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悪魔となって復讐を誓う聖女  作者: 天野霧生
第一章:復讐の聖女
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29:尋問

 ハンナは空間収納から棘の着いた針金を取り出し、黒ずくめに顔から足の先まで巻いていく。

 巻き終わった所で猿轡を噛まし黒ずくめを地面に転がす。


「んんんんんっ!!」


 針金の棘が転がる度に身体に刺さり激痛を黒ずくめの身体に走る。

 そして痛みでのたうち回れば更に棘が身体に食い込み更なる苦痛を生む。

 この針金は有刺鉄線と呼び、主にバリケードに使用されるが、使い方によっては良い拷問道具になるのだ。

 ハンナの空間収納にはいくつもの拷問器具が入っている。

 ハンナは適当に足で蹴飛ばしながら黒ずくめをもう片方の黒ずくめの死体の近くまで転がしていく。


「そろそろですかね」


 ハンナは黒ずくめの猿轡を外して、髪の毛を掴んで顔を持ち上げる。


「素直に話せば巻いてあるのは外してあげましょう」


「は、話すから、は、外してくれ!!」


 有刺鉄線を巻いて転がされると止まるまで激痛に苛まれるのだ。

 出血はそんなに多くない為、出血で死ぬ事が無いのが利点だった。

 昔からこの方法の拷問をよく使っていた。

 ハンナは黒ずくめが痛がるのを気にせず、有刺鉄線を強引に外して空間収納へ仕舞う。


「あなたは何者ですか?」


 最初と同じ質問をぶつける。


「お、俺は領主様の密偵だ」


 ハンナは内心でほう、と呟きながら面白い物が釣れたと思った。

 孤児院を張っていて領主が釣れるのは予想外だった。


「何故、私を殺そうとしたのですか?」


「あの館に近づく者を排除する様に命令されているんだ」


「それで子供達を連れ込んで何をやっているのですか?」


「……それは言えない」


 黒ずくめは何かを知っている様だが口を閉ざしてしまった。


「話す気が無いなら別の手段で伺いましょう」


 ハンナは空間収納から棘がいくつも手元に向って伸びた棒を取り出す。


「これを鼻や耳に入れて引っこ抜いてみましょうか」


 そうこれは穴に入れて抜く時に棘が穴の中を引っ掻きながら苦痛を与える道具だ。

 棒のに付いている小さなレバーを引くと棘が少し広がる構造になっている。

 広がると穴の中に棘が良い具合に引っ掛かるのだ。

 更に回しながら抜けば痛みは倍増する。

 ハンナは拘束した黒ずくめの頭を掴む。


「さてどっちの穴に入れて欲しいですか?」


 黒ずくめは恐怖に震えた。

 目の前の女は話すまで只管苦痛を与え続けると言う事に気付いたのだ。


「話す!話すからやめてくれ!!」


 黒ずくめは必死に訴える。


「早く話してくれませんか?そろそろ私も面倒になってきましたので」


 いつでも棒を突っ込める体勢のまま言い放つ。

 ハンナはこの手の拷問を行うのには慣れていた。

 アリアやリアーナが狙われる機会が多く、その度に侵入者への尋問、拷問を行っていたからだ。

 如何に痛みと精神の両面で相手が壊れない様に追い詰める加減を熟知していた。

 更に拷問に関しては暗殺者時代にも行っていたので尚更だ。


「あそこは合成獣(キメラ)の研究所なんだ」


 合成獣(キメラ)と言う言葉にハンナは首を傾げる。

 ハンナは合成獣(キメラ)の事を知らなかった。


合成獣(キメラ)とは何ですか?」


合成獣(キメラ)は複数の魔物同士を合成させたり合体させる事により生まれる魔物の事だ」


「目的は?」


「目的は知らない」


 ハンナは無言で棒を鼻に当てる。


「本当に知らないんだ!領主様から聞かされていないんだ!よく教会の神父と話をしているのは見るが知らないんだ!」


 必死に訴える黒ずくめに嘘ではなさそうだと判断し尋問を続ける。

 ハンナは教会の神父が絡んでいるとは思わなかった。


「神教の神父?」


「ああ、ハデルって言う奴だ。孤児院いる」


 ハンナはなるほど、と思い尋問を続ける。


「孤児院の子供達は?」


「子供達は制御しやすい人の言葉を理解する合成獣(キメラ)の素材にする為だ」


 救い様が無いと心の中で思いながら質問を変えた。

 対象の事を知っている可能性が高いと。


「サリーン・ボネットの名前に聞き覚えは?」


「孤児院の神官もどきか?あいつなら知ってる。孤児院の地下で合成獣(キメラ)の研究の助手のはずだ」


 ハンナはサリーンが表に出てこない理由が漸く分かったと思った。

 孤児院の地下で日々合成獣(キメラ)の研究に勤しんでいるから孤児院から出てこないと。

 そして子供達を研究の素材としか見ない外道と認識した。

 その様な人間がアリアの傍にいた事にハンナは怒りを覚えた。


「何故、彼女が合成獣(キメラ)の研究を?」


「理由は知らない。でも合成獣(キメラ)の研究に欠かせない力を持っていると聞いた」


 ハンナに思い当たる事があった。

 サリーンの治癒魔法の特性だ。

 そう、アリアはサリーンの特性は結合と言っていたのを思い出した。


「孤児院の研究所と屋敷の研究所の違いは?」


 黒ずくめは首を横に振る。


「そろそろ時間ですかね」


 まぁ、知らないのだろうとハンナは思い腰から抜いたダガーで心臓を貫いた。


「ごふっ……な、何で……」


 ハンナは拘束を解いて黒ずくめを地面に転がす。


「一応、心臓だけは確保しておきましょう」


 ハンナは手早く黒ずくめの死体から心臓を抜き出し、空間収納へ放り込む。

 ここで食事をするには日が傾き始めており街に戻るのが遅くなる為だ。


風刃(ウィンド・スラッシュ)


 風の刃で黒ずくめの身体を細切れにしていく。

 死体のまま放っておくとアンデッドになる可能性がある為、死体は燃やしたりして処理するのだ。

 しかしハンナは火属性の魔法が使えない為、細切れにして撒いてしまうのだ。


「良い情報が手に入りました。さて戻りましょう」


 ハンナは日が落ちようとして黄昏に染まる森を駆け抜けた。



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