114
大帝には外にいた誠さんの下僕の残党を任せてある。ここに来るまでに既に何人も倒してるからもう数えられるほどしかいないと思うが。つまり誠さんとは1対1の戦いになった。しかし妹さんが向こうにいる以上どう出るか刹那悶々としてると向こう方からこちらに来た。それは俺に確信を持たせるには十分だった。
どこかで武器でも調達してくればよかったのかもしれないがそんな都合よくそんなもの持っておらず、素手で応戦した。相手も先程投げたナイフしか持ってなかったのだろう、身一つで突っ込んで来た。後退し広間に出る。そこには誰もおらず邪魔ははいらなさそうだった。広間の中央辺りで誠さんの蹴りが飛んできたので躱す。振り向きざまに裏拳が飛んできたのでこれも躱す。今度は俺から一気に距離を詰め勢いそのままに腹に拳を入れる。だが案の定見事に拳は受け止められそのまま握り潰されかねないほどの握力が襲う。くそ痛い。そして左手は思いっきり振りかぶっていたので、掴まれている右手に全力の力を入れ足を踏ん張り、強引に相手押し飛ばした。振りかぶった左手は俺の顔ギリギリで当たらなかった。浮いている相手など隙だらけなので止めを刺そうと踏み込むが誠さんがポケットから何かを取り出し俺目掛けてに投げつける。生き物は獲物を狙ってる時が最も油断しているというが今回はまさしくそれで、ものの見事にスタン・グレネードなんて近代武器にしてやられた。こんな派手な物を使わないだろうと高を括っていた。視覚だけならまだしも聴覚や平衡覚までやられるとこりゃきつい。俺もやりたかないけど負けるわけにはいかない。
「ーーー!!!」
目には目を、音には音を、光には...特にない。人間が出せる声の最大の平均が確か100dbあたり。かなりうるさいくらい。俺はこれを頑張って110くらいまで嘗て頑張って、そこに震脚の衝音ものせて。たまたま床が松とか桧といったものでできたていたので響くのなんの。頑張れば一点に音を響かせられるとかなんとか言ってたが、正直できてるかどうかわからない。まぁ向こうから飛び込んできてくれるからあんまり意味は無いと思うけど。
それから僅かの間、お互い動けなかった。
「っ!!......凄まじい音ですね。正直勝ったと思ってましたよ。咄嗟に耳を塞いでなければ鼓膜が破れるところでした。」
「これすごい疲れるんですよ。そちらこそ、スタングレネード使うタイミング完璧じゃないですか。してやられましたよ。」
それからお互い攻めることはなく体力の回復に努めた。勿論形としてはずっと睨み合ってるわけだが。
「野暮な事お訊きしますが私の考えを何時からお気付きに?」
今向こうが戦う気がないと確認するとポケットから携帯を出しポチポチする。そして水無月さんが俺らをストーキングしてる写真を見せる。
「俺らが海雪の家に行く前日に撮ったものです。何となく気配がしてみて撮ったら思った通り写ってたんですよ。水無月さんの後ろの鏡に映ったあなたと大帝の姿が。その後この写真を水無月に見せたらどうやら2人は俺と同じ学校の同級生ということが分かりました。水無月さんのストーカーかな?とも思いましたが視線が明らかにこっちだったので俺かな?と思いました。そして翌日にこの資料。」
写真をスライドさせて2人の資料を見せる。こちらも昨日海雪に送った写真と同じものだ。
「当然これを見れば誰だって懐疑的になります。なんで鎧塚でもトップの戦闘力を持つあなたとそれなりに強いあの女の人がこんな学校にいるのか。海雪のサポートなんかした事ないでしょうし、動きが見えたのはごく最近。なら考えられるのはこれから何かが起きるということですかね。それは妹さんの登場でほぼ確信に変わりました。そして修学旅行であなたがた3人が同じグループになって、事が起きるのはここだな、と思いました。」
「凄いですね。あなたを低く見ていたことをここにお詫びします。でもそこからどうやって私のところまでたどり着いたんですか?」
それが時間が掛かった。
「最初に疑問に思ったのは何故危険があるのに妹さんを旅行に行かせたのか。多分それは海雪が狙われる可能性が1番高いから。仮にも現当主です。近くにいるよりも優秀な部下を付かせ遠くに行かせた方が安全と踏んだのでしょう。逆に言えばこの段階で誰が襲って来るか分からなかった。分かってたのならそいつを見ておけばいいだけですから。鎧塚家は誠さんみたいに恨みを買う人は少なくないでしょう。でも今までそこまで襲われたことがないのは鎧塚家がそこまでに強かったから。みんな恨みはしたかも知れませんが攻め入ることなんて考えなかったんでしょう。でも今回はきっと犯行声明などが来たとかではないですか。極道の大御所であるあの家に攻めいるなんて生半可な力では無理です。きっと準備も長い間してきたかと。だからきっと犯人は尋常なく強く鎧塚家にも精通していてその中でもかなり信頼されてるような人だと思いました。例えばあなたのような。」
誠さんはただ楽しそうに聞いていた。




