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さよなら、うそつき  作者: わたぬき たぬき
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翌日、あかりのクラスの担任に確認を取った。するとあかりは既にこの学校を出る手はずを整え、どこか遠くへ行ったらしい。あまりにも曖昧過ぎると担任に言うと「あまり自分も詳しい事は聞かされてない」と言った。そしてあかりから「極力自分の事も言わないで欲しい」と言われてたらしい。

こんな事になるんだったらあの時旅行に行かなけれよかった。 修学旅行に行かないと言った時には既にこうなることが分かっていたのだろう。......でもそれを俺たちに言わなかったということはそういうことなんだろう。言えば俺は絶対に止めさせる。少なくても旅行なんて絶対に行かない。それをあかりは望まない。

「それでも、お別れくらい言わせろよ。」

「それで大切な者を失ったお前はまたぶっ倒れるのか?」

隣で呑気にジュースを傾ける海雪。言い方は気に食わないがきっとそうだろう。「すまん」と口にできたかわからずにまたも俺は意識を失った。


目を覚ますと独特の匂いがする。病院かなと思いつつ体を起こす。胸に手を当てるとトクントクンと静かな振動がする。部屋はどうやら4人部屋らしく1つには人がいた形跡があるが残り二つは綺麗に片付けられている。なんにせよ座っていては何も始まらないからとりあえず外の様子でも見てみるか。母さんとか父さんいるかもしれないし。

扉に手を掛けようと手を伸ばすと丁度のタイミングで扉が開いた

「お、篝か。」

「兄さん大丈夫なの!?また倒れて搬送されたって。文化祭の時も夏休みの時も、病院はそう何度も来る場所じゃないんだよ。」

「あれ?篝って文化祭の事知ってるんだっけ?」

「いいから!」と無理やりベットに押し倒され寝かされた。腕を組み、ムスッとした様子から察するに布団から出るなと言いたいらしい。俺は早々に降参すると大人しく篝の話を聞いた。

倒れて、運ばれ、ベットにドーン。でも今回の件でいよいよ両親に心臓についてバレた。隠し通せるとは思っていなかったけれど。確か中学校時代に言われてたもんな。『今はまだ平気だけど近いうちに手術の必要があるね。まぁでも死ぬリスクもなかなか高いからほんとにギリギリでやった方がいいと思うけどなー。』

「......ツケが来たのかなー。」

本当に全くの勘でしかないが、今手術したところできっと失敗する。何せ俺にはそこまで生きたいという強い意志がない。両親も医者から聞いたのか「心の準備が出来たら言ってね。」と言われた。そんな時、来るはずもないと思うけれど。

当分学校には行けず入院生活を送るハメに決まった。課題などはひかりたちが持ってきてくれるらしい。入院の手続きが終わると気を使ってくれたのか、家に帰って行った。確かに俺もだいぶ疲れたので今日は寝るとしよう。

ふと誰かが扉を開ける音がした。近くに気配を感じたけれど、少しするとベットに潜る音が聞こえた。何かモゴモゴ音がした気がするが、眠たさがまた押し寄せ、その姿を見ることはなかった。

翌朝目を覚ますと丁度看護婦さんが朝ごはんを持ってきて起こそうとしたところだった。そしてその看護婦さんも何度か見た子のある人だ。確か前は伸紘に撃たれた時に運ばれた時にお世話になったっけ?

「なかなか大きいこの病院で同じ患者を担当ってもしかして俺の事狙ってます?」

「ん?あー、そうかも。」

冗談で言ったのにまさかの反応に『お、おう...』とキョドってしまったが、続く「障害者とか相手にするよりずっと楽。扱いやすいし。」と言われて『お、おう...』と冷静になった。

「ところでそこのベットの人、見たことないんですけどどんな人なんですか?」

隣のベットを指さし話を始める。正直な話、汚いおっさんとか臭い婆さんとかだったらやだな。望むなら平和で無害そうな人なら誰でもいいや。やはり平和が1番。漫画みたいな超絶美少女なんて望まない。

俺の質問に対して少しだけ顔を曇らせたか、(いず)れわかるのならばとでも思ったのか、少しだけ教えてくれた。

「そこの子はみょんちゃんて呼ばれててね。本名は小湊(こみなと)澪音(みおん)て言うんだけど。年は神倉くんと同じだったかな。確か同じ学校じゃなかったっけ?でもあんまり詳しいことはプライベートな事だから本人に訊いてね。話すきっかけにもなるんじゃない?」

てなわけであまり詳しいことは聞けずご飯だけ置いてくと看護師さん(名前を(はしばみ)というらしい)は部屋を出ていった。俺は特にやることもなかったのでご飯を食べるとまた布団に潜った。どうせ夕方頃にひかりが宿題とかをたくさん持ってくるだろうから今のうちに惰眠を貪ることにした。


学校では夜一は体調不良で暫く休むと連絡があった。私は先日篝ちゃんから夜一が心臓を悪くしている事を知っていたので、驚きという驚きはなかった。間違いなくショックではあったけど。夜一はクラスのみんなから距離を取っていたのでそこまで騒ぎにはならなかった。もしかしたら夜一はこうなる事を知ってたから友達を作ろうとしなかったのかな。全く、いつも夜一の優しさは分かりにくいんだよ。それともう1つ。あかりちゃんもまた学校にいなかった。あかりちゃんの場合は完全にこの学校から籍が無くなっていたけれど。

「海雪君も段々学校に来なくなってるよね。」

「家が忙しくなってな。あいつがいなくなってここに来る面白さもなくなったし。」

その気持ちはよく分かる。私も夜一がいないと何となく面白くない。友達と話してても何か足りない気がして。

「戻って……くるよね。」

海雪君は何も言わず新しいパンを食べ始めた。

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