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悪魔となって復讐を誓う聖女  作者: 天野霧生
第一章:復讐の聖女
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08:小休憩

 アリアとリアーナは警備隊に捕まっていた女性三人を預けて、ギルドへ盗賊討伐の報告を行った。

 いつも盗賊の首が大量に入った麻袋を受付に出す為、何処のギルドでも受付嬢が引いてしまう。

 二人はそんな事は微塵と気にはしていない。

 アジトの確認と盗賊の人相確認で報酬の支払いは明後日となった。

 仕事が終わった二人はハンナが戻ってくるまで宿舎の食堂でのんびりしていた。


「無事に依頼が終わったね」


「ああ、そうだな。あんまり歯応えの無い連中で物足りなかったがな」


 カップにコーヒーを注ぐ。


「あの女性の事はどう思う?」


 リアーナは腹部に紋様がある女性について聞いた。

 気にはなっていたがアリアがその場で彼女に聞かなかったので、その場は特に何も聞かなかった。


「カタストロフに聞いたら悪魔との仮契約の紋様みたい」


「仮契約?」


「うん。普通は仮契約をする悪魔は余りいなくて、何て言うんだろう?悪魔が取り敢えず唾を付けておくみたいな感じ?」


 リアーナは首を傾げる。


「正直、私もよく分からないんだけどね。一応、仮契約も私達みたいに身体の何処かに契約印が刻まれるみたい」


 悪魔と契約するとその証となる契約印が身体に刻まれるのだ。

 アリア達にも契約印が刻まれており、アリアは背中に、リアーナは下腹部に、ハンナは左腕にある。


「仮契約だと世界への干渉が出来ないし、契約者も力が使えないからあんまりメリットは無さそうかな。だからこっちが気付かれる心配は無いと思う」


 リアーナ顎に手をやり、思案する。


「そうすると目的が分からんな。まぁ、我々から何かをする必要性は感じられんが」


 コーヒーを一口すする。


「何かややこしい案件になりそうな予感がしなくもない」


「アリア、そんな事を言っていると本当に面倒事がやってくるからやめておけ」


 こう言う迂闊なフラグを立てるのもアリアだ。

 リアーナはやんわりと注意するが、恐らく無駄になると思い、溜息を吐く。

 そんなやり取りをしているとハンナが戻ってきた。


「ハンナ、おかえりー」


「はい。ただ今、戻りました」


 ハンナは軽く一礼してアリアの横の椅子に座る。


「何か動きはあったか?」


 早速、今日の報告を聞く。


「対象に動きはありません。ですが妙な訪問者がありました」


「訪問者?」


 アリアが首を傾げ聞き返す。


「はい。前教皇アナスタシア様の御子、ヒルデガルド様です」


 アリアは眉を顰めた。


「何でこんな所にヒルダさんが来るの?あの人が神殿から離れるとは思えないんだけど」


「私も思った。ヒルダ殿は中立派の中では旗頭だろう?」


 アリアをリアーナはヒルデガルドの動きに首を傾げた。


「私も神教内の状況だとリアーナ様達と一緒な事を思いました。更に謎がヒルデガルド様は護衛を一人も付けずにこの街に来ております」


 ハンナは首を横に振りながら報告した。


「神殿のあるヴェニスからここまで護衛無しで来ただと?」


 護衛無しに来た事にリアーナは驚きを隠せなかった。

 司教の役職であれば御者、従者、護衛を含めて最低五人は同行するはずなのだからだ。


「更に御者はおらず、馬車の操縦もヒルデガルド様自らやられておりました。一応、尾行して宿泊先は確認しておりますので、本人に直接会ってみるのも一つです」


「アリアはどう思う?」


 リアーナはアリアに意見を求めた。

 ヒルデガルドと交流が多かったのは聖女として神殿にいたアリアだ。


「ヒルダさんは頭が良い人だから考えなしに動く様には思えないかな。動くからには何かありそう」


「ヒルダ殿に会ってみるか?」


「ここに来てるなら会いたいな。一応、封印から逃げた事はバレてるし、ヒルダさんならこっちが不利になる事はしないと思う。寧ろ、私達に付いて来そうで怖いかも」


 アリアは何処か遠くに目を泳がす。

 普段は猫を被っているヒルダだが、素とかなりギャップのある人物なのだ。

 リアーナ面識はあるが、儀礼的な付き合いだけで噂に毛が生えた程度の事しか知らない。

 ヒルデガルドは正確には中立派では無い。


「アリアが問題無いなら会ってみよう。あんまり遅くなると迷惑だろうから、今からヒルダ殿が宿泊している宿に行こう。ハンナ、案内を頼む」


 二人はさっと席を立ち上がろうとする。

 が、ハンナはメニューじっと眺めていた。


「ハンナ、行くぞ」


 リアーナが出発を促す。


「出来れば私も一服させて頂けたらなぁ、と思いまして……お茶とケーキのセットぐらい……」


 ハンナはメニューのケーキセットに目をやりながらリアーナに訴える。

 つまり、甘い物が食べたいだけである。


「却下だ。そんな事を言っていると甘い物を当面、禁止にするぞ」


 椅子からビシッと立つ。


「畏まりました!今すぐ案内します!」


 目線はメニューのケーキセットから離れていないが。


「では行くぞ」


 ハンナは甘い物に思いを馳せながら、ヒルデガルドのいる宿まで二人を案内したのだった。


「私のケーキセット……」





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