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悪魔となって復讐を誓う聖女  作者: 天野霧生
第二章:貶められた聖女
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52:プロローグ

二章開始です。

二章はアリアの過去です。

 暗い暗い人の声が届かぬ様な闇の底。


 ただただ絶望しかない場所。


 そこには呪詛の様な言葉しか響かない。


 醜い汚泥となって心に溜まり続ける。



 ―――私は誰を傷つけた?


 ―――私が何を殺した?


 ―――私が何をした?


 ―――私はどうしたら良かった?



 少女は痛みに苛む体を壁に預けて寄り掛かる。

 その壁は酷く冷たく痛みが増していく。

 ただ自分の心へ問い掛ける。

 それは何も解決しない問い。

 そして地の底で朽ちるしかない。



 ―――何故、こんなに痛い?


 ―――何故、こんなに寒い?


 ―――何故、こんな所に?


 ―――何故、こんなに苦しい?


 ―――何故、こんな思いをしなければならない?



 少女の問いに答える者は誰もいない。

 一人、暗澹とした闇の底で自問自答の日々。


 少女がここに来て既に一ヶ月は経っていた。

 水も食事も与えられていない。

 少女が持つ絶大な治癒魔法の適正は少女を地獄の様な苦しみを与える事となった。


 自己治癒。


 少女の治癒魔法が持つ特性の一つ。

 魔力があれば体が回復していく。

 空腹で飢え死にしそうな体に活力を与える。

 ここは不思議と空間に魔力が溢れている。

 少女の着ける首輪で魔力を封じられていようが空気中に漂う魔力を勝手に吸収する。

 それにより体に強制的に活力を与える。


 しかし、これには問題があった。

 空腹の辛さには関係無い事だ。

 そして舌を噛んで自害しようとすれば緩やかにだが直ってしまう。

 痛みは消えない。

 奇しくも少女は自分の能力で拷問の様な責め苦を受け続けている形となってしまった。



 ―――痛い


 ―――苦しい


 ―――助けて


 ―――誰かここから出して



 少女の声は誰にも届く事は無い。

 地下の奥底に封印された少女の所へ来る者等いないのだから。


 少女の心は次第に変化していた。

 それは自らを陥れた相手への憎悪。



 ―――殺したい




 汚泥は染みの様に少女の心に広がっていく。



 ―――殺したい



 それは今まで少女の中に無かった物。



 ―――殺したい



 心の中で汚泥の様な物が徐々に形を成していく。



 ―――殺したい



 目に宿るは仄暗い光。



 ―――殺したい



 形を成した汚泥は怨念の様にへばりつき少女の心を覆っていく。



 ―――殺したい


 ―――自分をこんな目に合わせた奴ら殺したい



 少女の心に復讐と言う名の怪物が生まれた。

 しかし、その怪物は少女の心に宿るには大きすぎた。

 その怪物は少女の殻を破って外へ出ようと暴れる。

 少女は体を掻き毟る様に踠く。

 必死に、必死に耐えようとすればする程、痛みが、苦しさが増していく。

 掻き毟った箇所が血に塗れ、自らの爪には自らの血肉が挟まり、転げ回った床には幾重にも血の跡が付いていく。

 自ら傷つけた体は自らの能力で治っていく。


 少女が苦しみから解放される事は無い。








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