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さよなら、うそつき  作者: わたぬき たぬき
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手が使えないのなら次は脚だ。あくまで使えないのは手のひら辺りまで、肘や腕は動かせる。海雪が慢心してる今がチャンス。俺は大きく手を振り手に滴る血を海雪の目に浴びせる。予想通り海雪は反応し遅れ、大きく隙が出来た。俺は詰めた距離から鳩尾に重い蹴りを食らわせた。海雪は勢いよく飛ぶ。ここから更に追撃を食らわせる為、前宙をしながら体を4分の1捻り海雪が床に叩きつけられるのと同じタイミングで喉に踵落としを食らわせる。もしかしたら骨が折れているかもしれないし、少なくても声帯は保証し兼ねる威力はあった。それでも尚直ぐに立ち上がりこちらに追撃を許さぬよう刃と警棒を向ける姿には仮にも当主だなと思った。

けれどまだ折れないならこちらも手は緩めない。刀を持つ右手と同じ方向に視線を送りミスディレクションを掛けて、視線がズレた一瞬で近づき警棒を持つ手の方向から飛び蹴りを見舞う。海雪も咄嗟に防御したはいいが、やはり片手だけでは防げずすぐ刀を捨てて警棒を両手で持ち防ぐ。ここで一瞬力を抜き、今度は右足を下に、左足を上にそれぞれ反対の方向へ警棒に力を掛けて海雪の手から離す。そして最後に下ろした右足を振りかぶって顔面目掛けて蹴りを入れる。海雪は見事に吹っ飛び、俺は落ちた刀と警棒を妹さんの方へ蹴飛ばした。

「ちょっ!?ちょちょちょちょちょ危ない!!」

一応寸前で止まるようしたし、仮に止まらなくても檻があるから平気だと思うが。それにもうあんまり切れ味ないだろうし。

「ちょっと預かっておいて。」

海雪はもうダウンしたかな。なかなか強烈なの入っ

「余所見してんじゃねぇよ。」

胸部目掛けて重い拳が飛んでくる。俺も予想外の行動につい焦ってしまい、つい反射的に使えないのに手が出てしまた。そして勿論碌に動かない腕が盾になる訳もなく、胸に拳がめり込む。腕も当然凄まじく痛むが、胸はその比ではない。

ぶっ飛ばされた。時間がとてもゆっくり感じたが背中を打つ痛みが現実に意識を戻させる。ゴロゴロと3、4回回った後漸く止まった。一気に形勢逆転。血が口からまるで吐くように溢れ、ゴホゴホ咳き込む度また新たに傷が開く気がする。止まった心臓を動かす為、思い切り胸を何度も殴り何度も血を吐く。遠くで2人の悲鳴が聞こえたがそれに応えられるほどの気力はない。というか何故この間に海雪は止めをさしに来ないんだ?

心臓を何とか蘇生させ必死に顔を上げると海雪はうつ伏せになり倒れていた。激しく息をしているのがよく分かる。それもそうだ、俺が与えたダメージだって致命的でこそないが、怪我なんて生半可なものでは決してない。先程のパンチで残った力を使い切ったのだろう。

二人とも動けなくなったのならこの勝負は引き分けになるのだろうか。まぁ......いいか。ここまでいけば海雪も少しは頭冷えて俺の言葉も聞くだろう。

「おい...み「あらあら、何て様ですか海雪さん。」」

一瞬誰だろうと思ったがそんなもの1人しかいなかった。そう思ったら自然と殺意が爆発した。血反吐はこうが心臓止まろうがこいつだけは許さねぇ。だめだとわかっていても殺意が溢れる。

「おい、お前、澪音と樺音の母親か?」

「これが海雪さんが言ってた侵入者ですか。もう虫の息ですし私が追っ払っときますか?」

無視とはいい度胸だ。

俺が拳を地面に突き立て立ち上がると同時に海雪の方もゆっくりと立ち上がった。どうやらまだ勝負は続くらしい。もしかしたら今回は真面目に死ぬかもな。まだあかりに告白出来てないからそんな簡単に死ぬわけにもいかないが。そんな俺たちの姿に耐えかねたのか、檻の中から悲鳴が聞こえる。

「神倉さんも、お兄ちゃんももうやめて!!死んじゃうから!!」

「はぁはぁ......。妹さん。前にも言ったよね。俺と海雪はいつか衝突するって。それに悪いけど、死んでも止まる気はない。海雪ぶっ飛ばして、その後ろのババアを殺す。」

「調子、乗ってんじゃねえよ。昔強かったからって、今はもうボロボロじゃねぇかよ。いい加減降参しろよ...」

「もういいよ!もういいから夜一君!......僕はもうこれ以上、大切な人を......失いたくない.......」

なめんなよみょん。俺がそんなに負けると思ってんのかよ。それに俺がここで諦めたら、みょんを含め、あの2人がいなくなってしまう。折角であれば結ばれて欲しい。

「怖いんだ...。この家に来るまでに雪が降って来たんだ。樺音を失ったあの日も...雪は僕から大切な人を消していってしまう気がして。......僕は、君を失いたくない!!」

初めて会った時なんか殺そうとしてたくせに、あいつらもそうだったが人間本当にわからないもんだな。にしても自分勝手だよな。『助けて』って言われて来てみれば『もういい』って。

「......榛さん、ありがとうございました。本当は、邪魔になれば俺やみょんを殺せって言われてたんですよね。病院だったらどうにでも言い訳できますし。だから俺達に敢えてあんなキツく接して俺達に変な事起こさないようにし、極力このババァに見つからないようにしてくれてたんですよね。気付くのが遅くなってごめんなさい。」

ババァの後ろの暗闇から足音が遠のいていった。みょんはきょとんとした顔で「え...嘘...」と呟いていた。ババァは不機嫌そうに舌打ちをした。

「みょん。そう簡単に自分の事を諦めないで欲しい。あの人はずっとみょんに生きてて欲しいって願い続けてきたんだ。勿論俺も、きっと樺音だって。」

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