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悪魔となって復讐を誓う聖女  作者: 天野霧生
第一章:復讐の聖女
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25:魔物襲撃

 アリア達がヒルデガルドの昇級試験で西の草原に出ている頃、リアーナとハンナは街で情報収集をしていた。

 孤児院にいるサリーンは全く敷地外に出る様子が無かった為、他に何か情報が無いか探していた。

 色々と街の人間に話を聞くが目新しい情報は出てこなかった。

 サリーンについては街の人間でも余り見掛けない様で情報がほとんど無い。

 ハンナが一週間、孤児院を監視していたが庭に出てきたのがたった一度だけでほぼ孤児院の中で過ごしている様子なのだ。

 ここまで引き篭もるのは正直、怪しいとリアーナは考えていたが、特に情報がある訳では動くに動けない状態だった。

 一日を情報収集に使いながら何も収穫も無くギルド併設の酒場に二人はいた。


「目新しい情報は何も無かったな」


 エールを呷りながらリアーナは言った。


「街の方に聞いても今までと似た様な情報ばかりですから明日、孤児院から引き取られる子供がいるのでそれを尾行しますか?」


 これは街の住人から聞き込んだ情報だ。


「そうだな。尾行ならハンナ一人の方が良いだろう。私は孤児院の監視を続ける」


「畏まりました。アリア様達が戻ってくる前に決定打になる情報が欲しい所ですね」


「あぁ」


 リアーナはそう頷きながら他に何か手段は無いかと思いあぐねていた。

 生ハムに瑞々しい葉物野菜を巻いたツマミを食べながらエールを呷る。

 リアーナ自身は酒であれば何でも飲める方で二日酔いの経験も無い。

 どれだけ飲んでもある一定以上は酔わないのだ。


「リアーナ様、それ以上はダメですよ」


 ハンナがリアーナの酒を止める。

 この枠の様な主の酒を止めるのはハンナの仕事となっており、リアーナもハンナが止めると飲むのをやめるのだ。


「飲みすぎたか?」


「飲みすぎです。もう十杯は超えてます」


 そんなに時間が経っている訳でも無いのにかなりの量を飲んでいた。


「そうか。夕食代わりに何かを頼むか」


 そう言いメニューと睨めっこをするリアーナ。

 突然、ギルドの扉が勢いよく開き、一人の冒険者慌てたかの様に入ってきて受付は駆け込んでいく。

 その様子にギルドにいる冒険者は一斉に受付の方を見る。


「大変だ!北門に変なモンスター群れで現れて衛兵が応戦してるんだ!」


 受付に来た冒険者を見ると所々傷を負っており命からがらギルドに来たと言う感じだ。


「領主には衛兵が伝令に行っているが、あの魔物相手に衛兵がそんな長く食い止められなさそうなんだ!」


「少々お待ち下さい。ギルドマスターに急いで報告してきます!」


 受付嬢は奥へ走りギルドマスターを呼びに行った。

 奥からガタイの良いスキンヘッドの男が走って受付までやってきた。


「おい、北門に変な魔物とはどんなヤツだ?最近よく現れるあれか?」


 このスキンヘッドの男がピル=ピラのギルドマスターだ。


「ああ……今回は身体はケルベロスだが頭がワイバーンやヴァイパーになってるし、尻尾が蠍みたいになってるんだ」


「何体いた?」


「六体だ。急がねぇと他の奴らが……」


 受付で肩を落として俯く男の冒険者。

 現場に仲間がいるのだろう。

 ギルドマスターは彼の肩を掴む。


「今から応援を急いで出す。お前は救護室で体を休めろ」


 ギルドマスターは近くにいた職員を呼び、目の前の冒険者を救護室へ連れていく様に指示した。


「ギルドからの緊急依頼だ!今から急いで北門の魔物の排除だ!出来ればAランク以上のヤツはいないか!」


 ギルドマスターは大声でギルドにいる冒険者に呼びかける。

 リアーナはそれを聞いてハンナに目で合図し、二人でギルドマスターの元へ行く。


「ギルドマスター、私達が行こう」


「俺も行くぜ」


 リアーナとハンナ以外に金髪の剣士が名乗りを上げた。


「シモンにリアーナにハンナか。すまんが頼めるか?」


「ああ、問題無い」


「任せておけ!」


 リアーナと金髪の剣士シモンはギルドマスターに応える。


「頼むぞ。こっちもAランク以下の奴らで編成を整えたらすぐに向う。無理はするなよ」


 三人はギルドを飛び出す様に出て行く。


「俺はシモン・クドス、Aランクだ。あんたらは?」


 シモンは走りながら二人に自己紹介をする。


「私はリアーナ。Sランクだ」


「ハンナと申します。私もSランクです」


 二人も走るスピードを緩めず名乗る。


「二人ともSランクか!?取り敢えず、俺は前衛だがあんたらは?」


 現場に着く前に戦力の確認を行う。


「私は前衛でハンナが斥候だ。三人近接戦はバランスが悪いな。向こうにアシスト可能な魔法が使えるのがいれば良いが」


 奇しくも三人共近接戦闘がメインだった。

 リアーナはハルバート、ハンナはダガー、シモンは剣だった。

 一応、ハンナは投擲も可能だがそれは専ら牽制用だ。


「そうだな。俺は簡単な土の魔法は使えるがあんまり期待しないでくれ」


「まぁ、行けば何とかなるだろう」


 リアーナは魔物を倒すのに関しては割りと何とかなると思っていた。

 ギルドマスターの要求がAランク以上だったからだ。

 この街に来る途中で倒したマーダーウルフに比べれば大した事はないだろうと。

 暫く走ると北門が見えてきた。

 襲撃に関わらず門が開いていた。


「おい!門が開きっ放しだぞ!」


 シモンは見えてきた門を指した。

 そこには衛兵と冒険者が魔物と応戦しており、門が閉められない状況になっていた。

 魔物は報告通りケルベロスの身体に首が他の魔物になっている。

 衛兵と冒険者が応戦しているが、抑えるのに手一杯だった。


「街の中には入ってなさそうだな。あの一体は私とシモンが押し出す。ハンナ、押し出した所で衛兵に指示して門を閉めろ」


「了解っと」


「畏まりました」


 ハンナはリアーナ達から離れる。

 リアーナとシモンは真っ直ぐ魔物に向っていく。


「応援に来たぞ!ここは任せて一度下がれ!」


 リアーナの声に衛兵と冒険者は後ろへ下がる。

 リアーナはハルバートを握る手に力を込める。


「ハァァァァッ!!」


 ハルバートの刃を立てずに打ち付ける様にして横に薙ぐ。

 凄まじい打撃音が鳴り、ハルバードを打ち付けられた魔物が後に下がる。


「一撃であんれだけ押し返すとは流石Sランク。俺も負けてられないな!」


 その隙を逃さずシモンが牛の頭がある首に切り掛かる。


「邪魔なんだよ!」


 シモンの一閃により首半分の所まで切れた為、首の動きが止まる。

 合間を置かずリアーナが連打で魔物を打ちつけ門の外まで下がらせた。


「今だ!門を閉めろ!!」


 リアーナの合図と共に門が閉められる。

 これで魔物が入ってくるのを抑えられる。

 門の外には四人パーティーの冒険者が魔物と応戦している。


「シモン、あのパーティーの応援に行ってくれ。私は順番に仕留めていく」


「了解」


 シモンは四人組の冒険者の方へ向っていく。

 リアーナは魔物の数を数える。


「六匹だな。あのパーティーは中々足止めが上手いが、シモンが何処までやれるかだな」


 ハルバートを構えて魔物を見据える。


「さっさと片付ける!」




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