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さよなら、うそつき  作者: わたぬき たぬき
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『やはり……今からでも何か連絡を入れるべきではないでしょうか?』

『……』

『みなさんきっと心配してますよ?』

『……』

『せめてお別れくらいは……』

『……』

『……』


ボスン、ボスンと音がし、何か重たい物が体の上に乗り眠りが覚めた。

「やぁ。」

「……どうも。」

え、誰?というか何してんの?

「私はあそこのベットの住人だよ。新人さんがどんな顔をして寝てるのか確かめようといたところさ。なんだい?もしかして何か別の事を期待していたとかかな?確かに寝込みを襲うみたいな絵面だから他人に見られでもしたら大変だね。」

「ほんとに大変な事になったぞ。」

視線を扉に向けるとまだお昼にも関わらずひかりが扉の隙間からこちらを覗いていた。その目に一切の光はない。深淵。

「どないすんねん。」

「ここで私に抱きついたら面白い展開になると思わないかい?」

んなわけ。

「あのー、ひかりさん。これはちょっとした誤解で。というか寧ろ僕は被害者で、全部この人にやられたことで……あの、ちょっと部屋入ってきてもらっていいですか?」

「……お前、見境なしか。」

これはもう何やってもダメな気しかしないな。でもとりあえず話を聞いてもらう為にも小湊さんには退いて貰わないと。

「んっ//いきなりそんな強引にっ……。もっと優しく//……ちょっと待って//激しいっ……」

「さようなら。」

ドサドサ、バタン。

「「……」」

教科書やプリントが床に散らばった。最後に鉛筆がカラーンと床を打ち、虚しい音が響く。

「修羅場だね。」

「冤罪。」

泣く泣く教科書とかを拾いに起き上がる。今回は直ぐに小湊は退いた。そして今度は俺が拾う隣でまた同じようにプリントを拾ってくれた。こいつは一体俺をこうも困らせてどうするのか。文句の一つも言いたいところだったが、「学校か、懐かしいな」と憂いを帯びた目で言う彼女の台詞を聞いてしまって何だか怒る気も失せた。教科書を拾い集めると彼女は「散歩行ってくるね」と言い部屋を出ていった。俺は特に止める事もせず、丁寧に書かれたノートを見て宿題をやった。

俺がのんびりまったり宿題をやり終わるのと同時に夕食と小湊が来た。折角だからきちんと自己紹介でもしたら、という榛さんの提案で自己紹介をすることになった。

「名前はもう知ってるよね。気軽に『みょん』と呼んでくれて構わないよ。小さい頃から病院に通っててここ1年近くはずっと入院生活。一応課題とかはやってるから進級は出来てるのかな。確か同じ学校だから知ってるかも?さっきの子はあの感じだと最近転校でもしてきたのかな。」

「最近っても半年近くは経ってるがな。俺も人間関係にはかなり疎い方だけど全く知らない、ということはないな。俺が知ってるくらいだからそれなりに有名だったんだと思うぞ。」

「お?それはあれだね。才色兼備眉目秀麗秀外恵中国色天香羞花閉月朱唇皓歯仙姿玉質沈魚落雁天姿国色明眸皓歯、それら全てを兼ね備えた超絶天才万能美少女がいたってことだね。いやー、伝説作っちゃったねこれは。」

「なんて?」

確かにこいつはそれなりに有名人だった。元々整った顔立ちと頭の良さ、それに加え病弱という男の子の庇護欲誘う事でそれなりに有名だった。でもこのみょんを有名にさせたのはある事件がきっかけだった。ある日の登校前、みょんに会っていた5人の生徒が瀕死の状態で発見され、当の本人は血の滴る真っ赤な制服で登校してきたという。元々その5人を恨んでおり、それが原因と言われている。その噂は知ってはいるが決して学校でその話に触れることはない。勿論俺はそんな噂信じてない。そんなもの、殆どが尾鰭が付いたものばかりだし。


俺は簡単に自己紹介を済ませた。最初は小学校や中学校の事まで話すつもりはなかったので、ある程度曇らせて話したがみょんは幾つか質問した後「なるほどね」と言っていた。流石に今の話からは全部分かるはずはないが、大方わかったみたいな顔をしていた。もしかしたら思ってたよりもずっと頭が切れるのかもしれない。

その後は只管(ひたすら)に恋バナというか質問攻めにあった。

「ところでさっきのは彼女なのかい?でも夜一君の顔を見る限りそういう訳でもなさそうだったね。あれか、幼馴染的なやつだね。思春期男子が憧れるシチュエーションの1つ、『ほら、早く起きないと遅刻しちゃうよ?……しょうがないなぁ、起きないなら"イタズラ"しちゃおうかな〜?』ってやつだね。まぁそれはいいや、幼馴染なんて大抵結ばれないものだからね。で、本命は誰なんだい?同じクラスの子?違うクラスの子?……違うクラスかぁ。でもあんまり上手くいってなさそうだね。喧嘩でもした?浮気でもされた?それとも他になんか……」

「うるっせぇ!!」

「神倉君うるさい!!」

外にいた榛さんに怒られてしまった。みょんは楽しそうに声を上げて笑っていた。俺はとりあえずヘコヘコ頭を下げるしかなかった。

「いやー、本当に夜一君はからかいがいがあって楽しいよ。私の噂を知ってるだろうにその事を一切気にしないその態度は、夜一君の生い立ちに起因するものかな?」

なんと言うか、みょんの行動は何もかも唐突なんだよな。まぁでも唐突な方がより相手の本性が見えやすいと言えば見えやすいからな。そういうひん曲がってるところ、ちょっと俺とかと似てる気がするな。でも残念ながら俺は今あるこの姿が本性だけどな。

「別に関係ない。噂で作り上げられた話なんて興味ないし、俺からすれば少しだけ頭が切れる女子にしか見えないよ。」



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