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思ったより早くスタンプラリーは進み、日が傾く頃に最後の場所に着いた。俺と妹さんはやや遅れてしまったが。記念にとみんなで写真でも撮ろうとひかりが提案してたが、みんな写真がダメなのか結局水無月さんと2人で撮っていた。一瞬水無月さんのだらしねぇ顔が見えた気がしたがまあいいか。
記念にと俺もスタンプを押し改めてそれを眺める。結局これが何なるんだか。そんなことを思いながらそれをポケットに入れた。
「ちょっと花摘んでくる。」
「?なんか急に乙女チック?」
若干の時間が空きみんなが次の場所を決めている間、俺は花を摘みまくった。後から思えばこれは完全にフラグだった。案の定俺がトイレから帰ってくると既に事は進んでいた。
「長いトイレだったね。」
「なかなかに難敵だった。あれ?なんか2人ほど人間いなくない?」
「突っ込まないからな。なんか2人で湿布とか買いに行ってそのまま戻るって。あんまり怪我人連れ回すのは良くないからね。」
......。
めんどくさいなぁ。
「ねぇいいの?あの男と妹さん2人にしちゃって。」
大きな溜息をしながら他クラスの女の方、当初は天方暘なんて名乗っていた本名、大帝槭にそう言う。こいつも事情を全く把握出来ておらず「何言ってんだこいつ」みたいな顔している。どうせ「妹さんの護衛はあいつ1人でも事足りるだろう」なんて考えてるんだろう。海雪の家の人ならもう少し頭が回ってほしいものだ。
「何かあの男がどこ行くとか何か残して行かなかったか?じゃなきゃ妹さんどうなっても知らんけど。」
するとやっと何かよくないことが起こっていると察してくれたのか、ポケットから何か紙を出す。
「邪魔だから持っておいてくれと言われた。」
『24×30 27 六 1 四 十六か26
24の続きはそこで』
あー、これはダルイパターンのやつですね。
「なんっでどいつもこいつもフランスもこういうの好きなんだよ。エンターテインメントなんて今求めてないんだよ。クイズのつもりか?24×30?漢数字と数字?将棋か?いやこんなマス目があるボードゲームなんかそもそもあったっけ?24の続きって?...落ち着け。あいつがこんなの残してるって事はこれは挑発とかそっちだろ。だったらこれは場所を示してるんだろ。......( ゜д゜)ハッ!」
「何をブツブツ言ってるんですか?」と水無月さんの声も聞こえたがとりあえず無視。ポケットに手を突っ込み先程のスタンプラリーの地図を広げる。目を皿にして地図を眺める俺に他の2人も寄ってくる。
「24と30は横と縦だから。六がここで1がここで......。でもこれだと交点多いしなぁ。というか十七か26って何だよ?...あ、どっちでもいいじゃん。となると...ここ、か。で24の続きっていうと......マジか。」
とりあえず答えは分かったので大帝の手を取り全力で走り出した。後から水無月さんとひかりも追いかけて来ようとしたが「2人は帰れ!!」と言った。すると何か言いたそうだったが「絶対無事に帰ってきてね!!」とだけ言って足を止めてくれた。俺はそれを確認すると更に足を早めた。
「ちょっと待て。状況を説明しろ!!」
何もわからないのにこの上から目線。ウザイ。
「なら説明してやるから暫く黙ってろ。前に俺らが海雪の家に遊びに行った時、夜に少しだけ1人になれる時間があったんだよ。その間に俺は海雪の部屋に入ってそこにある書類に一通り目を通した。そこに大帝や京極の名前を見たんだよ。確かお前が警備隊の副長で京極が海雪専属の戦いの教官だったか。」
精悍な眼で俺を一瞬見据えると握られていた手を振りほどき横に並走する。
「なるほど。当主が推すだけの事はあるようだ。それで?あの問題の答えは?京極の目的は?貴様はどこまでわかっている。」
キャンキャン吠えんなよ雌犬。もう一々気にするのも馬鹿らしい。
「目的は多分復讐だろうな。クイズの答えは京都の通り名の歌に沿ったものだ。24の東西の通り名を将棋みたく漢数字で、30の南北の通り名を数字におく。そうすると27がひぐらし通り、六は御池通り、1は寺町通になり、四は二条通り、十六が松原通りで26が松屋町通りになる。それぞれの交点かと思ったがそれだと多いし多分松原と松屋町のところが曖昧だから違う。それで通り名を歌詞のところだけにすると『ひぐらし、御池、寺、に、まつ』日が暮れるまでに御池通りの寺に待つって感じかな。」
日が暮れるまでと聞き急いで時間を確認していた。流石に明日の早朝までは待ってくれないだろう。
「御池通りのある寺と言えばまぁ多分本能寺だろうな。ここから走って日没までに間に合うかどうか。最後の『24の続き』ってのは24は九条通り、その続きは『とどめさす』だ。」
「殺すということか。しかしなぜ京極がそんな真似をする?復讐とは何のことだ?」
イラァ。
「質問ばっかしてねぇで少しはてめぇの頭で考えろ。これでもし俺が今お前に嘘ついたってお前どうせそれを鵜呑みにするんだろ。そんなんだからあの京極とか言う男の企みに全く気付かないんだよ。少しは疑えよ。人間なんか大抵汚いんだから。」
その言葉を機にお互い何も喋らなかった。




