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さよなら、うそつき  作者: わたぬき たぬき
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そして翌日。朝からの流れは割愛。今は昼休みで屋外の階段。ひかりにはクラスの人と食べてろ、クラスになじんだらこっち顔出せ、と言っておいた。ごねるかと思ったら「家に帰ったら報告。」とだけ言われた。三人腰を下ろし昨日の話題になった。

「昨日は取り乱してしまい申し訳ありませんでした。」

とりあえずはもう落ち着いてるらしい。そして深く深呼吸をし

「私を...助けてください。」

お願いします。そうささやくと同時に土下座までされた。こっちはもう決意固まってるからそんなことしなくて全然いいのに。

「それはもういい。まず、何から助けてほしいんだ?」

驚き、喜び、安堵、それから真面目な顔になる。百面相か。

「父親からです。たぶんもうすぐ殺されます。」

まじかよ。まあ確かに俺みたいなやつに助けを求めてるあたりだいぶまずいのは分かってはいたが。というかなんでほんとに俺なんだろう。昨日も結局訊けなかったし。でもとりあえずは置いておいて、そんなことを普通の高校生になんとかできるわけもない。

「詳細を。」

海雪はほんと動揺というものをしないな。

「明後日に父親が出所します。刑務所にいる理由は母親を殺したことです。DVの延長、と言いますか終点と言いいますか。母を殺した日、私がいる学校の近くで不審者として補導を受け、殺人者として捕まりました。その後は祖母の家に住まわせてもらいました。そしてそれからしばらくしたころ、父からの手紙が届きました。内容は過去の謝罪とこれからやり直したいというものでした。私はトイレに駆け込み何度ももどしました。手紙ではたくさんの美辞麗句が書かれてましたが心の中ではどうせ殺意に満ちています。警察は更生したと思っているでしょう。もう100通を超える手紙を送ってきてますから。」

「だが具体的にどうすればいい?」

少し複雑な気持ちを覚えながら訊いてみる。俺にできることは...。

「一度だけ話し合いをしてみます。怖いですが一緒には暮らせないと、もう関わらないでほしいと。神倉さんとよろしければ海雪さんにはもしも殺されそうになったら助けてほしいです。一応護身用で包丁を持っていきます。私が振り回しているうちに、後ろから石か何かで殴ってもらって気絶させます。そこで警察を呼べば殺人未遂としてまた刑務所に行き、今後はバイトなりしてなんとか生きていきます。もちろん話し合いで終わればそれで解決です。」

「そっか……。あかりがそう望むなら協力するよ。危険だけどいざなればなんとしてでも止める。いいよな、海雪。」

海雪は静かに頷いてくれた。

「お前がそれでいいならお前に任せる。」

ありがとうな。


昼休みも終わり授業の再開。授業は滞りなく終わりまっすぐ家に帰った。海雪は用事と言い先に帰っていった。

「そんなことになってたんだ。でもほんとに危険だけど大丈夫?」

約束通りひかりに今日のことを教えた。

「兄さんはあんまり暴力沙汰は得意じゃないからね。」

「プロレス技ならお兄ちゃんのお墨付きだぜ☆」

それと妹と金魚のふんにも。

「大丈夫だよ。海雪だって喧嘩は冗談みたく強いから。必ず救って見せる。」

「じゃあもし成功したらわたしご飯奢ってあげるよ!」

「じゃあ寿司にでも連れてってもらおうかな。当然板前さんが握るやつな。」

俺のいたずらに本気で困惑する妹を見て、ひかりも必死に安い寿司屋をインターネットで探してた。それを見てると緊張なんかどこか遠くに吹き飛んだ。

「じゃあ、一日お前の好きなようにして、いいよ?」

上目遣いの兄貴を練習のサンドバックにした。前借りというやつだ、許せ。


次の日は海雪と話し合いを昼休みと放課後を使い行った。ひかりには女のお前を巻き込みたくない、と言って参加させなかった。頬を膨らませ怒ってた。眼福です。


そしてついにその日が訪れた。授業なんてまるで耳に入らず、先生にも何か言われてたが何かてきとうなことを言い刻々と時間が過ぎていった。そして放課後、ひかりに「今日好きなもの作って待ってるから、味の感想聞かせてよね。」と言われた。俺は今日死ぬかもしれない。そんなことを思いつつ駅から少し離れた駐車場に着いた。7時から始まる話し合いに30分ほど前から俺と海雪は物陰に隠れスタンバイ。長い30分をただ耐えるように待った。走ってきたらどうしようか、後ろから来たら?俺たちが気付かれたら?……もしも他に目的があったなら?不安が急激に膨らんでいく。そして約束の時間。一人の男がやって来た。

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