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さよなら、うそつき  作者: わたぬき たぬき
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警察の事情聴取も終え、結局襲ってきた男に対する正当防衛となった。手の傷は調理実習でやったことにし、包丁はなんとか隠し通した。もうほんと勘弁してほしい。滴り落ちた血は水筒の水をぶちまけてごまかした。ごまかせたはず。これで俺も犯罪者かな?あはっ。笑えねえ。帰り際に「あのことは?」と海雪に訊かれたが「今日はもう疲れた。」とだけ言って別れた。全く俺も素直に忘れてたと言えばいいものを、無駄にかっこつけたがる。え?何がかっこいいかって?例えばさ、

女の子「ごめんなさい、私がミスしなければ勝てたのに。」

クラスメイトA「ほんとだぜ。おかげで3位だぜ。1位狙えたのに。めっちゃ神倉頑張ってたのに。」

俺「別に気にしてないよ。」

女の子「でも、でも...」

俺「今日はもう疲れたからさ、お前の謝罪聞いてると多分寝ちまう。それにあんまり謝るもんじゃないぜ、安く見えるぞ。」

女「キュン……」

どう?これ?俺、これで彼女できるんじゃね?って思うんだ。...知ってる。こう考えてる時点ですでに負け組。


家に帰るとまあうるさかった。手の包帯を見るとまたうるさくなった。

「大丈夫だから、大したことないから。」

とりあえずおれはこの一点張りでなんとかやり過ごした。

夕食も苦労しながら必死に食べた。

「うまく食べられないでしょ?あーんしてあげる。」

と妹から言われたが流石にさせなかった。なんか、兄としてそれはだめだと本能が悟った。意地でも左手で食べ、最終的に犬食いになりながらも妹にあーんさせなかったのは賞賛に値すると思う。

「ねえ、夜一兄さん!お願いだから食べて!?犬食いなんてやめてよ!」

「ガウガウ!」

兄としての安い誇りを守り、俺の何か大切なものが崩れていった…。

そしてお風呂。これが問題。利き手の右手を水に濡らした瞬間すごい激痛がくる。つまり頭を洗うなどはどうにかなるが背中と左手だけは洗えないのである。仕方ない、次はタオルか…。

「背中流してあげようか?」

「……」

兄貴である、妹やひかりは期待してなかった。いや、ほんとに。マジで。むしろ兄貴でよかった。兄貴に可哀想な目で見られるのは辛いが、妹やひかりよりかは遥かにマシだった。しかし恥ずかしさで完全硬直。

「いや、流石に異性に背中流させるのはまだ早いと思ってだな。おれならそういう心配ないし、父さんいま帰って来たばっかだし。」

くそ、正論すぎて何も言えない。というか物理的にも何も言えない。それからはなされるがままにされた。

俺が怪我をしてることをいいことに散々な目にあった。結局傷にも水がかかりまくって痛いし、さらに洗顔クリームを鼻に突っ込まれたのが一番きつかった。素直に感謝出来ねぇ。そしてやっと風呂を出ると父さんに呼ばれた。

「その怪我はどうした。」

父さんはおれが怪我をしたことに本気で心配してくれていた。事情はみんなから聞いてるのに質問するということはもう嘘はバレているのだろう。むしろなぜ嘘をつくのか、というほうが父さんの中で問題になってる。これはもう白状した方がいいか。

「友達が不審者に襲われそうだったんだ。その友達はもう襲われるかもしれないってわかってたらしく、護身用に包丁を持ってて、そして襲いかかる男を止めようとしたら俺がその包丁で怪我しちゃったというわけで…。でもほんとに事故みたいなもので……。」

今恐れているのは父さんがあかりを責めることだ。よく調べればあかりに殺意があったのはわかることだ。それがわかれば恐らく逮捕だろう。それは、嫌だ。

心臓が高鳴る。唾を飲み込む。判決を待つ。

「そうか….…。わかった、今日は疲れただろ、寝てこい。」

やだ、父さんマジイケメンなんですけど。俺が息子とは思えないわ。ごめんねほんと、俺みたいなのが息子で。



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