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悪魔となって復讐を誓う聖女  作者: 天野霧生
第四章:深淵に揺蕩う悪夢
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179:プロローグ

 何故か風景は赤く染まっていた。

 これはきっと夢だ。

 はっきりと自覚出来るぐらい周囲の光景は異様だった。


 正座をさせられて石を抱かされて鞭を打たれる者。


 磔にされて火あぶりにされる者。


 断頭台の行列に付いて次々と首を落とされていく者達。


 四肢を結わえたロープを別方向に移動する馬に引かれて苦しむ者。


 水車に括り付けられ終わらない水責めに合う者。


 金属製の牛の形をした物の中に入れられて外から焼かれる者。


 内側に棘の付いた丸い檻に入れられて中を転がされる者。


 磔にされて自らの肉を削がれて焼いて食べさせられる者。


 腹を割かれて内臓に直接焼き印をされる者。


 毒虫の入った大きな壷に放り込まれる者。


 酸の風呂に徐々に溶かされていく者。


 熱した鉄板の上を踊らされる者。


 ありとあらゆる拷問、処刑が周囲で繰り広げられていた。

 正に拷問と処刑の見本市と言うべき光景だろう。


 だが、その光景は現実で見た事は一度も無い。

 見た事が無いのに鮮明に夢で見てしまう。


 血塗られた風景をただ見ているだけ。

 しかし、不思議と心が躍る。

 燻っている炎が燃え上がるかの様に。


 広場の真ん中でただそれらの行為をみ見る。


 少女は思う。


 何故、この光景を見ているのだろう、と。

 気分は逸り、次の光景を求めながらも自問自答する。


 その答えは分からない。


 見た事の無い風景を見るのか全く分からない。

 そもそもどうして見た事も聞いた事すするない風景をこうも鮮明に夢とは言え見られるのか?


 その疑問に答える者はここにはいなかった。



******



 一人の男がまどろみに委ねた体を起こす。

 そこは上下があるのだろうか?

 そう言う感覚すらあるのかも分からない場所。


「やれやれここに住んでそれなりに時間は経ったが、中々面白い」


 男は何処か愉快そうに言った。


「誘いに乗って来てみたが存外、悪くない。寧ろ最高の環境じゃないか」


 満足気な表情を浮かべながら思考をめ巡らす。


「それにしても脆い物だ。奴の介入がな無ければ既に廃人だろうに……。奴がいいなければもっと自由に出来たのは悔やまれるか……」


 男は好きでこの場所に来たが、好きでこの場所に閉じこもっている訳では無かった。


「奴がいなければ外にも自由に出られたんだがな。まぁ、贅沢は言えないか。と閉じこもっている限り、私の存在に気が付く事は無いだろう」


 男には敵がいた。

 向こうから敵と認識はされていないが、見付かれば間違いなく敵と認識される自覚があった。

 敵は男がやっている事を許しはしない。

 それは十分に理解していた。


「でもこのままと言うのも面白くない。少し仕掛けでもしてみるのも一興かもしれないな」


 男は不気味な笑みを浮かべながら再びまどろみに身を委ねる。



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