいけないから…」

「あんなの配られた当日に終わるわ。」

なんだと?

「友達の部活応援行かなきゃ…」

「他に友達なんかいないだろ。」

「おい、海雪。さっきからなんなんだおめぇ。今日はやけに突っかかってきやがって。お?」

「この頃面倒事が多くてな。その発散だ、許せ。」

「ならもう少し反省の色を見せてほしいものだな。態度で示そうぜ、なぁ。」

俺の言葉をほとんど聞く気がないらしく、ずっと何らかの書類とにらめっこしている。

「というかそもそもそれは定期テストに受かったらの話だろ。赤点なら夏休み補習って話らしいがその辺り大丈夫なのか?」

俺はいつも平均とれればいいかみたいな感じで問題ないとして、あかりは見るからに平気として、海雪はどうでもいいとして、だ。

「ひかり、集合。」

「はい。」

何故か自信に満ちた顔。これは多分一周回ってアカンやつですわ。

「お前、テスト、大丈夫?」

「私、テスト、だいじょばない。」

なるほどなるほど。そうかそうか。

「今日帰ったら飯、風呂、寝る以外は勉強な。」

授業中たまに様子を見てるが、どうも頭に入ってるようには見えない。この前は色々と忙しかったからしょうがないとしても、ここ最近は平和そのものだ。これでテストが失敗してふてくされても困る。俺も心を鬼にしなければ。それでもなぜか、ひかりはそこまで嫌な顔はしなかった。

「そうなると夜一が私の勉強教えてくれるの?」

「まあ家にいる時は少なくともな。」

「ずっと?」

「いや、テスト期間だけだが。」

「じゃあテストの度教えてね!」

いやさ、わかってはいるよ。さすがにこの前の会話聞いてさ、なんでひかりがこんなにも嬉しそうにしてんだろうな、とは思わないけどさ。まあそれでちゃんと勉強してくれるなら構わないけどさ、

「なら俺も一緒に勉強教えてほしいっす!」

こういうのが出てくるんだよ。

「俺も勉強全然できなくて困っててさ。」

「ダウト。」

俺は知っている。幸生、貴様この前のテストでクラスで仲いい奴らの中で1位取ったって調子乗っていたよな?あの時お前らが盛り上がって俺の服にコーラかかったんだぞ。汚れ落とすのめんどくさかったんだぞ。

「そんな殺生な。後生です。お願いします。そんなイチャラブ空間、ぶっ潰したいんです。」

せめて本音は隠せよ、整形レベルでぶん殴るぞ。

「じゃあ皆さんで勉強会をしましょう!」

あかり、それ絶対やんないやつだから。ただ集まって駄弁るだけだから。

しかしここで俺の悪魔が目を覚ました。

「そうだな、それは実にいい案だ。そうなると広い場所が必要だな。そうは思わないか、海雪?」

ニタリ。我ながらゲスな顔をしていたと思う。するとみんなと少し離れた暗がりに連れ込まれた。

「...お前さてはさっきの書類見てただろ。」

勝った。

「んんんん?知らないなあぁ。なあぁぁんのことかなぁぁ。」

「はぁ、勘弁してくれよ。さっきのは謝るから。さすがにあれは見られたくない。4日後なら全然平気だから、それまでは勘弁してくれ。」

「ハハハ。わかったよ、さすがに俺も冗談が過ぎた。」

「ほんと心臓に悪いぜ...。」

ここで解説。

海雪がすごい家庭で育ったのはすでに説明済みかと思う。その海雪ももうすぐ18歳。結婚できる歳である。さっき見た書類にはその相手の候補が書かれている。どうやら2日同棲してみて相手を決めるらしい。つまりそこに乱入すればそれはもうニヤニヤが止まらないのです。暗がりから戻ってきた俺の第一声。

「てなわけでみんな、 明日学校終わったら海雪の家行くぞ。面白いもの見れるぞ。」


目を覚ますとすでに5限目が始まっていた。


「それは夜一兄さんが悪い。」

家に帰り、篝に「顔大丈夫?」と言われ鏡を見ると知らない人がそこに立っていた。ブッサイクだな。どうりでひかりが目を合わせないわけだ。

「人の嫌がる事をするからだよ。」

正論すぎて何も言えない。まるで母親に怒られてる気分。

「それよりひかりちゃんの勉強教えるんでしょ?早く行ってあげなよ。」

「はい。」

兄の面子丸潰れである。


「よし、じゃあ始めますか。」

「ん…。」

「じゃ、じゃあまずは数学からな。」

「ん…。」

なんでそんなに顔紅くするの。こっちも意識せざるを得なくなるからやめてよ。あれか、いざ勢いで言ってはみたけど、実際すごい恥ずかしいみたいなあれか。あかん。俺もなんだか熱くなってきた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ