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さよなら、うそつき  作者: わたぬき たぬき
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静かな部屋の中、1本の連絡がそれを打ち破る。

「当主、正面に現れた男なのですが...申し訳にくいのですが我々では討ち取る事が困難と思います。もし出来れば当主のお力添えをお借りしたく......」

恥ずかしい限りだな、たった一人の男に大して何十人も掛かって倒せないとは。しかもその男は爆弾抱えてるというのに。所詮烏合の衆か。しかし俺が出るまででもないだろう。

「心配するな、どうせすぐバテて動けなくなる。長期戦はそいつには出来ないから体力を奪うことだけ考えろ。」

そうして通信を切ろうと手を掛ける。

「恐縮で烏滸がましいのも重々承知ですが当主、当主から聞いた情報と奴は少し違うような気がします。奴、だいぶ長い間戦っていますが息一つ切れる様子もなければ寧ろまだまだ余裕があるようにも私には見えるんです。」

......。夜一じゃないってことか?でもあいつには協力を仰ぐといっても見ず知らずの誰かに頼む事もしないだろう。それにいくらこいつらがあまり強くないと言っても流石に一般人よりかは強いことは間違いない。それが集団で襲ってきてるのだからそれなりに強い奴なことは間違いない。そしてこんな無為な戦いに加わる利益なんてないと言っても過言ではない。......そうなると自ずと答えは見えてくる。とはいえ俺も篝から聞いた話だけだから力量を少ししか知らない。それも2年ほど前の。

「......俺が行きたいのも山々だが多分他にも2人この屋敷に忍び込んでる。俺がそっちの相手をするからお前らはそいつをどうにかしろ。」

相手の返信を待たずして電源を切る。そして早足で2人を閉じ込めている部屋へ向かう。上で暴れているのが陽動だとしたら夜一は間違いなくあの部屋へ向かうはずだ。俺とした事が、まさか中学時代の仲間引き連れてやってくるとは思わなかった。くそ、この婚約が破棄されれば相当の痛手だ。それだけは回避しないと。

書斎の扉を勢いよく開けそのまま例の部屋へ向かった。碌な確認などすることさえ忘れていた。そして携帯を片手に通路を進む。

「もしもし、俺だ。」


「なぁ、小湊澪音って知ってる?多分ここのどっかにいるんだろうけど知らない?」

「し...知らん。う、嘘じゃない!!本当に知らないんだ!!だからもう勘弁してくれ!!」

確かにこれ以上訊いてもあまりいい返事は聞けそうにない。しゃーない、面倒だけど方法を変えよう。

「じゃああなたより偉い人に会わせて。」

これを繰り返すこと3回あたりで漸く書斎の奥にその部屋がある事が分かった。全く面倒をかけさせてくれる。そして例の書斎の部屋を開けると誰かが不用心にもその通路を全開でそのままにして放置してあった。「えぇー...」と謎解きかな?なんてちょっと楽しみだったのに拍子抜けしてしまった。ま、でも結果オーライという事でどんどん進んで行きましょう。

奥へ進む道のりはとても静かなものだった。罠なんて物はなく淡々としたした道が続く。自分の足音だけが響く。これが嵐の前の静けさと言うやつなのだろうか。そして何が起きる訳でもなくて、長くも短くも感じた時間の後、やっと開けた場所に出た。

「みょん見つけた。」

傍から見たらまるでかくれんぼのようにあっけらかんとしているだろう。ここで「待たせたな」なんて言えたらもっと格好がついたろうか。檻の中に居たみょんは何とも言えないような顔をしていた。嬉しくもあり、申し訳なくもありといったような。そこは嘗ての俺みたいに笑って欲しかったな。俺は先程コンビニで受け取った段ボールとおにぎり等をを地面に置き、段ボールを開いていく。中からは色んなものが出てくるのなんの。

「あ、そうだ。みょんにご飯渡してもいい?どうせ朝食なんて食わせて貰ってないだろうし。」

だいぶ離れていたとこにいた海雪にそう問うと「呑気なもんだな。」と壁に寄っ掛かった。「ご飯は大事。」と先程買ったおにぎり等を持ってみょんと何故かそこにいる妹さんへ近づく。海雪の顔を見るが流石に鍵は貸してくれなさそう。

「あ、海雪。榛さんって知ってる?」

「誰だ?」

「だろうな。」

てなわけで近寄って来た妹さんに渡す。

「なんかこれ下賜(かし)みたいだな。若しくは飼育員。」

「ふざけてます?状況見えてますか?......聞いたところによると神倉さんはその、あまり体に負担をかけるようなことは良くないと。」

「......。よーしゃよしよしよし。」

妹さんの頭を撫でる。全力で。妹さんは驚きと戸惑いを隠せない様子。

「大丈夫、ただの喧嘩だから。心配ありがとうな。すぐ終わるからそこで待っててくれ。」

そう言うと2人には背を向け海雪の方に体を向ける。海雪も壁から体を離し、こちらを向く。とりあえず段ボールの中に色々武器も入ってるからそれを取らせてもらおう。こっちはハンデ背負いまくってるんだからそのくらい許して欲しいものだな。

「にしても海雪と会うのは久しぶりだな。お前が全く病室来ないから。とはいってもみょんがいれば来にくいか。トラウマ植え付けた本人だし。」

「別にそういうわけじゃないが、別段会う必要性もないだろ。俺だって暇じゃないんだ。」

はー。みょんにトラウマ植え付けた元は何とも思ってないんですかそうですか。

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