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さよなら、うそつき  作者: わたぬき たぬき
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「俺は無力だ......」

結局俺の意思とは関係なく既に外堀は埋められていた。俺以外にはもう情報が回っており、ひかりを含め全員が了承していた。当然ひかりには行くのを辞めさせるよう言った。


「俺は認めないからな!」

「結婚の話が出た時の父親か。別にみんなにならこの傷を見せても構わないよ。いつまでも気にしてるのもつまらないしね。」

「お前、いつの間にこんな大きくなって......」

「娘の成長を垣間見た父親か。まぁそんな訳で今週末水着買うから手伝ってね!」

そんなとんとん拍子で週末1日目時期外れの水着選び、2日目時期外れのプールとお泊まり会、祝日3日目はわからん。そんな流れになった。


「夜一はどんな水着が好き?」

そして週末、俺の気持ちを全く察してくないでルンルンなテンションでお店を見て回る。序に今日は俺とひかりの2人きり。何となく視線を感じるが傍から見ればそうみえるんだろうな、なんて思いつつそんなルンルンについていく。......にしてもここは健全な男子高生からすれば目のやり場に困る。こんなの下着とほとんど変わらないじゃないか。いや多分女性からしてみれば全然違うんでしょうけど。

「ねぇ聞いてる?」

「ごっごめんなさい!やっぱり違いますよね!?」

「何が?」

いかんいかん。俺に邪な気持ちがあるから変に動揺してしまうんだ。そうです、これらは布なのです。遥か昔から受け継いできた「服」という概念なのです。その起源は3万年前まで遡り彼のネアンデルタール人が絶滅した要因の一つともいわれているのです言わば服は人類の生存に欠かせない事象なのですソモソモマズニンゲンノカンジョウトイウ

「よっ...夜一......」

悟りを開きかけていたところでひかりに呼ばれた。試着室の方から声が聞こえてきたので反射的に振り返ってしまったがそれが間違いだった。クリティカルオーバーキルに死体撃ち。心の準備もなしに突っ込んだ俺が愚かだった。

「てっ、店員さんにっ、お勧めされたんだけど、どうかな?」

お淑やかな白いビキニに少し大きめのパーカーを羽織ったひかりが、もぞもぞと顔を紅潮させながら立っていた。いつも一緒にいたからあんまり意識してなかったんだけどこういうの見せられるとやっぱり女の子っていうのを思い出される。

「何というか、その、えっと......ごちそうさまでした。」

ピコン。


でもやっぱり背中の傷が見えてしまう可能性があるのは避けてやりたいな。ひかりが服を着替えている間にそんなことを考える。前にもこんなこと考えたことあると思ったけど、やっぱりそうなると...はっ!!

「競泳用水着!」

「......がいいの?」

試着を終え、未だに顔が赤いひかりが尋ねる。いや、別に俺は大して好きではないけど。でもあれならひかりは泳げるし背中が見えることもない。心置きなく遊べるはず!

「う、うんそうだね。競泳用の水着ってやっぱりねー、いいよね、ほら、その、何だ......body line?......殺してくれ。」

こーれーはひどい。本気で軽蔑されて当然。俺の青い春が今ここに終わりを告げた。なんて考えていたがひかりは溜息と笑いの混じる表情を浮かべていた。

「だから火傷の事は気にしないでって。そんなバレバレの嘘吐いたってわかるよ。どのくらい一緒にいると思ってるのさ。だから夜一が私に着て欲しい水着言ってくれるまで今日は付き合ってもらうからね。」

やっぱり下手な嘘は吐くものじゃないなと思いつつ、その後は2人でゆっくりと店内を回った。先ほどの妙な緊張は気がつけば無くなっており、恐れ多くも俺が選んだ水着をひかりは試着もせずに「じゃあこれにする!」と買いに行った。俺の感性が間違っていなければいいのだか。素直に店員さんのにしておけばよかったかもと少しだけ思ってしまった。

その後は映画を見たり、ご飯を食べたりと、普通に楽しく遊んだ。この機会にと前俺が話した中学の事について何か訊いてくるかと思ったが特にその話題には触れなかった。こういう気配りができるのもひかりのいいところだな、なんて思いつつ俺達は帰路に就いた。


一方その頃。

「明日の夜頃に言ってたやつが来るからな。」

「あっ、はい。」

暗い部屋の中に2人の声がする。

「本当に大丈夫か?俺から持ち出してなんだがあんまり無理しなくていいぞ。変な罪滅ぼしとかなら長くは続かないぞ。」

男に質問を投げかけられたその者は少しだけ考える仕草を見せた、けれどすぐに答える。

「......大丈夫です。必ずや神倉夜一を仕留めて見せます。鎧塚の名にかけて。」

男はその者をまっすぐ見つめるとその目に宿る意思を汲み取ったのか、それ以上は何も言わずにその部屋を後にした。

「必ず、期待に応えて見せます。」

その者が呟いた。


そんな(あってもなくても構わない)会話が鎧塚家の一角でされた。


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